受診の目安・受診の知恵 更新日:公開日:

赤ちゃん・新生児のしゃっくり — 止めても大丈夫?

赤ちゃん(新生児)のしゃっくりはとてもよくある自然な現象で、横隔膜の動きの調節がまだ未熟なために起こります。ほとんどは数分〜十数分で自然に止まるので、無理に止める必要はありません。呼吸が苦しそう・顔色が悪い・授乳できない、というときだけは受診してください。

結論:しゃっくりは「止めなくてよい」もの。見るのは哺乳・呼吸・体重です

新生児のしゃっくりは、病気のサインではありません。そもそも止める必要がないというのが、いちばんお伝えしたいことです。

赤ちゃんはしゃっくりの最中でも、たいてい平気な顔をしています。苦しそうにしていない、いつもどおり飲めている、体重が増えている——この 3 つが保たれていれば、何もしなくて大丈夫です。

心配していただきたいのは、しゃっくりそのものではなく、しゃっくり以外のようすです。呼吸が苦しそう・顔色が悪い・授乳ができない、といったときは受診してください。

しゃっくりはどうして起きるのでしょうか

しゃっくり(吃逆)は、横隔膜と肋間筋が突然ふいに縮み、その直後にのどのフタ(声門)が急に閉じることで起こる反射です。縮んだ勢いで空気が一気に肺へ流れ込み、閉じた声門にぶつかって「ヒック」という音が鳴ります。

この反射には、横隔神経・迷走神経・交感神経を通る経路と、脳(延髄から中脳あたり)での調節が関わっていると考えられています。つまり、赤ちゃんが意識してやっていることでも、飲み方が下手だから起きることでもありません。

赤ちゃんにしゃっくりが多い理由は、いくつか重なっています。

  • 横隔膜の調節がまだ未熟 — 神経の働きが発達の途中で、ちょっとした刺激で反射が起きやすい状態です
  • 授乳で胃がふくらむ — 胃のすぐ上に横隔膜があるため、飲んだ直後は刺激を受けやすくなります
  • 温度の変化 — おむつ替えなどで体が冷えたときに出ることがあります

しゃっくりは、生まれる前から始まっています

意外に思われるかもしれませんが、しゃっくりはお腹の中にいるころから始まっています。

磁気を使って胎児の動きを調べた研究では、しゃっくりは受胎後 9 週という早い時期から現れ、妊娠 26 週より前では横隔膜の動きのなかでもっとも多いことが報告されています。妊娠中に「お腹が規則正しくピクピクした」という経験のある方は、それが赤ちゃんのしゃっくりだったのかもしれません。

生まれたあとの実測データもあります。新生児・乳児の呼吸を記録した研究では、しゃっくりを目的に選ばれたわけではない赤ちゃんが、記録時間の 2.5% をしゃっくりに費やしていました。1 回のしゃっくりが続いた時間は平均 8.4 分(±4.2 分)でした。「うちの子、やたらしゃっくりするな」という感覚は、気のせいではありません。

近年には、早産児・正期産児で横隔膜が縮むたびに脳波に反応が現れることを示した研究もあります。ただし、この研究が示したのは「脳がしゃっくりを感覚の入力として受け取っている」ということまでで、「しゃっくりが脳の発達を促す」と証明されたわけではありません(そう報じられることがありますが、論文そのものはそこまで述べていません)。

安全な止め方 — ただし「効く」と証明されたものはありません

先に正直にお伝えします。乳児のしゃっくりに対して「これが効く」と確かめられた方法は、いまのところありません。大人のしゃっくりを含めた総説論文でも、民間療法の類は「効果は不確実」とされています。

そのうえで、赤ちゃんにとって害がなく、理屈のうえで無理がないのは次のような方法です。

  • 背中をやさしくさすってゲップを促す
  • 母乳やミルクを少量飲ませる
  • 体勢を縦抱きに変える
  • おむつや衣類で温め直す(冷えたあとに出ている場合)

📌 ゲップについての注意: 「ゲップを出すとしゃっくりが止まる」とよく言われますが、ゲップがしゃっくりに効くかを直接調べた研究は見つかりません。ゲップの効果を検証した研究はコリック(激しい泣き)と溢乳(吐き戻し)を対象にしたもので、そのランダム化比較試験では、ゲップをさせた群でコリックは減らず、吐き戻しはむしろ増えたという結果でした。ゲップをさせること自体を否定するものではありませんが、「必ずさせなければ」と気負う必要はありません。

やってはいけない対処

大人向けのしゃっくりの止め方を、赤ちゃんにそのまま使わないでください。

  • 大きな音で驚かす — 効果は確かめられていません。赤ちゃんを不必要に怖がらせるだけです
  • 鼻や口をふさいで息を止めさせる — 絶対にしないでください。呼吸を妨げる危険な行為です
  • 強くゆさぶる・刺激する — 乳幼児を強く揺さぶることは、頭の中の出血につながる危険があります
  • 舌を引っぱる — 赤ちゃんには不要かつ危険です

白湯・湯冷ましについて

「しゃっくりには白湯を」と言われることがありますが、離乳が始まる前の赤ちゃんに、母乳・ミルク以外の水分を足す必要はありません。

国のガイド(こども家庭庁「授乳・離乳の支援ガイド」)は、離乳の開始前の子どもにとって最適な栄養源は乳汁(母乳または育児用ミルク)であり、離乳開始前に果汁やイオン飲料を与える栄養学的な意義は認められていないとしています。白湯という言葉そのものは同ガイドに出てきませんが、「乳汁だけで足りている」という考え方は白湯にも同じように当てはまります。

飲ませて害があるという話ではありませんが、その分だけ母乳やミルクが飲めなくなることのほうが心配です。しゃっくりを止めたいときは、白湯ではなく母乳・ミルクを少量にしてください。

受診の目安

🚑 すぐ救急受診

  • 呼吸が苦しそう
  • 顔色が悪い・唇が青っぽい
  • 授乳できない

🌅 翌朝に外来へ

  • 1日に何度も起こり、そのたびに機嫌が悪い
  • 1時間以上続く
  • 体重増加が悪い
  • 吐き戻しが多く、飲む量が減っている

💚 様子を見て OK

  • 授乳後によく起こる
  • 10〜20分で自然に止まる
  • 機嫌は良く、いつもどおり飲めている

吐き戻し(溢乳)とのつきあい方

しゃっくりと一緒に、少量の母乳やミルクを吐き戻すことはよくあります。日本小児外科学会は、胃の中のミルクや胃酸が食道へ戻る「胃食道逆流」は乳児期に生理的に高い頻度でみられ、多くは 1 歳までに自然によくなると説明しています。赤ちゃんは胃の入り口のフタの役割をする筋肉がまだ未熟なので、吐き戻し自体が発達の途中の自然な姿です。

体重が増えていて機嫌がよければ、心配いりません。一方、次のようなときは治療が必要な逆流症の可能性があるため、ご相談ください。

  • 哺乳のときに飲むのを嫌がる/過度に泣く(不機嫌)
  • 背中を反らせる
  • 咳や喘鳴などで呼吸が苦しそう
  • 肺炎を繰り返す
  • 体重が増えにくい
  • 吐いたものに血が混じる

なお、しゃっくりと胃食道逆流症を直接結びつける学会の記載はありません。「しゃっくりが多い=逆流症」ではないので、しゃっくりの回数そのものを心配しすぎないでください。

いつまで続くのでしょうか

正直にお伝えすると、「何ヶ月で減る」という信頼できる統計は見つかりません。学会や公的機関も、月齢ごとの推移を示していません。

診察室での実感としては、生後 3 ヶ月ごろまでは 1 日に何度も起こることが珍しくなく、首がすわり、飲み方が上手になる 4〜6 ヶ月ごろから目立たなくなっていくお子さまが多いです。1 歳前後には、大人と同じくらいの頻度に落ち着いていきます。

ただしこれは統計ではなく経過の目安です。減り方には個人差が大きいので、「よその子より多い」ことを気にする必要はありません。見ていただきたいのは回数ではなく、飲めているか・体重が増えているかです。

当院での診療

当院は自由が丘駅徒歩 1 分。しゃっくりのご相談では、実際の哺乳の様子・体重の増え方・吐き戻しの程度をうかがい、「いま心配な所見があるか」「おうちで何を見ていただくか」を一緒に整理します。「これくらいで受診してよいのか」と迷われる内容こそ、遠慮なくお持ちください。

よくある質問

Q. 授乳直後のしゃっくりは大丈夫?

大丈夫です。授乳で胃がふくらみ、すぐ上にある横隔膜が刺激されて起こる生理現象です。苦しそうにしていなければ、そのまま様子を見てください。

Q. ゲップとの関係は?

授乳のときに飲み込んだ空気で胃がふくらむと、横隔膜が刺激されてしゃっくりが起こりやすくなります。ただし、ゲップがしゃっくりを止めることを直接示した研究はありません。出れば楽になることもある、くらいに考えてください。出ないときに長く粘る必要はありません。

Q. しゃっくりで吐くことは?

しゃっくりと一緒に少量吐き戻すことはよくあり、体重が増えていて機嫌がよければ心配いりません。噴き出すように勢いよく吐く・体重がなかなか増えない・むせ込みや咳が続くというときはご相談ください。詳しくは 小児胃食道逆流症のページ準備中 をご覧ください。

Q. 何ヶ月で減りますか?

月齢ごとの正確な統計はありません。診察室での経過としては、生後 3 ヶ月ごろまで頻繁で、4〜6 ヶ月ごろから減り、1 歳前後で落ち着くお子さまが多いです(上の「いつまで続くのでしょうか」をご覧ください)。

Q. しゃっくりで息が止まったりしませんか?

多くの赤ちゃんでは、しゃっくりの最中も呼吸は保たれています。ただし、しゃっくりのあいだは呼吸が浅くなりうることを示した古い研究もあります。実際に見ていただきたいのは、しゃっくりの回数ではなく呼吸のようすです。息が苦しそう・顔色が悪い・唇が青っぽいときは、しゃっくりの有無にかかわらず受診してください。

Q. 病気の可能性は?

しゃっくりそのものは、ほとんどが生理的な現象です。気にしていただきたいのは、しゃっくり以外の様子のほうです。呼吸が苦しそう・顔色が悪い・授乳できないときはすぐに受診を、1 時間以上続く・体重の増えが悪いときは外来でご相談ください。

Q. 寝ているときのしゃっくりは起こしたほうがよい?

起こす必要はありません。しゃっくりで目を覚まさずに眠っていられるなら、それだけ苦しくないということです。そのまま寝かせてあげてください。

参考文献

  1. こども家庭庁. 授乳・離乳の支援ガイド(2019年3月・改定に関する研究会). https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/junyuu/(参照: 2026-09-06)
  2. 一般社団法人日本小児外科学会. 胃食道逆流症. http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/i-shokudou-gyakuryushou(参照: 2026-09-06)
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この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 6 日

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