あたまの形・ヘルメット治療 更新日:公開日:

赤ちゃんの絶壁頭は治る? いつまで様子を見てよいかと、おうちでできること

「横から見ると後頭部がまっすぐ」「抱っこすると、頭の後ろが手のひらに平らに当たる」。赤ちゃんの絶壁は、頭の形のご相談のなかでもとくに多いものです。多くは成長とともに目立たなくなります。ただ、片側だけが平らになる斜頭症とは経過が少し違い、生後6か月まで絶壁の割合が下がらなかったと日本の調査で報告されています。この記事では、どこからを「絶壁」と考えるか、いつまで様子を見てよいか、おうちでできることをまとめました。

結論:多くは心配いりません。ただ、生後半年までは様子を見るだけでは変わりにくいこともあります

日本の赤ちゃんは、もともと前後に短めの、丸い頭をしていることが多いと分かっています。後頭部が少し平らに見える程度なら、よくある範囲のことも少なくありません。寝る向きなどでできる頭の形の変化そのものが、脳の成長を妨げるという因果関係も確認されていません。

一方で、日本の赤ちゃんを生後6か月まで追った調査があります。斜頭症は生後3か月をピークに減っていきましたが、絶壁(短頭)の割合は6か月まで下がりませんでした。「そのうち治る」と待つだけにせず、起きている時間の過ごし方を工夫しながら、気になるうちに一度、形を測っておくと判断がしやすくなります。

「絶壁」とはどんな形?

「絶壁」は、後頭部全体が左右対称に平らになった頭の形をいう、一般的な言葉です。医学的には、後頭部が平らなことと頭が前後に短いことは別の所見ですが、多くは一緒にみられ、あわせて「位置的短頭(短頭症)」と呼ばれます。ご家庭で気づきやすいのは次のような点です。

  • 横から見ると、後頭部がまっすぐ切り立って見える
  • 真上から見ると、頭が前後に短く、横に広い
  • 抱っこしたとき、頭の後ろが手のひらに平らに当たる

片側だけが平らになり、上から見ると平行四辺形のようにゆがむのは「斜頭症」です。絶壁と斜頭症が合わさっていることもあります。

上から見た頭の形の違い(絶壁は、まん中の短頭症のタイプです)

斜頭症しゃとうしょう/変形性斜頭

上から見た斜頭症の頭の形。片側の後頭部が平らになり、頭が平行四辺形のようにゆがんで見える

上から見たときに左右非対称。片側の後頭部が平らになり、同じ側の耳やおでこが前にずれて、平行四辺形のように見えます。

短頭症たんとうしょう/変形性短頭

上から見た短頭症の頭の形。後頭部全体が平らで、前後に短く横に広い

上から見たときに前後が短く、横に広い形。後頭部全体が左右対称に平らになる、いわゆる「絶壁」です。

長頭症ちょうとうしょう/変形性長頭

上から見た長頭症の頭の形。前後に長く、横幅が狭い

上から見たときに前後に長く、横幅が狭い形。横向きで過ごす時間が長い赤ちゃん(早産児など)に見られます。

日本の赤ちゃんは、もともと丸めの頭が多い

頭の丸さは、頭の横幅を前後の長さで割った「頭指数(CI)」で表します。医学辞典などでは、この値がおおむね81%以上を「短頭」とする定義が使われてきました。ただ、この値は主に白人を対象に得られたもので、ほかの人種に当てはめるには限界があるとされています。

日本の生後1か月の赤ちゃん153人を3Dスキャナーで測った研究では、頭指数の平均は85.2%でした。CT で日本の子どもの頭を調べた研究でも、欧米の子どもより丸い傾向が報告されています。欧米の基準をそのまま当てはめると、日本の赤ちゃんの多くが「絶壁」に入ってしまうということです。

そのため日本の研究には、日本の子どもに合わせた基準を使っているものがあります。日本の子どもの頭をCTで測った値(平均86.5%)をもとに、平均を大きく上回る場合(頭指数93.9%以上)を短頭症とするものです。「うちの子は絶壁かも」と感じたときは、見た目の印象だけで決めずに、日本の赤ちゃんの基準で測ってみることが大切です。

なぜ絶壁になるのか

赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、骨と骨のつなぎ目もまだ閉じていません。同じ場所に頭の重さがかかり続けると、その部分が少しずつ平らになります。絶壁は、後頭部のまん中に重さがかかり続けることで起こります。

  • 眠るときのあおむけ: 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを下げるための寝かせ方です。絶壁が気になっても、眠るときはあおむけのままにしてください
  • 起きている時間の過ごし方: あおむけやバウンサー、チャイルドシートなど、後頭部が当たる姿勢で長く過ごすと、重さのかかる時間が増えます
  • 首の動き: 首を左右に回す力がまだ弱い時期は、自分で頭の向きを変えにくく、同じ場所に重さがかかります

ニュージーランドで赤ちゃん200人を2歳まで追った調査があります。生後4か月で斜頭や短頭があった赤ちゃんには、首の回しにくさ、体の動きの少なさ、あおむけ寝が多くみられました(斜頭と短頭を分けずに調べた結果です)。どれもご家族のせいで起こるものではありません。

絶壁は治る? いつまで様子を見てよい?

生後半年までは減りにくい — 日本の調査

関東の医療機関で、健康な赤ちゃんを生後1か月・3か月・6か月に3Dスキャナーで測った調査があります(6か月まで測れたのは91人)。片側が平らになる斜頭症の割合は、3か月をピークに下がっていました。これに対して短頭症(絶壁)の割合は、13.3%・21.3%・22.0%と6か月まで下がりませんでした。

この「短頭症」は、日本の子どもの平均を大きく上回る丸さを統計で線引きしたものです。健康な赤ちゃんでも一定の割合がこの線を超えるので、22%という数字は「5人に1人に治療が要る」という意味ではありません。

頭の形の変化全体では、2歳までに多くが目立たなくなる — 海外の調査

先ほどのニュージーランドの調査では、斜頭と短頭を合わせた割合は、生後6週で16.0%、4か月で19.7%でした。そこから8か月で9.2%、1歳で6.8%、2歳で3.3%と下がっていきます。著者らは「多くは2歳までに解消する」とまとめています。判定の基準が日本の調査とは違うため、数字をそのまま比べることはできません。おすわりや歩き始めとともに、後頭部が下になる時間は大きく減っていきます。

強い絶壁は、おうちの工夫だけでは変わりにくい

スウェーデンでは、乳児健診の看護師が保護者に頭の形の予防法を伝える取り組みが研究されました。斜頭の改善は早まった一方、「短頭(絶壁)の予防は難しかった」と報告されています。アメリカの研究でも、強い短頭では、寝かせ方の工夫はヘルメット治療より効果が小さいという結果でした。

軽い絶壁は、成長とともに目立ちにくくなることが多いと考えられています。強い絶壁ほど、工夫だけでは変わりにくくなります。どちらに近いのかを一度測っておくと、「待つ」か「相談する」かを決めやすくなります。

おうちでできること — 絶壁のための工夫

絶壁は、真上を向いている時間に後頭部のまん中へ重さがかかって起こります。寝かせるときの向きの工夫も役立ちますが、それだけでは変わりにくいことも多くあります。起きている時間に、後頭部が下になっている時間を減らすことをあわせて行います。米国小児科学会も、起きていて大人が見ている時間のうつ伏せ(タミータイム)が、後頭部が平らになるのを防ぐ助けになるとしています。

1. 寝かせるとき、頭の向きを左右交互に
あおむけのまま、寝かせるたびに頭が向く側を左右で入れ替えます。頭が少し横を向くだけでも、重さは後頭部のまん中からずれます。ベッドの頭と足の向きを日によって入れ替えるのも一つの方法です。

2. タミータイム(うつ伏せ遊び)
起きていて大人が見ている時間に、うつ伏せで過ごす時間をつくります。最初は1回数分から、機嫌のよいときに。やり方は タミータイムの始め方 にまとめています。

3. 縦抱き・抱っこひもの時間
縦に抱いているあいだは、後頭部に何も当たりません。授乳のあとや寝かしつけ前など、生活のなかの抱っこの時間がそのまま工夫になります。

4. バウンサーやチャイルドシートは、使う場面を決める
チャイルドシートは車での移動に欠かせません。車を降りたら下ろす、バウンサーは手が離せない短い時間だけにする、といった形で、座らせたまま過ごす時間を減らしていきます。そこで眠ってしまったら、平らな寝床にあおむけで移してください。

5. 床で遊ぶ時間
あおむけで天井を見ているより、床の上で手足を動かしたり、寝返りの練習をしたりする時間を増やします。体をよく動かすことは、自分で向きを変える力にもつながります。

6. 月に1回、同じ撮り方で写真を撮る
横からと真上から、同じ距離・同じ角度で撮って並べると、変わってきているのかどうかが分かります。ご家庭で目安を確かめられる 簡易セルフチェック もあります(診断ではありません)。

やらないほうがよいこと

  • 横向きやうつ伏せで寝かせる — 1歳になるまでは、眠るときはあおむけが原則です。うつ伏せは「起きていて、大人が見ている時間」だけにしてください
  • ドーナツ枕や頭の形を整える枕を使う — 頭の形を良くする効果は確かめられているとは言えません。眠っている赤ちゃんのまわりに枕やクッションを置くと、窒息の危険があります。当院ではおすすめしていません
  • 頭の下にタオルを入れて角度をつける — 寝ているあいだに顔にかかる危険があります。向きや姿勢の工夫は、起きている時間に行います

相談の目安

🌅 月齢にかかわらず、早めにご相談ください

まれに、頭の骨のつなぎ目が早く閉じてしまう病気(頭蓋骨縫合早期癒合症)で、頭が前後に短く見えることがあります。次のようなときは、月齢を待たずにご相談ください。

  • 頭のつなぎ目に沿って、土手のような骨の盛り上がりが触れる
  • 頭のてっぺんのやわらかい部分(大泉門)が、早くに閉じている
  • 上のどちらかがあり、形が月を追うごとに強くなっていく

詳しくは 頭蓋骨縫合早期癒合症 のページをご覧ください。

📅 生後2〜4か月のうちに、一度ご相談ください

  • 横から見ると、後頭部がほぼまっすぐ切り立っている
  • 真上から見ると、明らかに横に広い
  • おうちでの工夫を1か月ほど続けても、写真で見比べて変わらない

当院では、ヘルメット治療を考える時期を生後4〜10か月としています。日本で強い絶壁にヘルメット治療を行った47人の研究では、始めた月齢が遅いほど形の変化が小さいという結果でした。治療をするかどうかにかかわらず、決めるための材料を早めにそろえておくと、あとで慌てずに済みます。

💚 あわせて見ておきたいこと

  • 首を左右どちらにも、同じように回せるか
  • 首にしこりがないか、いつも同じ側に傾いていないか
  • 首すわりや寝返りなど、体の動きの育ち方

体の動きがまだ少ない時期の赤ちゃんは、向きが変わりにくいぶん、頭の形も変わりやすくなります。頭の形は、体の動かし方のようすを知らせるサインになることがあります。

頭の形外来でできること

頭の形外来 では、まず形の評価から始めます。視診・触診とクラニオメーター(頭の形の計測器)による計測に加え、超音波で骨のつなぎ目を確かめ、頭蓋骨縫合早期癒合症との見分けを行います。疑わしい場合は、CTなどの画像検査ができる専門の医療機関にご紹介します。初回のご相談・診察は保険診療です。

当院では、計測の結果と月齢をもとに、ヘルメット治療をしない選択肢も含めて、ご家族と一緒に考えていきます。

よくあるご質問

Q. 絶壁は大人になっても残りますか?

大人になってからの残り方を調べた、まとまったデータはありません。2歳まで追った海外の調査では、斜頭と短頭を合わせた割合が、生後4か月の約20%から2歳では約3%まで下がっていました。髪が生えそろうと目立ちにくくなることも多い一方、強い絶壁では形が残ることがあります。

Q. 何か月までに相談すればよいですか?

気になったときが、相談のタイミングです。目安は生後2〜4か月です。当院ではヘルメット治療を考える時期を生後4〜10か月としています。始めた月齢が遅いほど変化が小さいという報告もあるので、それより前に一度測っておくと選択肢を残せます。月齢を過ぎていても、いまの状態を知ることには意味がありますので、遠慮なくご相談ください。

Q. 向き癖はないのに、絶壁になりました。なぜですか?

いつも片側ばかり向く向き癖は、片側が平らになる斜頭症につながりやすい一方、真上を向いて過ごす時間が長いと、後頭部のまん中に重さがかかります。向き癖がなくても絶壁になるのはこのためです。向き癖がある場合の工夫は 赤ちゃんの向き癖 で紹介しています。

Q. 寝返りが始まれば治りますか?

寝返りやおすわりができるようになると、後頭部が下になる時間は減っていきます。ただ、日本の調査では生後6か月まで絶壁の割合は下がっていませんでした。寝返りを待つだけにせず、起きている時間の工夫を続けながら、写真で変化を見比べてみてください。

Q. 絶壁は脳の発達に影響しますか?

寝る向きなどでできる頭の形の変化そのものが、脳の成長を妨げたり知能に影響したりするという因果関係は確認されていません。斜頭症の赤ちゃんを調べた研究では、脳全体の大きさ(体積)に差はみられませんでした。ゆがみのある赤ちゃんで発達検査の点数がやや低い傾向を示した研究もありますが、頭の形が原因かどうかは分かっていません。体の動きが少ない時期の赤ちゃんは頭の形も変わりやすいため、診察では首すわりや寝返りなどの発達もあわせて確認します。

Q. 相談に費用はかかりますか?

頭の形のご相談と診察(病気との見分けを含む)は保険診療です。3Dスキャンによる精密な計測と、ヘルメット治療は自費診療になります。費用は 頭の形外来 のページに載せています。

まとめ

  • 日本の赤ちゃんはもともと丸めの頭が多く、欧米の基準では「絶壁」に入りやすい。少し平らに見える程度なら、よくある範囲のことも多い
  • 日本の調査では、斜頭症と違って絶壁の割合は生後6か月まで下がらなかった。ただし、これは「治療が要る赤ちゃんの割合」ではない
  • おうちでの工夫の芯は、起きている時間に後頭部が下になる時間を減らすこと。眠るときはあおむけのまま
  • 強い絶壁は工夫だけでは変わりにくい。気になったら生後2〜4か月を目安に一度測っておく

形を測ってみて「このままで大丈夫」と分かることも、立派な結果です。気になることは、どんなに小さなことでも遠慮なくお尋ねください。まずはご相談だけでも構いません。

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この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

大原啓一郎(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医)

古田泰之(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医)

最終更新:2026 年 10 月 8 日

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