斜頭症とは|赤ちゃんの頭の形と向き癖
— 小児科専門医・脳神経外科専門医が解説
赤ちゃんの後頭部が片側だけ平らに見える、耳の位置が左右でずれている気がする — そんな「頭の形のゆがみ」は、向き癖や寝る姿勢が原因で起こることがほとんどで、決して珍しいことではありません。気づいたタイミングや形の程度に応じて、ご家庭での工夫や専門的な対応で改善が期待できます。「うちの子の頭の形、これは大丈夫?」と感じたら、お一人で抱え込まず一緒に確認していきましょう。
💡 この記事の要点
- 向き癖など外からの圧力で起こる頭の形の変化で、命に関わるものではありません。ゆがみそのものが脳を傷つけ、発達を遅らせるという証拠もありません(頭の形は、体の動かし方のようすを知らせるサインになることがあります)
- 寝るときは仰向けが原則。起きている時間の体位の工夫や見守り下のタミータイムが基本です
- 頭の骨のつなぎ目が早く閉じる病気(頭蓋骨縫合早期癒合症)が疑われる所見があれば速やかに専門機関へつなぎます
どんな病気か
斜頭症(位置的斜頭症 / 位置的頭蓋変形)は、寝ているときの向き癖など外からの圧力によって、赤ちゃんの後頭部の片側が平らになる頭の形の変化です。頭の骨のつなぎ目(頭蓋骨縫合)が早く閉じてしまう別の病気とは異なり、命に関わるものではありません。頭の形のゆがみそのものが脳を傷つけ、発達を遅らせるという証拠もありません。斜頭症の赤ちゃんの研究では、脳全体の大きさ(体積)は、頭の形にゆがみのない赤ちゃんと変わりませんでした。ただ、頭の形にゆがみのある赤ちゃんでは、発達検査の点数がやや低い傾向がみられたという研究もあります(研究した人たち自身は、頭の形が原因というより「気をつけて見ておきたい目印」と考えています)。
体の動きがまだ少ない時期の赤ちゃんは向きが変わりにくく、その結果として頭の形が変わりやすいことが知られています。つまり頭の形は「原因」というより、体の動かし方のようすを知らせてくれるサイン になることがあります。診察では頭の形だけでなく、首の動きや発達のようすもあわせて確認します。
仰向け寝が広く推奨されるようになってから、世界的にこの「頭の形のゆがみ」を持つ赤ちゃんは増えています。日本の調査では、生後 1 ヶ月の赤ちゃんの 約 6 割 にみられたという報告があり、海外でも 2〜5 割と、調べ方によって幅があります。その多くはごく軽いものです。新生児期から目立ち始め、生後 2〜4 ヶ月ごろにピークを迎えることが多く、頭の骨が成長していく中で自然に和らいでいく傾向もあります。ただし 左右差が強い場合は、待っていても自然には戻りにくい ことが分かっています。
原因はひとつではなく、いくつかの要素が重なって起こります。
- 子宮の中での圧迫(多胎・骨盤位など)
- 分娩のときの頭の位置
- 生まれてからの向き癖、同じ姿勢が続くこと
- 首の柔らかさ(向きにくい側があるかどうか)
1985〜2016 年の研究を集めた系統的レビューでは、繰り返し報告されている要因として、男の子であること・あおむけ寝・首の回りにくさや向き癖・第一子・体の動きが少ないこと・うつぶせ遊び(タミータイム)の時間が短いこと、が挙げられています。ただしこのレビュー自身が、研究どうしの結果の一致はあまり良くないとも述べています。「これがあるから必ずなる」と言い切れる要因があるわけではありません。
「生まれたときからすでに少し片寄っていた」というケースもあり、生活のしかただけが原因ではありません。ご家庭のやり方が悪かったからではないとお考えください。
主な症状と気づきのポイント
「うちの子の頭の形、これって治療が必要?」 — 多くの保護者の方が最初に感じる疑問です。ご家庭で確認しやすいポイントは次のとおりです。
- 頭の上(頭頂部)から見下ろすと、左右がそろわず 平行四辺形のように見える
- 片側の 後頭部が平らになっている
- 平らな側と同じ 耳が前にずれている、または同じ側の おでこやほっぺが前に出ている
- いつも同じ方向ばかりを向いている(向き癖がある)
- 反対側を向きにくそう、首が片側に傾きやすい
斜頭症しゃとうしょう/変形性斜頭
上から見たときに左右非対称。片側の後頭部が平らになり、同じ側の耳やおでこが前にずれて、平行四辺形のように見えます。
短頭症たんとうしょう/変形性短頭
上から見たときに前後が短く、横に広い形。後頭部全体が左右対称に平らになる、いわゆる「絶壁」です。
長頭症ちょうとうしょう/変形性長頭
上から見たときに前後に長く、横幅が狭い形。横向きで過ごす時間が長い赤ちゃん(早産児など)に見られます。
ご家庭では、明るい場所で赤ちゃんを真上から撮った写真を見比べると変化に気づきやすくなります。「ちょっと気になる」段階で写真を残しておくことが、後で経過を判断するうえでも役立ちます。
なお、軽い・中くらい・強いといった程度は連続的で、ご家庭だけで境目を判断するのは難しい部分です。気になるポイントがあれば、まずはご相談ください。
🔍 おうちで測ってみる
スマートフォンで撮影した頭の写真から、形の参考値(CA / CVAI / CI)をご家庭で算出できるツールをご用意しています。撮影画像が端末から外に出ることはありません。
⚠️ 医療機器ではありません。受診の目安としてお使いください。
紛らわしい病気(鑑別)
頭の形の変化に見えるものの中には、対応のしかたが大きく異なる別の病気が隠れていることがあります。当院ではまず以下の鑑別を丁寧に行います。
頭の骨のつなぎ目が早く閉じる病気(頭蓋骨縫合早期癒合症 / craniosynostosis)
まれですが、見落とせない最も重要な鑑別です。頭の骨のつなぎ目に沿って骨の盛り上がり(骨堤)が触れる、頭頂部の柔らかい部分(大泉門)が早く閉じている、形のゆがみが時間とともに進む、繰り返す嘔吐や発達面の気になるサインがある、といった所見があれば疑います。手術が必要になることがあるため、疑いがあれば速やかに専門医療機関での精密検査につなぎます。この場合は月齢にかかわらず早めの受診が必要 です(→ 頭蓋骨縫合早期癒合症)。
先天性筋性斜頸(首の筋肉のかたよりによる傾き)
首の片側の筋肉(胸鎖乳突筋)が短くなることで、赤ちゃんの首が一方向に傾く状態です。向き癖が固定されて頭の形のゆがみが進む原因や合併として、しばしばみられます。理学療法(リハビリ)を組み合わせる選択肢があります。
短頭症(後頭部全体が平らになるタイプ)
片側ではなく、後頭部全体が平らになるタイプの変形で、対応の考え方が少し異なります。詳しくは 短頭症のページ をご覧ください。
後頭部の皮膚・皮下組織の所見によるふくらみ・へこみ
生まれたときから見られるあざ・できもの・へこみなどは、頭の形のゆがみとは別の評価が必要です。
当院での診断と治療
「相談したいけれど、いきなり大ごとにはしたくない」 — そんなお気持ちに合わせて、当院ではまず形の評価と他の病気との鑑別を丁寧に行います。
当院で行うこと
- 妊娠中・出産時の経過、向き癖の様子、これまでの形の変化のお話をうかがう問診
- 頭頂部からの観察、頭の骨のつなぎ目の触診、首の動きや筋肉の触診、発達や成長曲線の確認
- 写真撮影による形の記録と経過比較
- 頭の骨のつなぎ目が早く閉じる病気を疑う所見があった場合は、画像検査ができる専門医療機関への速やかな紹介
生活の工夫(軽症〜中等症 / 生後 4 ヶ月未満で見つかった場合)
- 起きている時間に反対側を向きやすいよう、おもちゃや声かけで誘導する体位の工夫(寝ている向きの工夫 / リポジショニング)
- 起きているときの「うつぶせ遊び(タミータイム)」を、必ず保護者の方が見守れる状況で 短時間ずつ
- 抱っこや授乳の向きを意識的に左右で変える
- 首の筋肉のかたよりが見られる場合は、理学療法(リハビリ)の併用を一緒に検討
ヘルメット治療について(中等症〜重症で、おうちでのケアでも改善が乏しい場合)
頭の形に合わせたヘルメットを装着することで、頭蓋の成長を望ましい方向に誘導する治療です。適齢期は生後 4〜10 ヶ月 で、なかでも 生後 4〜6 ヶ月が最も効果が得られやすい時期 です。開始が早いほど短い期間で終えられる傾向があります(当院ではベビーバンド/ReMO baby の 2 機種を扱っており、機種は月齢で決まるものではなく、診察のうえ医師とご相談のうえお選びいただけます)。自費診療です。
- かぶる出っ張っている側はヘルメットの内側に当たり、平らな側にすき間ができます。
- すき間の方へ成長する当たっている側はそれ以上ふくらまず、すき間のある方向へ頭が成長していきます。
- 左右差が小さくなる点線の元の形から、左右差の小さい形に近づきます。
上から見た模式図です。上がおでこ、下が後頭部。図は斜頭(左右非対称)の例です。灰色はヘルメットの内側と頭のあいだのすき間、赤はとくに成長させたい向きを示します。実際の変化の程度には個人差があります。
当院の頭の形外来では、まず評価と鑑別を行い、必要と判断した場合にヘルメット治療(ベビーバンド/ReMO baby の 2 機種から選べます)を行っています。月齢が進んでから気づかれた場合でも、状態に応じて取れる選択肢はあります。「もう手遅れかも」とご自身で決めずに、まずはご相談ください。
詳しくは 頭の形外来 のページもご覧ください。
家庭でできるケア
公的医療機関の頭の形外来資料で推奨されているケアを紹介します。完璧にやろうとせず、できる範囲で続けていただければ大丈夫です。
- 寝るときは仰向けが原則 — 寝ているあいだの体位は仰向けを維持してください(SIDS / 乳幼児突然死症候群の予防のため)。「タミータイム」は起きているときだけのケアです。
- 起きている時間に反対側を向くようにうながす — おもちゃ・声かけ・部屋の中で明るい方向や音のする方向を意識して反対側に置くなど。
- タミータイム(うつぶせ遊び)は、必ず保護者の見守り下で短時間から — 月齢が低いうちは数分ずつでも構いません。授乳の前後など、機嫌のよいタイミングで少しずつ。誤嚥や窒息のリスクがあるため、目を離さないでください。
- 抱っこ・授乳の向きを意識的に左右で変える — 利き手や授乳しやすい向きに偏りがちなので、ときどき逆側も。
- 市販の「向き癖防止枕」「ドーナツ枕」など — 形の改善効果が確かめられているとは言えません。また、眠っている赤ちゃんのまわりに枕やクッション類を置くことは窒息の危険があるため、当院ではおすすめしていません。枕に期待して受診が遅れることのないようご注意ください。
ご兄弟がいる、ワンオペで手が回らない、夜は赤ちゃんも親も眠っていたい — どれも当然のことです。「完璧にできなくて当たり前」 という前提で、できそうなところから始めてください。続けてみても変化が見えにくいと感じたら、その時点でぜひご相談ください。
よくあるご質問
Q. うちの子の頭の形、これは様子を見ていいレベル? 相談した方がいいレベル?
ご家庭で「軽症・中等症・重症」の境目を判断するのは難しいのが正直なところです。気になるタイミングで一度、頭頂部からのお写真と一緒にご相談いただければ、状態を確認したうえでご家族と一緒に方針を考えます。
Q. 生後 6 ヶ月(7 ヶ月・10 ヶ月)を過ぎてしまったのですが、もう手遅れですか?
「もう間に合わないのでは」とご自身で決めないでください。月齢が進んでも取れる選択肢はあります。まずは現在の状態を確認させていただき、ご家族のご希望と合わせて方針を一緒に考えます。
Q. ドーナツ枕や向き癖防止クッションは使った方がいいですか?
形の改善効果が確かめられているとは言えません。また、眠っている赤ちゃんのまわりに枕やクッション類を置くことは窒息の危険があるため、安全な睡眠環境の面からもおすすめしていません。向き癖への対応は、起きている時間の体位の工夫とタミータイムが基本です。
Q. 頭の形が左右非対称だと、発達や知能に影響しますか?
向き癖などでできる頭の形のゆがみそのものが脳を傷つけ、発達を遅らせるという証拠はありません。斜頭症の赤ちゃんの研究では、脳全体の大きさ(体積)は変わりませんでした。ただ、ゆがみのある赤ちゃんで発達検査の点数がやや低い傾向を示した研究もあり、頭の形は体の動きや姿勢のようすを映すサインと考えられています。向き癖の背景に首や体のかたよりがあるかどうかは、別途確認しておきたいポイントです。診察時に発達や成長曲線も含めて確認します。
Q. ヘルメット治療は痛くないですか? お風呂やお出かけはどうなりますか?
ヘルメットは痛みを伴うものではありません。お風呂のあいだは外して大丈夫で、装着時間や肌のケアなど、生活の中での実際の負担感については、定期のフォローの中で一緒に確認しながら進めていきます。詳しくは 頭の形外来 のページをご覧ください。
Q. 上の子のときは気にしなかったのに、急に気になり始めて不安です。気にしすぎですか?
気にしてくださって大丈夫です。気づいたタイミングで一度見せていただけると、それだけで安心材料になることも多くあります。
症状についてのご相談
お子さまの頭の形が気になったとき、お写真を見ながらでも一緒に考えます。受診すべきかどうかの判断も含めて、まずはお気軽にご相談ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。斜頭症をはじめ、お子さまの気になる症状は、LINE からご予約ください。
参考文献
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この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
大原啓一郎(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医)
古田泰之(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医)
最終更新:2026 年 10 月 13 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。