スギ花粉症の舌下免疫療法 — 始められるのは、花粉が飛ぶ前の時期だけです
この治療でいちばん先にお伝えしたいのは、始められる時期が決まっていることです。「スギ花粉が飛散している時期はこの治療は開始しません」と、お薬の患者向けガイドに明記されています。飛散期はスギ花粉に対する体の過敏性が高まっている場合が多いためです。
つまり、春に「今年もつらかった」と思ってから受診しても、その年はもう始められません。次のシーズンに向けて動くなら、花粉が飛んでいない時期にご相談いただく必要があります。
「毎年、目をこすってまぶたが腫れる」「集中できず勉強にならない」「薬を飲むと眠くなる」——お子さんの花粉症でお困りの方に、この治療は選択肢になり得ます。ただし毎日3年以上続ける治療でもあります。このページでは、始める前に知っておいていただきたいことを整理します。
どういう治療か — 「症状を抑える」のではなく「体を慣らす」
日本アレルギー学会の『アレルギーの手引き2026』には、アレルゲン免疫療法についてこう書かれています。
アレルゲン免疫療法はアレルギー性鼻炎の自然経過を改善できる可能性がある唯一の治療で、通常の薬物治療で効果が乏しい場合にも効果が期待できます
抗ヒスタミン薬などは「出ている症状を抑える」お薬です。これに対し舌下免疫療法は、スギ花粉のエキスを少しずつ体に入れて体を慣らしていく治療で、体質そのものに働きかけます。
従来は皮下注射で行われていましたが、注射のため頻回の通院が必要で、まれとはいえ重い副作用がありました。舌下免疫療法は重篤な副作用が少なく、自宅での投与が可能という特徴があります。
効果については、次のように報告されています。
スギ花粉症に対して3年間舌下免疫療法を行うことで高い治療効果と、さらにその終了後も少なくとも2年間は効果が持続することが明らかになっています
ただし「効果発現までには数か月必要」であり、「治療後の十分な効果の持続には3年以上の治療が推奨」されています。始めてすぐ楽になる治療ではありません。
始められる時期 — ここがいちばん大事です
| 開始できる時期 | スギ花粉が飛散していない時期 |
| 開始できない時期 | スギ花粉の飛散期(飛散期は過敏性が高まっている場合が多いため) |
| すでに始めている場合 | 飛散期も継続します(自己判断で中断しない) |
添付文書には、使用開始にあたって「前シーズンの花粉飛散時期における患者の症状を踏まえ、他の治療法も勘案した上で、本剤の適用の可否を判断すること」とも記載されています。
つまり実務的にはこうなります。
- 春(花粉が飛んでいる時期) → つらさを記録しておく。開始はできない
- 花粉が飛んでいない時期 → 記録をもとに、来シーズンに向けて開始を検討する
「今年つらかった」を来年に活かすには、シーズンが終わってから動く必要がある、ということです。
何歳から? — 「毎日ちゃんとできるか」で考えます
『アレルギーの手引き2026』には、こう書かれています。
小児にも使用可能で年齢制限はありませんが、一般的には治療について一定の理解ができる5歳以上の患者さんが適応になります
年齢で機械的に決まるというより、次の手順を毎日きちんとできるかが実際の目安になります。
毎日の手順 — 意外と細かいので、始める前にご確認ください
患者向医薬品ガイドに書かれている手順です。
- 初回は医療機関で医師の監督のもとに使用し、使用後少なくとも30分は安静にする
- 錠剤を舌の下に1分間保持してから飲み込む(唾液で溶けても、すぐ飲み込まず1分間保持)
- 飲み込んだ後、5分間はうがいや飲食を控える
- 使用の前と、使用後2時間は、激しい運動・入浴などを避ける
- できるだけ家族がいる場所・日中に使用する
量は、投与開始後1週間は2,000JAUを1日1回1錠、2週目以降は5,000JAUを1日1回1錠です。
お子さんの場合、この「1分間じっとして、そのあと5分間なにも飲まない」が最初のハードルになります。朝の登校前より、落ち着いた時間帯のほうが続けやすいことが多いです。
うまくいかなかったときの決まりも、あらかじめ知っておいてください
- 1分間保持できずに飲み込んでしまった → その日は再度服用しない。翌日、前の日の量を服用する
- 飲み忘れた → 決して2日分を一度に服用しない。その日のうちに気づけばその日の量を、翌日気づけば前の日の量を服用する
使えない・注意が必要なお子さん
使用できない方(添付文書より)
- 過去にこの薬でショックを起こしたことのある人
- 重い気管支喘息の人
慎重に使う必要がある方(添付文書より)
- 過去にアレルゲンエキスによる診断・治療や、スギ花粉を含む食品でアレルギー症状を起こしたことのある人
- 気管支喘息の人
- 悪性腫瘍、または免疫系に影響を及ぼす全身性の疾患を伴う人
『アレルギーの手引き2026』も「特に喘息合併者は注意が必要とされ、コントロール不良な喘息合併の患者さんは適応となりません」としています。
小児では喘息とアレルギー性鼻炎を合併していることが珍しくありません。まず喘息の状態を整えることが先になる場合があります。受診のときに、喘息の治療歴・発作の頻度を教えてください。
その日、使わずに相談していただきたいとき
- 喘息発作時や気管支喘息の症状が激しいとき
- 急性感染症にかかっているときや、体調が悪いとき
- 抜歯後や口内炎など、口の中に傷や炎症があるとき
副作用について
患者向医薬品ガイドによると、使用開始初期(およそ1か月)に、口の中の副作用が多くあらわれます。口の中のかゆみ・違和感・のどの違和感などです。多くは軽く、続けるうちに落ち着いていきますが、症状が出たときはご相談ください。
まれにアナフィラキシー(全身のかゆみ、じんま疹、のどのかゆみ、息苦しさなど)が起こることがあります。特に注意が必要なのは、服用後30分・投与開始初期・スギ花粉飛散時期とされています。だからこそ、初回は医療機関で30分観察し、自宅では家族がいる日中に使うことが求められています。
症状が出たときの対応は、始める前にご家族全員が理解しておいてください。
当院での取り扱いについて
キッズクリニックまるまるは2026年10月中旬〜下旬の開院を予定しています。舌下免疫療法の取り扱いについては、開院にあわせて アレルギー外来のご案内 でお知らせします。
なお、治療の前には皮膚反応テストまたは血液検査を行い、スギ花粉症であることを確認します(患者向医薬品ガイド)。「たぶん花粉症だと思う」という段階の方は、まず診断からになります。
よくあるご質問
Q. 春に受診すれば、その春から始められますか?
始められません。「スギ花粉が飛散している時期はこの治療は開始しません」と明記されています。つらかった記憶が新しいうちに受診いただくのは大歓迎ですが、開始は花粉が飛んでいない時期になります。
Q. 何年続ける必要がありますか?
「治療後の十分な効果の持続には3年以上の治療が推奨されています」。3年間の治療で、終了後も少なくとも2年間は効果が持続すると報告されています。短期間でやめると効果が期待できません。
Q. 途中でやめたらどうなりますか?
「症状が改善しても、すぐにこの薬の使用を中止すると再発する可能性がある」ため、中止については必ず医師に相談してください。
Q. ダニのアレルギーにも同じ治療がありますか?
あります。舌下免疫療法は「スギ花粉症およびダニ通年性アレルギー性鼻炎に対して使用が可能」です。ダニは季節性ではないため、開始時期の制限はスギとは異なります。診察でご相談ください。
Q. 花粉症の薬(飲み薬・点鼻薬)はやめられますか?
治療中も症状に応じてお薬を併用します。すぐに薬が不要になる治療ではありません。 効果発現には数か月かかります。
Q. 兄弟で同じ薬を使い回せますか?
できません。処方はお一人ごとです。また、体調や口の中の状態によって「その日は使わない」判断が必要になるため、必ずご本人の診察を受けてください。
Q. 眠くならない薬に変えるだけではだめですか?
それも立派な選択肢です。舌下免疫療法は毎日3年以上という負担がある一方、自然経過を改善できる可能性がある唯一の治療という位置づけです。どちらが合うかはお子さんの症状の強さと生活によりますので、診察でご相談ください。
花粉症・アレルギーのご相談
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。お子さまの花粉症でお困りのときは、症状が強かった時期のメモをお持ちのうえ、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 患者向医薬品ガイド シダキュア スギ花粉舌下錠2,000JAU/5,000JAU(2019年11月更新). https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/480306_4490035F1027_1_00G.pdf (閲覧: 2026-08-21)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医療用医薬品 添付文書情報 シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAU/5,000JAU. https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490035F1027_1_08/ (閲覧: 2026-08-21)
- 一般社団法人日本アレルギー学会(厚生労働省補助事業 アレルギー情報センター事業). アレルギーの手引き2026. https://www.jsaweb.jp/huge/JSA_tebiki2026.pdf (閲覧: 2026-08-21)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 9 月 11 日