はしか(麻疹)はいま落ち着いています — 母子手帳の「2回」を、いまのうちに確かめませんか
このページを読み終えたら、母子健康手帳を開いて、麻疹(ましん)含有ワクチン=MRワクチンを2回打ち終えているか確かめてみてください。流行しているときに慌てて探すより、落ち着いているいまのほうが、ゆっくり確認できます。
「はしか」「麻疹」「麻しん」は、すべて同じ病気の呼び方です。
いまの流行状況(2026年8月30日時点)
2026年の夏は落ち着いています。 国の感染症発生動向調査(週報)でみると、東京都の報告数は直近8週でほぼ動いていません。
| 週 | 期間 | 東京都の報告 | 全国の報告 |
|---|---|---|---|
| 第30週 | 7/20〜7/26 | 0 件 | 0 件 |
| 第31週 | 7/27〜8/2 | 1 件 | 1 件 |
| 第32週 | 8/3〜8/9 | 1 件 | 2 件 |
| 第33週 | 8/10〜8/16 | 0 件 | 0 件 |
ただし2026年に入ってからの累計では、東京都で266件・全国で549件が報告されています。この数字のほとんどは、春(4〜5月)に集中して起きた流行によるものです。
春に何が起きたか — 都内の小学校で47人
東京都の集計では、2026年第15週(4月)に都内の小学校で1件・患者47人の集団感染が報告されました。ほかにも同時期に、施設や医療機関で数人規模の集団発生が続いています。
このときの流行は、遺伝子型 D8 のウイルスが都内で人から人へ広がったものでした。第15〜17週には、検査で確認されただけでも「推定感染地域=国内」の例が週30件前後ありました。
きっかけは海外からの持ち込みでも、いったん入れば国内で広がることがあります。 これが2026年春に実際に起きたことでした。
「落ち着いている」いまのうちに、できることがあります
国立健康危機管理研究機構の解説では、麻疹はこういう病気です。
麻しんは感染力が極めて強い感染症です。免疫のない方がウイルスに曝露すると90%以上が発症し、肺炎や脳炎などで重症化することもあります
「90%以上」という数字は、他の感染症と比べても際立っています。同じ空間にいるだけでうつることがあると考えていただくとよいと思います。免疫のない方が多い場所に1人入ると、広がりやすくなります。都内の小学校で47人という数字も、そうして生まれたものでした。
そして直近も、ゼロが続いているわけではありません。第31・32週には東京都で1件ずつ報告があり、検査で確認された推定感染地域はベトナム・モンゴルでした。海外からの持ち込みは、いまも続いています。
患者さんの中心は10〜20代。それでも、小さなお子さんに関わります
意外に思われるかもしれませんが、2026年4月時点の全国の集計では、報告されている患者さんは10〜20代を中心にみられていました。そして、
10-20代の患者では、2回のワクチン接種が済んでいない方や接種歴不明の方が約半数を占めていました
これは、その世代の接種制度の変遷によるものです。
では、なぜ小児科のページでこの話をするのか。理由は2つあります。
1つめ。まだ打てない赤ちゃんがいます。 麻しんのワクチン(MRワクチン1期)は1歳からです。それより小さい赤ちゃんは、まだ自分で備えることができません。周りの誰かがもらってくると、そのままご家庭に入ってきてしまいます。
2つめ。「2回目がまだ」というお子さんが少なくありません。 MRワクチンは1歳(1期)と、小学校入学前の1年間(2期)の2回です。2期は「年長さんの1年間」という限られた期間で、しかも上のお子さんの入学準備で慌ただしい時期と重なるため、うっかり忘れやすい回でもあります。
いま10〜20代で「2回打ち終えていない」方が多いのは、かつて2回接種の制度が十分でなかった時期の影響です。いまのお子さんは2回打てる制度の中にいます。せっかくの機会なので、活かしていただければと思います。
入ってくるのは海外から。広がるのは国内で
海外から日本に麻しんウイルスが持ち込まれるリスクが高まっています
— 国立健康危機管理研究機構「麻しん(はしか)の発生状況」
麻疹は、国内にウイルスが住み着いて毎年流行しているという病気ではありません。始まりは、海外で感染した人が帰国・来日して発症するところです。実際、東京都で直近に検査確認された例の推定感染地域も、ベトナム・モンゴルでした。
問題はそのあとです。2026年春の都内の流行は、持ち込まれたウイルスが国内で人から人へ広がったもので、小学校で47人という規模になりました。
つまり、持ち込みは止められないが、広がるかどうかは接種率で決まります。 母子健康手帳の確認が効くのは、まさにここです。
ご家族に海外へ行く予定がある方がいる場合は、出発前にご自身の接種歴も確かめておかれると安心です。特に、まだ1歳になっていない赤ちゃんがいるご家庭では意味が大きくなります。
いま、ご家庭でできること
① 母子健康手帳を開く
確認するのは1点だけです。麻しん含有ワクチン(MR)を2回打っているか。
| 回 | 時期 |
|---|---|
| 1期 | 1歳になったら(1歳のうちに) |
| 2期 | 小学校入学前の1年間(年長の年度) |
「打ったはずだけど記録が見つからない」ときは、打っていない前提で考えておくと安心です。診察でご相談ください。
② 1歳の誕生日を過ぎたら、先延ばしにしない
1歳は打つワクチンが多い時期です。「まとめて後で」と考えているうちに、数か月たってしまうこともあります。麻しんについては、1歳になったらなるべく早めがおすすめです。
麻しん含有ワクチンを2回接種することは、発症や重症化のリスクを下げる最も重要な予防策です
③ 年長さんの保護者の方へ
2期はその1年間が定期接種の対象期間です。年度が変わる前に済ませておけると安心です。
麻しんかもしれないときは、受診の前にお電話ください
これは麻しんならではの、ひとつお願いしたいことです。
麻しんは感染力が強いため、待合室で他の患者さんにうつってしまうことがあります。まだワクチンを打てない赤ちゃんが、同じ待合室にいるかもしれません。
そこで、麻しんかもしれないと感じたときは、受診の前に一度お電話をいただけると助かります。 入り方や時間帯をご案内します。
たとえば、こんなときです。
- 発熱と、咳・鼻水・目の充血が同時にあり、そのあと発疹が出てきた
- 麻しんの患者さんと接触した心当たりがある
- 家族や本人が最近海外から帰国していて、発熱・発疹がある
- 保育園・学校で麻しんが出たと連絡があった
受診の目安
🚑 すぐに受診(受診前に電話を)
- ぐったりして反応が鈍い、けいれん
- 呼吸が苦しそう
- 水分がとれない
🌅 早めに(受診前に電話を)
- 発熱+咳・鼻水・目の充血のあとに発疹が出てきた
- 上記に加えて、海外渡航歴・接触歴がある
よくあるご質問
Q. 1回打っていれば大丈夫ですか?
2回接種が推奨されています。実際、2026年4月時点の全国の集計では、10〜20代の患者さんの「2回のワクチン接種が済んでいない方や接種歴不明の方が約半数」を占めていました。1回だけでは十分でないことがあります。
Q. まだ1歳になっていません。どうすればよいですか?
1歳未満は定期接種の対象ではありません。ご家族が2回接種を済ませていることが、その子を守る一番の方法になります。海外渡航などの事情がある場合は個別の判断になりますので、診察でご相談ください。
Q. 記録が見つかりません。もう一度打っても大丈夫ですか?
接種歴が確認できない場合の対応は、年齢や状況によって変わります。自己判断はせず、母子健康手帳(見つかる範囲で)をお持ちのうえ、診察でご相談ください。
Q. MMRワクチンが承認されたと聞きました。関係ありますか?
2026年5月に、麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合ワクチン「ミムリット」が承認されています。制度がどうなるかを含め、MMRワクチン「ミムリット」が承認 にまとめました。ただし、いま2期がまだのお子さんは、制度の動きを待たずに現行のMRワクチンで済ませておくのがおすすめです。
Q. かかったら、どんな薬で治しますか?
麻しんウイルスそのものに効く薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法が中心になります。だからこそワクチンで防ぐことが重要とされています。
Q. 学校はいつから行けますか?
麻しんは学校保健安全法の出席停止対象で、解熱後3日を経過するまでが基準です。実際の再開は経過によりますので診察でご確認ください。登園・登校はいつから? もご覧ください。
予防接種のご相談
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。母子健康手帳をお持ちのうえ、Web または LINE からご予約ください。麻しんかもしれないと感じたときは、ご予約の前にお電話ください。
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構. 感染症発生動向調査週報(IDWR)速報データ 2026年第30〜33週・全数把握疾患 都道府県別報告数. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/provisional/sokuhou.html (閲覧: 2026-08-30)
- 東京都感染症情報センター. 麻しんの流行状況(東京都 2026年)(更新日 2026年8月27日). https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/measles/measles/ (閲覧: 2026-08-30)
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 麻しん(はしか)の発生状況について(更新日 2026年4月20日). https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/20260420-about-situation/index.html (閲覧: 2026-08-30)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 9 月 11 日