感染症 更新日:公開日:

ヘルパンギーナ

夏になると流行する、のどの奥に小さな水ぶくれができるタイプの子どもの風邪です。急に高い熱が出て、のどが痛くて食べたり飲んだりするのをいやがるのが特徴で、5 歳以下のお子さまに多く見られます。多くは数日で熱が下がり、1 週間ほどで自然によくなる病気です。「これってヘルパンギーナ?」「水分が摂れないけど大丈夫?」と迷ったときの目安になるよう、症状の見方と家庭でのケアをまとめました。

💡 この記事の要点

  • 夏に流行するのどの奥の水ぶくれで、多くは1週間ほどで自然によくなります
  • のどにしみない冷たい食事と、少量ずつこまめな水分補給が乗り切るコツです
  • 飲めない時間が長く続く・おしっこが減る・ぐったりする時は判断の目安が変わります

どんな病気か

「ヘンパルギーナ」「ペルパンギーナ」「ヘンパンギーナ」と覚えていらっしゃる方も多いのですが、正しくは ヘルパンギーナ(herpangina)です。読みにくい名前なので、園からのお知らせで見かけて調べに来られる方がほとんどです。

ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルス A 群(手足口病などと同じ「夏かぜ」の仲間)を中心としたウイルスが、のどの奥に感染して起こります。

  • 流行する季節: 6〜8 月の夏季にピーク
  • かかりやすい年齢: 主に 5 歳以下の乳幼児
  • うつり方: 咳やくしゃみ(飛沫)、手やおもちゃを介した接触、そしておむつ替え後の手洗い不足などを介して便からもうつります(糞口感染)
  • 潜伏期間: 感染してから症状が出るまで 3〜6 日

原因となるウイルスはコクサッキーウイルス A 群(A2・A3・A4・A5・A6・A10 型など)が中心で、ほかにコクサッキー B 群やエコーウイルスなどの「夏かぜウイルス」の仲間も原因になります。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子の症状はヘルパンギーナで合っているの?」と感じたとき、次のような特徴があれば可能性があります。

  • 急に出る高い熱(39〜40℃まで上がることもあり、多くは 2〜3 日ほど続きます)
  • のどの奥の小さな水ぶくれ(のどちんこの周りやその奥、扁桃の表面に、1〜2 mm ほどの白っぽいぶつぶつ・水ぶくれや、それが破れた白いただれが見えます)
  • のどの強い痛みで、食事や水分をいやがる
  • よだれが増える(飲み込むのが痛くて口の外に流れる)
  • 赤ちゃんでは 母乳・ミルクの飲みが悪くなる
  • 食欲がない、頭が痛い、ぐったりして元気がない

教科書的には、水ぶくれが破れるタイミングで痛みが強くなることが知られています。痛みのピークの数日は、冷たくてのどにしみない物の出番です(家庭ケアの章へ)。

経過の目安

  • 熱は多くの場合 2〜3 日で下がります(小児科の標準的な教科書でも 1〜4 日で下がり、7 日以内に自然に治るとされています)
  • のどの水ぶくれ・ただれも数日で軽くなります
  • 全体としては 1 週間以内に自然に回復 することがほとんどです

うつりやすさ(感染力)と、うつる期間

園で流行すると次々に発症することが多く、うつりやすい感染症です。うつり方は 3 つあります。

  • 飛沫(咳・くしゃみ)
  • 接触(手やおもちゃを介して)
  • 便から(おむつ替えやトイレのあとの手洗い不足を介して。糞口感染といいます)

感染してから症状が出るまでは 3〜6 日です。園で誰かが発症したら、数日後にきょうだいやお友だちに出てくる可能性がある、という時間感覚で構えておくと慌てずに済みます。

注意していただきたいのは、便からのウイルスは、熱も痛みも治まったあと数週間続くことです。「治ったから、もううつらない」とは言い切れません。おむつ替えとトイレのあとの手洗いは、症状が落ち着いてからも続けてください。

予防の中心は、特別なことではなく 石けんでの手洗いと、タオル・食器・歯ブラシを分けること です。

熱が出ないとき

ヘルパンギーナは、急な高熱で始まるのが典型的な形です。のどに水ぶくれがあっても熱が出ていないときは、次のような病気の可能性も考えます。

  • 手足口病: 熱が出ないことのほうが多く、口の中でも前のほう(頬の内側・舌)に水ぶくれが出て、手足やおしりにも発疹が出ます
  • アフタ性口内炎: ウイルスではなく、小さな口内炎が複数できるタイプ。熱はあまり伴いません
  • ヘルペスによる口内炎: 歯ぐきが赤くはれて出血しやすいのが特徴です

いずれも口の中を見ただけでは見分けが難しいので、診察でご確認ください。

まれに見られる経過

ヘルパンギーナの原因ウイルスは、ごくまれに熱性けいれんや、ウイルス性の髄膜炎(無菌性髄膜炎)、心臓の筋肉の炎症(心筋炎)、急に手足の力が入らなくなる状態(急性弛緩性麻痺)と関係することが報告されています。頻度はとても低い経過ですが、「いつもと様子が違う」と感じたときは、判断のヒントとして覚えておいてください。実際にどうしたら良いか迷うときは、無理に判断せず受診をご検討ください。

紛らわしい病気(鑑別)

のどの痛みや口の中の発疹は、他の病気でも起こります。診察ではこれらと見分けます。

  • 手足口病: 原因ウイルスはヘルパンギーナと同じ仲間。手のひら・足の裏・お尻にも発疹が出るのが特徴です。のどだけに出るヘルパンギーナとは出方が違います。
  • 単純ヘルペスによる口内炎: 歯ぐきが赤く腫れて出血しやすく、はじめて感染したときは重くなることがあります。
  • アフタ性口内炎: ウイルスではなく、小さな口内炎が複数できるタイプ。熱はあまり伴いません。
  • 溶連菌によるのどの感染症: 扁桃に白い膿のようなものが付き、抗生剤での治療が必要になります。
  • 薬による発疹(薬疹): お薬を飲み始めたあとに口の中や全身に発疹が出る場合。

口の中を見ただけでは見分けが難しいことも多いので、診察で確認します。

当院での診断と治療

キッズクリニックまるまるでは、お子さまののどの所見と季節・流行状況・年齢などから 臨床診断 を行います。ウイルスを特定する検査(ウイルス分離・PCR)は通常必要ありません。

ヘルパンギーナのウイルスを直接やっつけるお薬はないため、治療は つらい症状を一つずつやわらげる対症療法 が中心です。

  • 熱や痛みに対して: アセトアミノフェン(カロナール、アンヒバ・アルピニー坐薬などの成分)を使います。発熱の数字より、お子さまの機嫌や水分の入り方を見ながら使います。
  • のどが痛くて食べられないときの工夫: 冷たくて、のどにしみない食事(プリン、ゼリー、おかゆなど)、こまめな経口補水液の補給
  • 脱水を防ぐ: 少量ずつ、何度にも分けて水分を

当院で対応する範囲

  • 臨床診断と対症療法
  • 脱水の評価と、ご家庭での経口補水のアドバイス
  • 口からの水分摂取が難しい場合の点滴(輸液)
  • 様子から髄膜炎・心筋炎・手足の麻痺などが疑われる場合は、速やかに連携する高次医療機関へご紹介します

家庭でできるケア

おうちで安心して看病できるよう、ポイントをまとめます。

水分と食事

  • のどにしみないものを少しずつ。プリン・ゼリー・おかゆ・冷ましたうどん・豆腐・バニラアイスなど、つるんと飲み込めるものが向いています
  • 酸味・塩味の強いもの(オレンジジュース、トマト、味の濃いスープ)は沁みる ので、痛みが強いうちは避けます
  • 経口補水液は スプーンやシリンジで一口ずつ、製氷皿で凍らせてシャーベット状にしたり、ストローを使うなど、飲み方の工夫が役立ちます
  • 水ぶくれが破れるタイミングで一時的に痛みが強くなることがあります。「いつもより飲めない」時期があっても、こまめな声かけと小分け補給で乗り切ります

お薬

  • 解熱・鎮痛薬は アセトアミノフェン を使います。市販薬や処方薬の使い方で迷うときは、診察時にご相談ください
  • 抗生剤は効きません。ウイルスの病気のため、対症療法が中心です

登園・登校について

ヘルパンギーナは 学校保健安全法上の第三種「その他の感染症」 で、インフルエンザのように「法律で必ず○日休む」と決められた病気ではありません。熱が下がり、機嫌や食欲が戻れば登園・登校できる のが基本的な考え方です。ただし、園や学校によって登園許可証や独自のルールがあるので、在籍されている園に確認してください。

ご家族の感染対策

  • タオル・食器・歯ブラシは分ける
  • トイレやおむつ替えのあとは石けんでしっかり手洗い
  • 便からのウイルスは 症状が落ち着いた後も数週間続く ので、おむつ替え後の手洗いはしばらく続けます
  • 大人もうつることがありますが、多くは軽症で済みます。授乳中・妊娠中のご家族は個別にご相談ください

よくあるご質問

Q. のどが痛くて、ご飯も水分もまったく受け付けません。どう飲ませればいいですか?

冷たくて、のどにしみないものから試します。経口補水液をスプーンやシリンジで一口ずつ、凍らせてシャーベット状にするのも有効です。柑橘類・トマト・味の濃いものはしみるので避けます。飲めない時間が長く続く、おしっこの回数が減ってきた、ぐったりしている、と感じたら判断の目安は変わってきますので、受診をご検討ください。

Q. 保育園・幼稚園はいつから行けますか?

法律で出席停止と決まっている病気ではなく、熱が下がって機嫌や食欲が戻れば登園できるのが基本的な考え方です。園によって登園許可証や独自ルールがあるので、在籍園に確認してください。

Q. 兄弟にうつりますか?家ではどう過ごせばいいですか?

うつりやすい感染症です。タオル・食器・歯ブラシを分け、トイレ・おむつ替え後の手洗いを徹底してください。便からのウイルス排出は数週間続くため、症状が落ち着いた後も手洗いは続けます。

Q. 解熱剤はどれを使えばいいですか?坐薬と飲み薬どちらがいい?

小児にはアセトアミノフェン(カロナール、アンヒバ・アルピニー坐薬などの成分)を使います。発熱の数字よりも、お子さまの機嫌・水分の入り方を優先して見てあげてください。使い方で迷うときは、診察時にご相談ください。

Q. 手足口病とどう違うのですか?

原因ウイルスは似た仲間です。ヘルパンギーナは喉の奥だけ手足口病は手のひら・足の裏・お尻にも発疹 が出るのが見分けのポイントです。口の中だけでは判別が難しいこともあるので、診察でお伺いします。

Q. 予防接種はありますか?

ヘルパンギーナを予防するワクチンはありません。手洗い、タオルや食器の共用を避けることが一番の予防になります。

Q. 看病している自分や下の子にうつるのが心配です。

大人もかかることはありますが、多くは軽症で済みます。家族の手洗いとタオル分けが基本です。授乳中・妊娠中のご家族は、症状や状況に応じて個別にご案内しますので、診察時にお声がけください。

Q. 結局、何日くらい休むことになりますか?

法律で日数が決まっている病気ではありません。目安としては、熱が下がって、機嫌と食欲が戻れば登園・登校できるという考え方です。熱そのものは 2〜3 日(教科書では 1〜4 日)で下がり、全体では 1 週間以内に落ち着くことがほとんどですので、実際には 2〜4 日ほどお休みされる方が多くなります。ただし園によって登園許可証などの独自ルールがありますので、必ず在籍園にご確認ください。

Q. 潜伏期間はどれくらいですか? きょうだいはいつまで様子を見れば?

うつってから症状が出るまでは 3〜6 日です。上のお子さまが発症したら、その 1 週間ほどは下のお子さまの熱とご機嫌に気をつけて見てあげてください。なお、便からのウイルスは症状が治まったあとも数週間続くため、おむつ替え・トイレのあとの手洗いはしばらく続けていただくのが安心です。

Q. 大人にもうつりますか? 大人がかかったらどうすれば?

大人もかかることがあります。同じウイルスによる病気ですので、急な発熱とのどの奥の水ぶくれ、強いのどの痛みという症状の出方も基本的には同じです。ご家庭内では、タオル・食器・歯ブラシを分け、手洗いを徹底してください。

当院は小児科ですので、大人の方の診療は行っておりません。おとなの方は内科・耳鼻咽喉科の受診をご検討ください。授乳中・妊娠中のご家族については、お子さまの診察の際にあわせてご相談いただけます。

Q. 検査はしますか?

のどの所見と、季節・流行状況・年齢から診断します(臨床診断)。ウイルスを特定する検査(ウイルス分離・PCR)は通常必要ありません。ただし、扁桃に白い膿のようなものが付いていて溶連菌が疑われるときは、溶連菌 の迅速検査を行うことがあります。抗生剤で治療する病気かどうかで対応が変わるためです。

Q. のどの奥に白いぶつぶつが見えます。ヘルパンギーナでしょうか?

のどちんこの周りや奥、扁桃の表面に 1〜2 mm ほどの白っぽいぶつぶつ(水ぶくれ)が見え、急な高熱を伴っていればヘルパンギーナの可能性があります。ただし、扁桃に白いコケのようなものが付いている場合は溶連菌のこともあり、口の中の前のほうに出ていれば 手足口病 のこともあります。見た目だけでは区別が難しいので、診察でご確認ください。

症状についてのご相談

「家でできるケアを試しても水分が摂れない」「ぐったりしている」「いつもと様子が違うと感じる」——そんなとき、ひとりで抱え込まずに気軽にご相談ください。お子さまの状態を直接お伺いした上で、受診のタイミングや家庭での対応を個別にご案内します。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。ヘルパンギーナをはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 厚生労働省. ヘルパンギーナ. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/herpangina.html (2026-06-02 参照)
  2. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説 2025 年 4 月改訂版. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250430_yobo_kansensho.pdf (2026-06-02 参照)
  3. 国立成育医療研究センター. ヘルパンギーナ. https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/herpangina.html (2026-06-02 参照)
  4. 木田美由樹. 小児のエンテロウイルス感染症. 日本環境感染学会誌. https://www.kankyokansen.org/journal/full/03206/032060344.pdf (2026-06-02 参照)
  5. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第15章 感染症 B.ウイルス感染症「ヘルパンギーナ」(印刷 p.336-337)
  6. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(感染症「ヘルパンギーナ」印刷 p.521)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 8 月 27 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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