ヒトメタニューモウイルス感染症
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、春先に流行する、子どもの呼吸器の感染症です。RS ウイルスと「いとこ」のようによく似たウイルスで、多くのお子さまが小学校に上がるころまでに一度はかかります。たいていは鼻水・咳・発熱で経過しますが、高い熱が数日続いたり、ゼーゼーした呼吸(喘鳴)が出やすいのが特徴で、ときに気管支炎や肺炎に進むことがあります。このページでは、症状の見方と、おうちでできること・受診の目安をまとめています。
💡 この記事の要点
- 多くは数日〜1週間ほどの風邪のような経過で軽快するありふれた感染症です
- 水分補給・鼻水の吸引・加湿を中心に、ご家庭でのケアを行ってください
- ゼーゼーした呼吸や唇の色が悪いなど呼吸のサインがあれば早めにご相談ください
どんな病気か
ヒトメタニューモウイルスというウイルスによる、鼻・のど・気管支の感染症です。咳やくしゃみのしぶき(飛沫)、手やものを介してうつります。2001 年に発見された比較的新しいウイルスですが、ありふれた病気で、ほとんどのお子さまが小学校に入るころまでに感染します。一度かかっても免疫は長く続かず、その後も何度もかかりますが、年齢が上がるほど軽く済む傾向があります。
- 流行する時期:日本では 春(おおむね 3〜6 月) が中心です。インフルエンザや RS ウイルスの流行が落ち着いたころに増えてきます。
- かかりやすい年齢:1〜3 歳ごろの幼児に多く見られます(RS ウイルスがより低月齢の赤ちゃんで目立つのに比べ、少し年齢が上がる傾向があります)。
- うつってから症状が出るまで(潜伏期):およそ 4〜6 日 です。
- 多くは数日〜1 週間ほどの「いつもの風邪」のような経過で軽快します。一方で、低年齢のお子さまや喘息のあるお子さまでは、気管支の炎症で呼吸がしんどくなることがあります。
主な症状と気づきのポイント
多くのお子さまは、最初に「いつもの風邪」のような症状から始まります。発熱・咳・鼻水は、9 割以上のお子さまに見られます。
経過の目安
- 上気道症状の時期:鼻水、咳、発熱(38〜39℃台の高い熱が続くことがあります)
- 下気道症状の時期:ヒューヒュー・ゼーゼーした呼吸(喘鳴)、呼吸の回数が増える、胸の肋骨の間がへこむ呼吸など。咳や喘鳴のピークは発症から 5〜7 日目ごろで、発熱が 5 日以上続くこともあります
- 回復期(1〜2 週間):徐々に軽快します。咳だけが 2〜3 週間ほど残ることもあります
注意したい呼吸のサイン
「うちの子の症状は、家で様子を見ていいレベル?」とまず気になるところです。次のようなサインがあるときは、呼吸の負担が大きくなっている可能性があります。
- ヒューヒュー・ゼーゼーした息づかいが続く
- 呼吸の回数がいつもより明らかに多い
- 胸の肋骨の間・みぞおち・鎖骨の上がへこむような呼吸をしている
- 鼻の穴を大きく開いて呼吸している
- 唇や顔色が青白い・紫っぽい
- 水分・食事の摂取量がいつもの半分以下
- ぐったりして反応が弱い
喘息のあるお子さまは、ヒトメタニューモウイルスが喘息発作の引き金になりやすいことが知られています。いつもより咳き込みや喘鳴が強いときは、早めにご相談ください。
判断に迷うときは、無理に「○日続いたら来院」と決めず、その時点でご相談ください。年齢や持病によって受診のタイミングは変わるため、本ページの一番下の「症状についてのご相談」からお気軽にお問い合わせください。
紛らわしい病気(鑑別)
ヒトメタニューモウイルスは、ほかの呼吸器の病気とよく似た症状を示します。症状だけで見分けるのは難しいことが多く、受診時に経過から見極めていきます。
- RS ウイルス感染症:とてもよく似た症状を起こします。RS ウイルスは生後 6 か月未満の赤ちゃんで目立つ一方、ヒトメタニューモウイルスは 1〜3 歳に多い傾向がありますが、見分けは症状だけでは難しい場合があります
- インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症:高熱や全身のだるさを伴うことが多く、流行期には同時に検査することがあります
- クループ症候群:犬の遠吠えのような咳(ケンケンとした咳)と、息を吸うときのゼーゼーが特徴
- マイコプラズマ肺炎:学童期に多く、頑固な乾いた咳が長く続く
- 小児気管支喘息:くり返す喘鳴、アレルギー体質との関連
→ 関連:RS ウイルス感染症準備中 / クループ症候群 / 喘息準備中
当院での診断と治療
ヒトメタニューモウイルス感染症の診断は、症状の経過とお子さまの状態から行うのが基本です。必要に応じて、補助的な検査を組み合わせます。
診断
- 鼻の奥を綿棒で少し取って、その場で調べる迅速抗原検査(結果は 10 分ほどで出ます)があります。ただし、健康保険でこの検査ができるのは「6 歳未満」かつ「診察で肺炎が強く疑われる場合」に限られています。そのため、軽症のときは検査をせず、症状と経過から判断して治療を進めることが多くあります。
- 必要に応じて、血液中の酸素濃度(SpO₂)測定・血液検査を行います。肺炎が疑われ画像検査が必要なときは、連携する医療機関へご紹介します。
治療
ヒトメタニューモウイルスに直接効くお薬や、予防のワクチンはありません。症状を和らげる対症療法が中心です(現行ガイドラインに基づく方針:小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2022)。
- 解熱薬(必要なとき)
- 水分・栄養補給のサポート
- 鼻汁の吸引
- 呼吸の状態に応じた酸素投与(重症時は連携医療機関へ)
喘鳴に対する気管支拡張薬(β2 刺激薬)の定期使用、ステロイド、抗菌薬(抗生物質)は、ガイドラインでルーチンには推奨されていません。抗菌薬はウイルスには効かないため、細菌による二次感染(中耳炎・細菌性肺炎など)が疑われるときに限って検討します。喘息のあるお子さまは、状態に合わせて個別に対応します。
当院で対応する範囲
- 軽症〜中等症のヒトメタニューモウイルス感染症の診察と経過観察
- ご家庭でのケアのご相談
- 重症化のサインがあれば、速やかに連携する高次医療機関へご紹介
家庭でできるケア
ご自宅でできるケアは、呼吸器感染症で一般的にすすめられている内容を中心にお伝えします。
- 水分補給:母乳・ミルク・お茶・経口補水液などを、こまめに少量ずつ。摂取量がいつもの半分以下になるときはご相談ください
- 鼻汁の吸引:哺乳・睡眠の妨げになる鼻水は、こまめに吸引します(手動・電動どちらでも可)
- 加湿:室内の湿度を適度に保ちます。加湿器がなければ、濡れタオルを室内に掛ける・浴室にしばらく入るなどでも代用できます
- 姿勢の工夫(起きている時間):上体を起こした姿勢にすると、呼吸が楽になることがあります。ただしこれは、抱っこなど大人が起きて見守れる時間に限った工夫です。眠るときは、固く平らな場所であお向けに寝かせるのが原則です(乳児では、タオルやクッションで寝床に傾斜をつけることは、窒息や乳幼児突然死症候群=SIDS の観点からおすすめできません)
- 接触予防:流行期は手洗いを丁寧に。タオルは別にし、咳が出るときはマスクを活用するなど、家庭内でできることから取り入れます
予防について
ヒトメタニューモウイルスには、予防のワクチンや、予防に使えるお薬はありません(2026 年 6 月時点)。日常の感染対策が基本になります。
- こまめな手洗い・うがい
- 咳が出るときのマスク(咳エチケット)
- タオル・食器を分ける、よく触れる場所をふく
- 喘息など持病のあるお子さまは、流行期(春)の体調管理に気を配る
よくあるご質問
Q. RS ウイルスと何が違うのですか?
ヒトメタニューモウイルスは RS ウイルスと近い仲間で、症状もよく似ています。違いとしては、ヒトメタニューモウイルスは 1〜3 歳ごろに多く、春(3〜6 月)に流行し、高い熱が続きやすい傾向があります。一方 RS ウイルスは、より低月齢の赤ちゃんで呼吸の症状が出やすいのが特徴です。ただし、見分けは症状だけでは難しく、最終的には経過や検査で判断します。
Q. 検査はしてもらえますか?
軽症の場合は、検査をせずに症状と経過から診断することが多くあります。これは、迅速抗原検査を健康保険で受けられるのが「6 歳未満」かつ「肺炎が強く疑われる場合」に限られているためで、検査をしなくても診断や治療に支障はありません。肺炎が疑われるときなど、必要と判断した場合に検査を行います。胸部レントゲンなどの画像検査が必要なときは、連携する医療機関へご紹介します。
Q. 何度もかかりますか?
かかります。一度感染しても免疫が長く続かないため、生涯にわたって何度もかかる病気です。年齢が上がるごとに軽く済む傾向があり、大人では「いつもの風邪」として経過することが多くなります。
Q. 抗生物質(抗菌薬)は効きますか?
ヒトメタニューモウイルスはウイルスなので、抗生物質は効きません。不要な抗生物質はかえって体に負担になることがあるため、原則として使いません。中耳炎や細菌性肺炎など、細菌による二次感染が疑われるときに限って使うことを検討します。
Q. 保育園・学校にはいつから行けますか? 登園許可証は必要ですか?
ヒトメタニューモウイルス感染症は、学校保健安全法で出席停止が定められた病気には指定されていません。一般的な目安は「解熱していて、全身状態が回復し、水分・食事が摂れている」ことです。園・学校ごとにルールが異なるため、登園許可証が必要かどうかも含めて、当院でご相談に応じます。
Q. 大人にもうつりますか?
うつります。大人では多くの場合「いつもの風邪」として経過しますが、咳がしばらく続くことがあります。ご高齢の方や持病のある方では重くなることもあるため、同居のご家族がいる場合は、手洗いやマスクなどの対策をおすすめします。
症状についてのご相談
「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの年齢・基礎疾患・症状の経過によって変わります。一律にお答えするのが難しいため、お子さまの状況をお伺いした上で個別にご案内します。迷ったら、受診をご検討ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。ヒトメタニューモウイルス感染症をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 公益社団法人 日本小児科学会. ヒトメタニューモウイルス感染症(一般の方向け 子どもの感染症). https://www.jpeds.or.jp/general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-24.html (参照: 2026-06-26)
- 日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2022. 協和企画, 2022. https://jspp1969.jp/journal/guidelines-for-the-treatment-of-pediatric-respiratory-infections/
- こども家庭庁. 赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~. https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids (参照: 2026-06-26)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 6 月 26 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。