あたまの形・ヘルメット治療 更新日:公開日:

赤ちゃんの向き癖 — 頭の形が気になる前にできること

「寝かせると、いつも右ばかり向いている」。向き癖は、生まれて間もない赤ちゃんの多くに見られる、ごくありふれたものです。それ自体は病気ではなく、多くは寝返りが始まるころまでに自然と目立たなくなります。ただ、同じ向きが続くと後頭部の片側が平らになりやすいため、気づいたときに少しだけ環境を整えてあげると安心です。

結論:向き癖そのものは心配いりません。見ておきたいのは「頭の形」と「首の動き」

向き癖で見ておきたいことは 2 つだけです。ひとつは、真上から見たときに頭の形に左右差が出てきていないか。もうひとつは、反対側にも首を向けられるか、首にしこりがないか。この 2 つに気になる点がなければ、おうちでの工夫で様子を見て大丈夫です。

なぜ向き癖がつくのか

赤ちゃんは自分で寝返りが打てるようになるまで、寝かされた向きのまま長い時間を過ごします。向き癖がつきやすい理由は、いくつか重なっています。

  • お腹の中での姿勢 — 妊娠後期に頭が骨盤に固定されていると、生まれたときから向きやすい側が決まっていることがあります。双子・多胎や、はじめてのお子さまに多い傾向があります
  • 首の筋肉の左右差 — 首の片側の筋肉(胸鎖乳突筋)が硬いと、顔が一方に向きやすくなります。しこりを伴う場合は先天性筋性斜頸という状態のことがあります
  • 毎日の環境 — ベッドの位置、声をかける方向、授乳や抱っこの向きが毎日同じだと、赤ちゃんは自然とそちらを向いて過ごします

向き癖は「育て方が悪い」から起こるものではありません。お腹の中での姿勢など、生まれる前から決まっている要素も大きいので、ご自分を責めないでください。

向き癖と頭の形の関係

赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、骨と骨のつなぎ目に隙間があります。急速に大きくなる脳を受け止めるための仕組みですが、そのぶん長い時間同じ場所に圧がかかると、その部分が平らになります。これが「位置的な頭の形の変化」で、向き癖があると後頭部の片側が平らになり、真上から見ると頭が平行四辺形のように見えることがあります(頭の左右非対称(斜頭症))。

頭の形の変化は、軽いものまで含めると決して珍しいことではありません。日本の調査では、生後 1 ヶ月の赤ちゃんの 約 6 割 にみられたという報告があり、海外でも 2〜5 割と、調べ方によって幅があります。その多くはごく軽いもので、生後 2〜4 ヶ月ごろにいちばん目立ちます。

向き癖などでできる頭の形のゆがみそのものが、赤ちゃんの脳を傷つけ、発達を遅らせるという証拠はありません。斜頭症の赤ちゃんの研究では、脳全体の大きさ(体積)は、頭の形にゆがみのない赤ちゃんと変わりませんでした。ただ、ゆがみのある赤ちゃんで発達検査の点数がやや低い傾向を示した研究もあります。体の動きがまだ少ない時期の赤ちゃんは向きが変わりにくく、その結果として頭の形が変わりやすいことが知られています。つまり頭の形は「原因」というより、体の動かし方のようすを知らせてくれるサイン になることがあります。首すわりや寝返りなどで気になることがあれば、頭の形とあわせてご相談ください。

頭の骨は月齢が進むほど硬くなるため、気づいたときに早めに向きを整えるほど、変化を小さくとどめやすくなります。左右差が強い場合は、待っていても自然には戻りにくい ことも分かっています。

おうちでできる 5 つの工夫

どれも特別な道具はいりません。「赤ちゃんが、向きにくい側を向きたくなる環境」をつくるのがコツです。

1. ベッドの向き・寝かせる位置を変える
赤ちゃんは、明るい窓や人の気配がする方を向きたがります。ベッドの頭と足の向きを入れ替える、ベッドの中で寝かせる位置を日によって変える、といった工夫で、向きにくい側に興味が向くようにします。

2. 声をかける・おもちゃを置く位置を変える
起きているときは、向きにくい側から声をかけたり、おもちゃやメリーを向きにくい側に置いたりします。顔を見せるだけでも、赤ちゃんはそちらを向こうとします。

3. 抱っこ・授乳の向きを交互にする
利き腕で抱くと向きが偏りがちです。授乳や抱っこのたびに左右を入れ替え、向きにくい側が外側(部屋の方)になるように意識してみてください。

4. タミータイム(うつ伏せ遊び)をとり入れる
起きている時間に、大人が見守りながらうつ伏せで遊ばせます。後頭部にかかる圧が減るだけでなく、首や背中の筋肉が育ち、自分で向きを変える力につながります。やり方は タミータイムの始め方 にまとめています。

5. 起きている時間は、寝かせたままにしない
縦抱きや抱っこひもで過ごす時間、床で遊ぶ時間を意識的につくり、後頭部がずっと下になっている時間を減らします。

完璧にやろうとしなくて大丈夫です。「気づいたときに反対側へ」を毎日少しずつ積み重ねるだけで、向きはゆっくり整っていきます。

やらないほうがよいこと

  • 枕やタオルで頭を固定する — 向き癖防止枕やドーナツ枕は、頭の形を良くする効果が確かめられているとは言えません。眠っている赤ちゃんのまわりに枕・タオル・クッション類を置くことは窒息の危険があるため、当院ではおすすめしていません
  • うつ伏せで寝かせる — 向きを変えたいからといって、うつ伏せのまま眠らせないでください。眠るときはあおむけが原則です(乳幼児突然死症候群=SIDS の予防のため)。うつ伏せは「起きていて、大人が見ている時間」だけのケアです
  • 寝ている赤ちゃんの頭を無理に反対へ向ける — 眠りを妨げるうえ、すぐ元に戻ってしまいます。向きを整えるのは起きている時間に

頭の形外来でできること

向き癖が続いて頭の形の左右差が気になってきたら、当院の 頭の形外来 でご相談いただけます。診察では、頭の形を真上から確認し、首の動きやしこりの有無、頭の骨のつなぎ目の状態を一緒に見ていきます。多くの場合は、ここでご紹介したおうちでのケアと経過観察で十分ですが、変化が強いときはヘルメット治療という選択肢もあります。

次のようなときは、様子を見ずに一度ご相談ください。

  • 真上から見て、頭の形の左右差がはっきりしてきた
  • 反対側を向かせようとしても向けない、いつも首が一方に傾いている
  • 首に硬いしこりが触れる
  • 生後 8 ヶ月を過ぎても向き癖と頭の形の変化が続いている

「相談だけ」でのご来院も歓迎しています。気になっているのに、時間だけが過ぎてしまうことがいちばんもったいないからです。

よくあるご質問

Q. 向き癖は放っておいても治りますか?

向き癖そのものは、寝返りやおすわりができるようになると自然に目立たなくなることがほとんどです。ただ、頭の形の左右差が出はじめている場合は、骨がやわらかいうちに向きを整えたほうが変化を小さくとどめられます。「治るのを待つ」より「気づいたら少し環境を変える」と考えてください。

Q. 向き癖は何ヶ月ごろまで続きますか?

生後 2〜4 ヶ月ごろがいちばん目立ち、首がすわって自分で向きを変えられるようになる 4〜6 ヶ月ごろから減っていきます。寝返りが始まると、寝ている間も自然と向きが変わるようになります。

Q. 首のしこりや傾きがあるときはどうすればよいですか?

首のしこりやいつも同じ方向に傾く状態は、先天性筋性斜頸のことがあります。向き癖との見分けはおうちでは難しいので、診察で確認するのが安心です。早めに分かれば、首のストレッチや理学療法(リハビリ)で対応できます。

Q. 頭の形はいつまでに相談すればよいですか?

頭の骨は生後数ヶ月がいちばん大きく成長し、その力を利用して形を整えます。ヘルメット治療の適齢期は生後 4〜10 ヶ月 で、なかでも早い時期ほど効果が得られやすく、選べる方法がいちばん多いのは生後 6 ヶ月ごろまで です。ヘルメットという方法も含めて考えたい場合は、遅くとも生後 10 ヶ月ごろまでのご相談が目安 です(国内で使われているヘルメットは、装着を始められる月齢が機種ごとに決まっており、ご相談から採型・製作までにも時間がかかります)。それ以降でも、状態を見てもらうことはできますので、月齢を理由にあきらめる必要はありません。

向き癖・頭の形のご相談

向き癖や頭の形のご相談は、開院にあわせて頭の形外来でお受けします。おうちでのケアで十分か、もう少し踏み込んだ対応が必要かは、実際に頭の形と首の動きを見せていただくとはっきりします。ご予約は LINE から承ります。

参考文献

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この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

大原啓一郎(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医)

古田泰之(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医)

最終更新:2026 年 10 月 13 日

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