感染症 更新日:公開日:

RS ウイルス感染症

RS ウイルス感染症は、2 歳までにほとんどのお子さまが一度はかかる、ごくありふれた呼吸器の感染症です。多くの場合は鼻水・咳・発熱で経過し、おうちでのケアで軽快します。一方で、月齢の低い赤ちゃんでは呼吸がしんどくなることがあるため、「いつもの風邪と何が違うのか」を知っておくことが大切です。このページでは、症状の見方とおうちでできることをまとめています。

💡 この記事の要点

  • 2 歳までにほぼ全員がかかる身近な呼吸器感染症で、多くは数日〜1 週間ほどのいつもの風邪のような経過で軽快します。
  • 母乳やミルク・お茶をこまめに補い、鼻汁を吸引して加湿を保ち、起きている間は上体を起こした姿勢で過ごしましょう。
  • ヒューヒュー・ゼーゼーが続く・肋骨の間がへこむ・唇が青白い・哺乳量が半分以下・ぐったりしているときは速やかに受診を。

どんな病気か

RS ウイルスというウイルスによる、鼻・のど・気管の感染症です。咳やくしゃみ、手や物を介してうつります。2 歳までにほぼすべてのお子さまが一度はかかり、その後も大人になるまで何度もかかる病気です。多くは数日〜1 週間ほどの「いつもの風邪」のような経過で軽快しますが、生後 6 か月未満の赤ちゃん(とくに 3 か月未満)では、気管支の細い部分の炎症(細気管支炎)を起こして呼吸がしんどくなることがあります。

流行は秋から冬(10 月〜2 月)が中心でしたが、近年は夏にも流行が見られるようになっています。一度かかっても免疫は長く続かないため、何度もかかりますが、年齢が上がるほど軽く済む傾向があります。

主な症状と気づきのポイント

多くのお子さまは、最初に「いつもの風邪」のような症状から始まります。

経過の目安

  • 上気道症状の時期(2〜4 日):鼻水、咳、発熱
  • 下気道症状の時期:ヒューヒュー・ゼーゼーした呼吸、呼吸の回数が増える、胸の肋骨の間がへこむ呼吸、息をするのがしんどそう、赤ちゃんでは息が数秒以上止まることがある(無呼吸発作)
  • 回復期(1〜2 週間):徐々に軽快。咳だけが 2〜3 週間残ることもあります

赤ちゃん(とくに生後 6 か月未満)で注意したい呼吸のサイン

「うちの子の症状は、家で様子を見ていいレベル?」とまず気になるところです。次のようなサインがあるときは、呼吸の負担が大きくなっている可能性があります。

  • ヒューヒュー・ゼーゼーした息づかいが続く
  • 呼吸の回数がいつもより明らかに多い
  • 胸の肋骨の間・みぞおち・鎖骨の上がへこむような呼吸をしている
  • 鼻の穴を大きく開いて呼吸している
  • 唇や顔色が青白い・紫っぽい
  • 赤ちゃんで息が数秒以上止まる瞬間がある
  • 哺乳量・水分摂取量がいつもの半分以下
  • ぐったりして反応が弱い

判断に迷うときは、無理に「○日続いたら来院」と決めず、その時点でご相談ください。月齢や持病によって受診のタイミングは大きく変わるため、本ページの一番下の「症状についてのご相談」からお気軽にお問い合わせください。

紛らわしい病気(鑑別)

RS ウイルスと似た症状を示す病気はいくつかあります。受診時には症状の経過から見分けていきます。

  • クループ症候群:犬の遠吠えのような咳(ケンケンとした咳)と、息を吸うときのゼーゼーが特徴
  • 小児気管支喘息:くり返す喘鳴、アレルギー体質との関連
  • 百日咳:連続的に咳き込み、その後に嘔吐することがある
  • マイコプラズマ肺炎:学童期に多く、頑固な乾いた咳が長く続く
  • インフルエンザ・新型コロナ・ヒトメタニューモウイルス:高熱や全身症状を伴うことが多いが、RS ウイルスとの見分けは症状だけでは難しい場合があります

→ 関連:クループ症候群喘息準備中

当院での診断と治療

RS ウイルス感染症の診断は、症状の経過とお子さまの状態から行うのが基本です。必要に応じて、補助的な検査を組み合わせます。

診断

  • 鼻の奥を綿棒で少し取って、その場で調べる迅速抗原検査(結果は 10〜15 分ほどで出ます)。健康保険でこの検査ができるのは、外来では 1 歳未満のお子さま(および入院中のお子さま)に限られています。1 歳以上で検査を希望される場合は自費となるため、ご相談ください。
  • 必要に応じて、血液検査・血液中の酸素濃度(SpO₂)測定を行います。肺炎が疑われ画像検査が必要なときは、連携する医療機関へご紹介します。

治療

RS ウイルスに直接効くお薬はなく、症状を和らげる対症療法が中心です(現行ガイドラインに基づく方針:小児 RS ウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン 2021)。

  • 解熱薬(必要なとき)
  • 水分・栄養補給のサポート
  • 鼻汁の吸引
  • 呼吸の状態に応じた酸素投与(重症時は連携医療機関へ)

ステロイド(飲み薬・吸入)、気管支拡張薬(β2 刺激薬)の定期使用、抗菌薬(抗生物質)は、ガイドラインでルーチンには推奨されていません。咳止めや鼻水止め・抗ヒスタミン薬なども、細気管支炎では効果がはっきりせず、痰の排出をかえって妨げることがあるため、原則としてこうした薬剤は使用しない方針で対応しています [8]。

当院で対応する範囲

  • 軽症〜中等症の RS ウイルス感染症の診察と経過観察
  • 軽症〜中等症の外来管理として、SpO₂(血中酸素)測定や脱水時の点滴にも院内で対応します
  • ご家庭でのケアのご相談
  • 重症化のサインがあれば、速やかに連携する高次医療機関へご紹介

家庭でできるケア

ご自宅でできるケアは、ガイドラインで一般的にすすめられている内容を中心にお伝えします。

  • 水分補給:母乳・ミルク・お茶・経口補水液などを、こまめに少量ずつ。哺乳量がいつもの半分以下になるときはご相談ください
  • 鼻汁の吸引:哺乳・睡眠の妨げになる鼻水は、こまめに吸引します(手動・電動どちらでも可)
  • 加湿:室内の湿度を適度に保ちます。加湿器がなければ、濡れタオルを室内に掛ける・浴室にしばらく入る・洗濯物の部屋干しなどでも代用できます
  • 姿勢の工夫(起きている時間):縦抱きにするなど上体を起こした姿勢にすると、呼吸が楽になることがあります。ただしこれは、抱っこなど大人が起きて見守れる時間に限った工夫です。眠るときは、固く平らな場所であお向けに寝かせるのが原則です。 乳児では、タオルやクッションで寝床に傾斜をつけることは、窒息や乳幼児突然死症候群(SIDS)の観点からおすすめできません
  • 接触予防:流行期は手洗いを丁寧に。タオルは別にし、授乳・抱っこの前は手を洗う、赤ちゃんと過ごす大人もマスクを活用する、など家庭内でできることから取り入れます

予防について

RS ウイルスには、手洗いなどの日常の対策に加えて、近年いくつかの予防の選択肢が国内でも使えるようになっています。「生まれた赤ちゃんご本人に注射するもの」と「妊娠中のお母さんに接種して、おなかの赤ちゃんを守るもの」の 2 種類があり、対象が異なります。

生まれた赤ちゃんに注射するもの(抗体のお薬)

  • ニルセビマブ(商品名:ベイフォータス):赤ちゃんご本人に注射する、長く効くタイプの抗体のお薬です。国内では 2024 年から使えるようになり、初めて RS ウイルスの流行期を迎える赤ちゃんと、重症化リスクの高いお子さま(2 回目の流行期まで)が対象とされています。シーズンによって供給状況や運用が変わることがあります。
  • パリビズマブ(商品名:シナジス):早産児・慢性肺疾患・先天性心疾患など、重症化リスクの高い赤ちゃんを対象に、流行期に月 1 回注射する抗体のお薬です。

妊娠中のお母さんに接種するもの(ワクチン)

  • 母体 RS ウイルスワクチン(商品名:アブリスボ):妊娠中のお母さんが接種することで、抗体が胎盤を通じてまだおなかにいる赤ちゃんに渡り、生まれてすぐの時期を守ることが期待されているワクチンです。2026 年度から、妊娠 28〜36 週の妊婦さんを対象とした定期接種(予防接種法に基づく接種)になりました。

どの選択肢が当てはまるか、また対象・費用・接種時期は、お子さまの月齢やご家庭の状況によって一人ひとり異なります。受診をご検討ください。

よくあるご質問

Q. 何度もかかりますか? 初めての感染ほど重くなりますか?

RS ウイルスは一度かかっても免疫が長く続かず、生涯何度もかかる病気です。年齢が上がるごとに軽く済む傾向があり、2 回目以降は「いつもの風邪」として経過することが多くなります。一方で、生後 6 か月未満の赤ちゃんが初めて感染したときには、呼吸の症状が出やすいことが知られています。

Q. 解熱薬や、市販の咳止め・鼻水薬は使ってもいいですか?

解熱薬は、これまで処方されたものを用法どおりに使っていただいて構いません。市販の総合風邪薬は、乳幼児には推奨されていないものもあるため、使用前にご相談いただくと安心です。具体的な薬の選び方・量はお子さまの月齢・体重で変わるため、本ページ下の相談窓口からお問い合わせください。

Q. お風呂に入れていいですか? 食事はどうすれば?

高熱がなく機嫌がよければ、短時間の入浴で構いません。食事は無理せず、水分摂取を優先してください。離乳食を進めているお子さまは、一段階前に戻していただいて大丈夫です。

Q. 上の子が RS と言われました。下の赤ちゃんを守るには家でどうしたらいいですか?

家庭内感染はゼロにはできませんが、リスクを下げる工夫はあります。

  • ご家族全員の手洗いを丁寧に
  • タオル・コップは分ける
  • 可能であれば寝室を分ける
  • 赤ちゃんに触れる・授乳する前は手を洗う
  • 大人もマスクを着用する

赤ちゃんに「いつもより呼吸が早い」「ミルクの飲みが悪い」「ぐったりしている」などのサインがあれば、早めにご相談ください。

Q. 保育園にはいつから戻れますか? 登園許可証は必要?

RS ウイルス感染症は学校保健安全法上の出席停止疾患には指定されていませんが、園ごとにルールが異なります。保育所における感染症対策ガイドラインでは、登園のめやすは 「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」 とされています [7]。登園許可証が必要かどうかは、園のルールに合わせて当院で対応しますので、ご相談ください。

Q. 大人にもうつりますか?

うつります。大人では多くの場合「いつもの風邪」として経過しますが、咳がしばらく続くことがあります。同居しているご高齢の方(祖父母など)がいる場合は、念のため接触を控える・マスクをするなどの対策をおすすめします。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの月齢・基礎疾患・症状の経過によって変わります。一律にお答えするのが難しいため、お子さまの状況をお伺いした上で個別にご案内します。迷ったら、受診をご検討ください。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。RS ウイルス感染症をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2022. 協和企画, 2022. https://jspp1969.jp/journal/guidelines-for-the-treatment-of-pediatric-respiratory-infections/
  2. 日本小児呼吸器学会・日本新生児成育医学会. 小児 RS ウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン 2021. Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00663/
  3. 日本医師会. 白クマ先生の子ども診療所 — RS ウイルス. https://www.med.or.jp/clinic/sick2013_rs.html
  4. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン(2025 年 8 月 31 日改訂). https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250831Beyfortus_GL.pdf (accessed: 2026-06-10)
  5. 厚生労働省. RSウイルスワクチン(定期接種). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rs/index.html (accessed: 2026-06-10)
  6. こども家庭庁. 赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~. https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids (accessed: 2026-06-10)
  7. こども家庭庁. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版・2023年5月一部改訂). https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf (参照: 2026-07-02)
  8. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院, 2013. 第15章 感染症「RSウイルス感染症」/第16章 呼吸器疾患「急性細気管支炎」
  9. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(感染症「RSウイルス感染症」印刷 p.519)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 9 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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