あたまの形・ヘルメット治療 更新日:公開日:

ヘルメット治療は必要ない? しないとどうなるのかを月齢と重症度で考える

「ヘルメットまでしなくてもいいのでは」と考えるのは、自然なことです。実際、頭の形を心配して受診されるお子さまの多くは、ヘルメット治療をせずに対応します。ただ「必要ない」と言い切れるかどうかは、変形の程度と、いまの月齢によって変わります。この記事では、その線引きを具体的にお伝えします。

結論:多くは必要ありません。ただし「強い左右差」と「月齢」は別に考えます

頭の形の変化は、軽いものまで含めれば珍しいことではなく、日本の調査では生後1か月の赤ちゃんの約6割にみられたと報告されています。その多くはごく軽く、成長とともに目立たなくなります。頭の形外来を受診されたお子さまのうち、ヘルメット治療に進むのは2〜3割程度とされ、残りはおうちでのケアと経過観察で対応します。

一方で、左右差が強い場合は、待っていても自然には戻りにくいことが分かっています。日本の調査では、変形が強かった赤ちゃんを寝る向きの工夫だけで3か月みたところ、その多くは同じ程度のままでした。「多くは必要ない」ことと「強い場合は待っても変わりにくい」ことは、どちらも事実です。

「しない」を選んだとき、何が起きるのか

ヘルメット治療をしない場合の経過は、大きく3つに分かれます。

軽度〜中等度の場合:多くは目立たなくなります

頭の形の変化は生後2〜4か月ごろにいちばん目立ち、首がすわって自分で向きを変えられるようになる4〜6か月ごろから減っていきます。寝返りが始まると、眠っているあいだも自然に向きが変わるためです。この時期に、向きを整える工夫とタミータイムを続けていれば、多くはそのまま落ち着いていきます。

参考になるのが、2014年に BMJ に発表されたオランダの研究(HEADS)です。中等症から重症の赤ちゃん84人を、ヘルメット治療を行う群と自然経過を見る群に分けて2歳まで追ったところ、完全に回復した割合はヘルメット群26%・自然経過群23%で差がありませんでした。裏を返せば、どちらのグループも4人に3人は「完全な左右対称」にはならなかったということでもあります。頭の形は、ヘルメット治療をしてもしなくても、多少の左右差が残ることのほうが普通です。

この研究の読み方 — 著者自身が限界を挙げています

「差がなかった」だけを取り出すと、ヘルメット治療を全部否定した研究のように読めます。ただ、論文には次の限界が書かれています。

  • 声をかけた対象のうち、実際に参加したのは 21%(403人中84人)でした
  • 変形が非常に強いお子さまは、はじめから除外されています(斜頸や頭蓋骨縫合早期癒合症があるお子さまも対象外です)
  • 開始は生後6.5か月までとされていました
  • 装着時間を記録する装置のデータが信頼できず、実際にどれくらいかぶっていたのかは分析できていません

つまりこの研究が示したのは、「中等症〜重症のうちとくに強い変形を除いた層に、6.5か月までに始めて、装着時間が分からないまま行ったところ、2歳の時点で差がつかなかった」ということです。日本でヘルメット治療がすすめられるのは主にこの研究が除外した層なので、これ1本で「必要ない」とも「必要だ」とも決まりません。

一方で、ヘルメット治療をしても完全な左右対称になるとは限らないという点は、この研究がはっきり示しているところです。ここは始める前に知っておいてください。

強い左右差の場合:待つだけでは変わりにくい

日本の研究では、生後1か月の時点で重度だった赤ちゃんを寝る向きの工夫だけで経過をみたところ、3か月後も約7割が重度のままでした。ここでは「様子を見る」が期待どおりに働きません。ヘルメット治療を検討する意味があるのは、主にこの層です。

月齢が進んでからの場合:選べる方法が減ります

頭の骨は月齢とともに硬くなるため、どの方法も効きにくくなります。日本のベビーバンドの研究では、生後7か月より前に始めたグループのほうが改善が大きい(CVAI の変化 −6.3 対 −4.4)という差が出ています。「しない」を選ぶこと自体は問題ありませんが、選択肢が残っているうちに一度評価を受けておくことをおすすめします。

「見た目以外に困ることはあるの?」

よくいただくご質問です。分かっていることと、分かっていないことを分けてお答えします。

分かっていること:位置的な頭の形の変化そのものが、脳の成長を妨げたり知能に影響したりするという因果関係は、確認されていません。頭の形に変化がある赤ちゃんとない赤ちゃんで、脳の大きさに差がないことも確かめられています。

注意しておきたいこと:一方で、頭の形の変化と発達のゆっくりさに「関連」があったという報告は複数あります。これは頭の形が原因というより、体の動きがまだ少ない時期の赤ちゃんは向きが変わりにくく、その結果として頭の形も変わりやすい——つまり頭の形が「動きの少なさのサイン」として現れている、という説明が有力です。ですから当院では、頭の形だけでなく首すわりや寝返りなどの発達もあわせて確認します。

分かっていないこと:成人になったときの見た目の残り方については、まとまったデータがありません。「必ず気にならなくなる」とも「一生残る」とも言えないのが正直なところです。多くは髪が生えそろうころには目立たなくなりますが、強い左右差では残ることがあります。

ヘルメット治療をしない場合に、家庭で続けること

「必要ない」と判断した場合も、何もしないわけではありません。次の3つを続けます。

  1. 向きを整える — 寝かせる位置、声をかける方向、おもちゃを置く位置、抱っこや授乳の向きを日ごとに入れ替えます(→向き癖への対応
  2. タミータイム — 起きていて大人が見ているあいだに、うつぶせで過ごす時間をつくります(→タミータイムの進め方
  3. 月1回、真上から写真を撮る — 同じ撮り方で並べると、目立たなくなってきているのか、変わっていないのかが分かります

そして、やらないほうがよいこともはっきりしています。市販の向き癖防止枕・ドーナツ枕は、頭の形が良くなるという効果が確認されておらず、眠っている赤ちゃんのそばに枕やクッションを置くことは窒息の危険があります。眠るときは月齢にかかわらずあおむけが基本です。

見直すタイミングを決めておく

「しない」を選ぶときにいちばん大事なのは、いつ見直すかを決めておくことです。期限のない「様子を見る」は、気づくと月齢だけが進みます。

いまの月齢 見直しの目安
〜3か月 1か月後。この時期は工夫の効果がいちばん出やすい
4〜6か月 4〜6週後。ヘルメット治療を検討するなら判断の時期
7〜8か月 早めに一度評価を。選べる方法が減っていく時期
8か月以降 おうちでのケアが中心。おすわり・歩き始めとともに目立たなくなることが多い

まとめ

  • 頭の形の変化は約6割の赤ちゃんにみられ、その多くはヘルメット治療をせずに対応できます
  • ただし強い左右差は、寝る向きの工夫だけでは3か月みても多くが同じ程度のままでした
  • ヘルメット治療をしてもしなくても、完全な左右対称になるのは4人に1人程度です。目指す地点を先に決めておくと迷いが減ります
  • 「しない」を選ぶときは、見直す時期を決める。期限のない様子見が、いちばん選択肢を狭めます

どちらを選ぶ場合も、まずは状態を測ることからです。頭の形外来の初回のご相談は保険診療で承っています。ご自宅で目安を確かめられる簡易セルフチェックもご利用ください(診断ではありません)。

参考文献

  1. Miyabayashi H, et al. Reference values for cranial morphology based on three-dimensional scan analysis in 1-month-old infants in Japan. Neurol Med Chir (Tokyo). 2022;62(5):246-253. https://doi.org/10.2176/jns-nmc.2021-0384
  2. Noto T, et al. Natural-Course Evaluation of Infants with Positional Severe Plagiocephaly Using a Three-Dimensional Scanner in Japan. J Clin Med. 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8396888/
  3. van Wijk RM, et al. Helmet therapy in infants with positional skull deformation: randomised controlled trial. BMJ. 2014;348:g2741. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4006966/
  4. Therapeutic Effectiveness of a Novel Cranial Remolding Helmet (baby band2) for Positional Plagiocephaly: A Multicenter Clinical Observational Study. J Clin Med. 2024;13:5952. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11477759/

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

大原啓一郎(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 専門医)

古田泰之(日本脳神経外科学会 専門医・日本脳神経血管内治療学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 2 日

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