子どもの喘息
— ゼーゼー・夜間咳が気になるときに
「風邪のあとの咳がなかなか止まらない」「夜中や明け方にゼーゼーと音がする」——そんなお子さまの様子が繰り返し続くと、もしかして喘息かな?と不安になりますね。子どもの喘息は、空気の通り道(気道)に見えない炎症が続くことで、ゼーゼーや咳をくり返す病気です。今は治療と毎日のケアの選択肢が広がっており、適切に付き合えば多くのお子さまが園や学校でいつも通り過ごせます。このページでは、見分け方・当院での治療・家庭でできることをまとめました。
💡 この記事の要点
- 気道の炎症が続いてゼーゼーや咳をくり返す病気で、適切に付き合えば多くのお子さまが園や学校でいつも通り過ごせます。
- 処方された予防の吸入を症状がなくても毎日続け、寝室をきれいに保ち、タバコの煙を子どもに届けないようにしましょう。
- 発作止めを使っても呼吸の苦しさが改善しない・唇が紫になる・話せないほど苦しがるときは速やかに受診を。
どんな病気か
喘息は、気道(のどから肺の手前までの空気の通り道)にずっと小さな炎症が残っている状態が背景にある病気です。何かのきっかけで気道がさらに狭くなると、ゼーゼーや咳といった発作が起こります。発作が落ち着いている時でも、見えないところで炎症は続いているのが特徴です。現行ガイドライン(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2023)でも、この「慢性炎症」を抑えていく治療が中心とされています。
- 原因の中心はアレルギーと感染:ダニ・ハウスダスト・ペット・カビ・花粉などのアレルゲンや、RS ウイルス・ライノウイルス・インフルエンザなどの感染が、気道の炎症や発作のきっかけになります。
- そのほか悪化につながりやすいもの:タバコの煙(受動喫煙)、大気汚染、運動、冷たい空気、強い緊張やストレスなど。
- 小さい頃から始まることが多い:小児では乳幼児期に発症するお子さまが多く(発症は 1〜3 歳ごろがピークとされます)、学童期の有病率はおよそ 5〜10% と報告されています。
- 他のアレルギーとのつながり:乳児期にアトピー性皮膚炎があったお子さまが、幼児期になって喘息を発症することがあります(「アレルギーマーチ」と呼ばれます)。喘息のお子さまの約半数にアトピー性皮膚炎の経験があるとされ、皮膚・鼻・気道のアレルギーは互いに関係し合っています。
- 大人になるとどうなるか:思春期までに約半数が落ち着く(寛解)一方で、約半数は大人の喘息に移行することも分かっています。だからこそ、子どものうちから無理なく続けられる長期管理が大切になります。
主な症状と気づきのポイント
「うちの子の咳・ゼーゼーは喘息?それともただの風邪?」——保護者の方から最も多いご質問です。喘息でよくみられるのは、次のような症状の くり返し です。
- ゼーゼー・ヒューヒュー:息を吐くときに笛のような音が聞こえる
- 夜間〜明け方に強くなる咳:寝てしばらくして、または朝方に咳き込む
- 運動後・笑った後・泣いた後の咳:体を動かしたあとに咳が出やすい
- 風邪のあとに咳だけが長引く:風邪が治っても、咳だけ 2〜3 週間以上残る
「1 回きりの咳」より、「同じパターンの症状をくり返している」かどうかが、喘息を疑う大きな手がかりです。年齢によっても見え方は少し変わり、乳児では細い気管支の炎症との見分けが、幼児では風邪のたびの長引く咳が、学童では運動後の咳がきっかけになりやすい傾向があります。気になるパターンがあれば、診察で経過を一緒に整理させてください。
紛らわしい病気(鑑別)
ゼーゼーや咳が続くからといって、すべてが喘息というわけではありません。当院では次のような病気との見分けも丁寧に確認します。
- クループ症候群:息を 吸う ときに「ケンケン」という犬の鳴き声のような咳が出て、声がかすれる病気。喘息は息を吐くときに「ヒューヒュー」音が出やすい点が違います。
- RS ウイルスなどによる細気管支炎:乳児で初めてゼーゼーが出た場合は、肺の奥の細い気管支の炎症(細気管支炎)であることが多いです。
- 急性の気管支炎:かぜのウイルスによる一時的なもので、くり返しにくいのが特徴です。
- 百日咳:発作のように咳が連続して止まらなくなる病気。
- 気道異物:突然始まる咳・ゼーゼー。片側だけ強い場合は要注意です。
- ストレス・緊張で出る咳(心因性の咳):日中に集中し、寝ているあいだは出ないのが特徴です。
当院での診断と治療
診断の進め方
- 問診:症状のパターン(時間帯・きっかけ・くり返しているか)、家族のアレルギー歴、本人のアトピー・食物アレルギー・鼻炎の有無などを詳しくお伺いします。
- 診察:呼吸の様子、聴診器でゼーゼーの有無を確認します。
- 補助検査:必要に応じて、血液検査(IgE・好酸球・アレルゲン特異的 IgE)を行います。呼気中の一酸化窒素を測る検査(FeNO)や、肺の働きを測る検査(スパイロメトリー)が必要な場合は、実施できる医療機関をご紹介します。
当院で行う治療
治療は大きく 「発作が出たときに気管支を広げる薬」 と 「毎日続けて発作を起こしにくくする予防の薬」 の 2 本立てで考えます。重症度に応じて段階的に組み立て、定期的に見直していきます。
- 発作のときに使う薬(短時間作用 β2 刺激薬/SABA):気管支をすばやく広げる吸入薬(メプチン®・サルタノール® 等)。軽い発作はこの吸入で落ち着くことが多いですが、中くらい以上の発作では飲み薬のステロイドを追加したり、強い発作では病院での点滴・酸素投与が必要になることもあります。「発作止めだけで毎回乗り切れる」病気ではない、という点を医師と共有しておくことが大切です。
- 毎日続ける予防の吸入(吸入ステロイド薬/ICS):気道の炎症をしずめておく長期管理の 中心となる薬(フルタイド®・オルベスコ®・パルミコート® 等)。軽症持続〜重症持続のお子さまでまず第一に検討します。
- 飲み薬タイプの予防薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬/LTRA):シングレア®・キプレス® 等。吸入が難しい場合や、軽い症状で続けやすさを優先したいときの選択肢です。
- 重症のお子さま向けの治療:吸入ステロイドと長時間作用型 β2 刺激薬(LABA)の配合剤、抗 IgE 抗体、抗 IL-5 抗体などが用いられます。
- ダニ舌下免疫療法:5 歳以上で、アレルギー性鼻炎を合併しているお子さまでは有効な選択肢になります(当院のアレルギー外来で対応します)。
- 重症の発作・呼吸不全:高次医療機関にすみやかにご紹介します。
「アクションプラン」を一緒に作ります
発作のときに どの薬を・いつ・どのくらい使い、どんなサインで受診するか を、書面の「アクションプラン」として医師と一緒に決めていきます。年長児や重症のお子さまでは、PEF(自宅で測れる呼吸の指標)を使った管理を組み合わせることもあります。
家庭でできるケア
毎日のちょっとした工夫で、発作の起きにくさはずいぶん変わります。すべてを完璧にやる必要はなく、続けやすいものから取り入れてください。
まずここから(効果が大きい3つ)
- 処方された予防の吸入は、症状がなくても毎日続ける — 自己判断でやめると、見えないところで炎症が戻りやすくなります。
- 寝室をできるだけきれいに — シーツ・枕カバーだけでも週 1 回の洗濯、布団乾燥機の活用、寝室にぬいぐるみやカーペットをためこまない、湿度は 50% 前後を目安に。
- タバコの煙を子どもに届けない — 家の中・車内での喫煙を避ける、外出から帰ったあとは服を替える、などの工夫が発作の起こりにくさにつながると分かっています。
発作のときに親ができること
- お子さまを上体を起こした姿勢に(寝かせきりにせず、抱っこやクッションで上半身を起こすと呼吸が楽になります)
- 「大丈夫だよ、ゆっくり息を吐いてね」と落ち着いた声かけ。まずは大人が一度深呼吸をしてから対応すると、お子さまの不安もやわらぎます。
- 処方されている発作止めの吸入があれば、指導されたタイミング・回数で使う
- 冷たい外気・タバコ煙など、悪化させそうな環境から離す
日々の観察メモが診察の助けになります
「いつ・どんな時に・どれくらい」咳やゼーゼーが出たか、発作止めを使った後どのくらいで楽になったかを簡単にメモしておくと、次の診察で長期管理を調整する大きな手がかりになります。スマホのメモや市販の喘息日誌でかまいません。
予防接種・感染対策
風邪のウイルス(特に RS ウイルス・ライノウイルス・インフルエンザ)は発作の大きなきっかけです。インフルエンザ・肺炎球菌・COVID-19 などの予防接種を、年齢に応じて積極的にご検討ください。
園・学校との連携
コントロールが良ければ、運動・プール・宿泊学習などは基本的に制限不要です。発作止めの吸入を携帯し、必要に応じて運動前に使う、薬の名前と連絡先を書いた「発作時対応カード」を先生に渡しておく、といった準備でほとんどの行事に参加できます。
よくあるご質問
Q. 吸入ステロイドを毎日続けるのは、身長や成長への影響が心配です。
吸入ステロイドは、薬を 気道に直接届ける ことを目的とした薬で、体全体に取り込まれる量はとても少ないことが分かっています。そのため、長期に続けても比較的安全に使える薬として、現行ガイドラインでも長期管理の中心に位置づけられています。逆に治療が不十分なまま炎症が続くと、気道が変形して元に戻りにくくなる「気道リモデリング」が起きやすくなるため、早めの予防治療の方が長い目で見てメリットが大きいと考えられています。心配な点は遠慮なくご相談ください。
Q. 風邪のあとに咳だけが何週間も続いています。これは喘息ですか?
「風邪のたびに咳が長引く」「同じようなパターンをくり返す」というのは、喘息を疑う大事なサインのひとつです。ただし、他の原因(鼻水が喉に流れる、副鼻腔炎、感染後の気道過敏など)でも長引く咳は起こります。診察でこれまでのパターンをお聞きすると見当をつけやすいので、一度ご相談ください。
Q. 自己判断で吸入を一時的にやめてもいいですか?
調子の良い時でも気道の炎症は続いていることが多く、自己判断での中止は再燃(症状の戻り)や悪化のきっかけになりやすいことが知られています。薬の量や種類の調整は、必ず診察で一緒に相談しながら進めましょう。
Q. 運動会・プール・宿泊学習は参加できますか?
長期管理がうまくいっていれば、基本的に制限は不要です。運動前に発作止めの吸入を使う、薬を携帯する、先生と発作時の対応を共有しておく、といった準備で多くのお子さまが行事に参加できています。
Q. 兄弟や家族に喘息の人がいません。それでも喘息になりますか?
なります。家族にアレルギー疾患の方がいると発症しやすい傾向はありますが、家族歴がなくても発症するお子さまは少なくありません。家族歴の有無だけで判断せず、症状のパターンで考えていきます。
Q. ペットを飼ってもいいですか?
一律に「ダメ」とお伝えする必要はありません。アレルギー検査で、その動物がお子さまのアレルゲンになっているかを確認したうえで、寝室には入れない・こまめなブラッシングと掃除をする、などの工夫で続けられるご家庭もあります。判断に迷う場合は診察でご相談ください。
症状についてのご相談
「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、受診をご検討ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。喘息をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 日本小児アレルギー学会. 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2023(JPGL2023). Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00825/ (参照 2026-06-02)
- 日本小児アレルギー学会. 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2020. https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf (参照 2026-06-02)
- 株式会社協和企画. 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2023. https://www.kk-kyowa.co.jp/service/publishing/book_list/d20231118/ (参照 2026-06-02)
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第13章 アレルギー疾患 各論-A「気管支喘息」(印刷 p.289-294)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(アレルギー「気管支喘息」印刷 p.420-425)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 9 月 10 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。