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フルミスト(鼻からのインフルエンザワクチン)— 注射との違いと、選べないケース

結論からお伝えします。日本小児科学会は、2歳から19歳未満のお子さんについて「注射(不活化ワクチン)と鼻から(フルミスト)のどちらかを同等に推奨する」としています [1]。「鼻からのほうがよく効く」という位置づけではありません。

毎年この時期になると、「注射がこわくて泣きさけぶので、鼻からのを打たせたい」というご相談をいただきます。押さえつけて打つのがつらい、というお気持ちはとてもよくわかります。

ただ、インターネットで調べると「注射より大幅に効果が高い」といった説明を見かけることがあり、期待して来られる方が少なくありません。ここは、実際の学会文書の記載と食い違っているところです。

このページでは、次の3つをお伝えします。

  • 効果について、日本の学会が実際にどう書いているか
  • 打てる年齢・回数などの決まり
  • 鼻からを選べない(注射をおすすめする)ケース

これは「生きたウイルスを鼻に噴霧する」ワクチンです

フルミスト®点鼻液は、弱めた生きたインフルエンザウイルスを鼻の中に噴霧するワクチンです(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン、略して LAIV)。注射で打つ一般的なインフルエンザワクチン(不活化インフルエンザHAワクチン、略して IIV)とは、成り立ちが違います。

注射(不活化・IIV) 鼻から(フルミスト・LAIV)
中身 ウイルスを不活化したもの 弱めた生きたウイルス
打ち方 皮下注射 左右の鼻腔に噴霧
打てる年齢 生後6か月から 2歳〜19歳未満 [1]
回数 年齢により1〜2回 1シーズン1回 [1]

鼻に噴霧されたワクチンウイルスは鼻やのどで増え、自然にかかったときに近い形の免疫(局所の IgA など)を誘導することが期待されています [1]。国内では2023年3月27日に製造販売承認され、2024/25シーズンから実際の接種が始まりました [1]。

【いちばん多い誤解】「注射より効く」とは言えません

日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会の文書には、こう書かれています。

不活化インフルエンザ HA ワクチン(中略)と経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(中略)の間にインフルエンザ罹患予防効果に対する明確な優位性は確認されていません。[1]

そのうえで、2歳〜19歳未満に対して「いずれかのワクチンを用いたインフルエンザ予防を同等に推奨する」としています [1]。

国内で行われた試験の数字も見ておきます。2016/17シーズンに2歳〜19歳未満の健康なお子さんを対象に行われた比較試験では、すべての株によるインフルエンザに対する有効率は 28.8% でした [1]。その年に多かった A/H3N2 亜型に対しては 28.0% で効果が確認されましたが、A/H1N1 亜型株や B 型株に対する有効性は確認できませんでした [1]。

海外では評価が揺れた時期もあります。米国では2015/16シーズンの成績が低かったことなどから、予防接種諮問委員会(ACIP)が2016/17・2017/18の2シーズン、一時的にフルミストの推奨を中止しました [1]。その後2018/19シーズン以降は推奨が再開され、現在は他のインフルエンザワクチンと同等に推奨されています [1]。

こう書くと不安に思われるかもしれませんが、「効かないから打たないほうがよい」という意味ではありません。学会は注射と同等に推奨しています。お伝えしたいのは、「鼻からのほうが優れているから選ぶ」という理由づけは、いまの日本の学会文書とは合わない、ということです。痛みがないというのは、それ自体がお子さんにとって十分に大きな意味を持つ利点です [1]。

打ち方と回数の決まり

項目 内容
接種適応年齢 2歳〜19歳未満(国内) [1]
接種量 0.2mL(左右の鼻腔に各0.1mL を1噴霧ずつ、合計2噴霧) [1]
回数 1シーズンにつき最大1回 [1]

回数について、ひとつ注意点があります。米国では、過去に2回以上インフルエンザワクチンを打ったことがない8歳までのお子さんに、同じシーズン内で4週間以上あけて2回打つことが推奨されています。しかし国内では、2歳〜19歳未満のすべての年齢で1シーズン1回までと定められています [1]。「注射は2回打つと聞いたけれど、鼻からも2回?」というご質問をよくいただきますが、国内では1回です。

なお、他のワクチンとの同時接種は、医師が必要と認めた場合に可能です。国内の添付文書には、フルミストと他の生ワクチンの接種間隔を制限する記載はありません [1]。

鼻からを選べない・注射をおすすめするケース

ここがこのページでいちばんお伝えしたいところです。日本小児科学会は、次の方には不活化ワクチン(注射)のみを推奨しています [1]。

  • 生後6か月〜2歳未満、19歳以上
  • 免疫不全の方、無脾症(脾臓の機能がない)の方
  • 妊娠している方
  • ミトコンドリア脳筋症の方
  • ゼラチンでアナフィラキシーを起こしたことがある方
  • 中枢神経系の解剖学的バリアーの破綻がある方(人工内耳を埋め込んでいる、内耳の先天性形成不全、持続的な脳脊髄液の交通など)

さらに、次の場合も注射をおすすめするとされています [1]。

  • 喘息のあるお子さん — 経鼻のワクチンであるため、重度の喘息や喘鳴の症状があるときは注意が必要です。米国では喘息や喘鳴の既往がある2〜4歳児への接種を推奨していません [1]
  • 授乳中のお母さん周囲に免疫不全の方がいるご家庭 — 次の項目でご説明します

「鼻からにしたい」とお考えでも、ご家族の状況によっては注射をおすすめすることがあります。受診のときに、ご家族に治療中の方がいるかどうかを教えてください。

接種後1〜2週間、気をつけていただきたいこと

フルミストは生きたウイルスを使うため、接種を受けたお子さんは鼻やのどの分泌物の中にワクチンウイルスを最長3〜4週間排出する可能性があります [1]。実際に、接種した人から接種していない人へワクチン由来ウイルスが伝わった報告があります(重篤な病気との関連は報告されていません) [1]。

国内の添付文書には、こう書かれています。

ワクチン接種後 1〜2 週間は、重度の免疫不全者との密接な関係を可能な限り避けるなど、必要な措置を講じることを被接種者又はその保護者に説明すること [1]

ご家族に抗がん剤治療中の方や移植後の方などがいらっしゃる場合は、接種前に必ずお申し出ください。米国では、重度の免疫抑制状態にある方と同居している方はフルミストを接種すべきでないとされています [1]。

授乳中の方については、水平伝播の可能性があるため「授乳婦はフルミスト接種後1〜2週間は乳児との接触を可能な限り控えること」という記載があります [1]。

副反応について

国内で報告されている主な副反応です [1]。

  • 10%以上:鼻づまり・鼻水(59.2%)、咳、のどの痛み
  • 1〜10%未満:鼻咽頭炎、食欲低下、下痢、腹痛、発熱、activity の低下・疲れやすさ、筋肉痛、インフルエンザ様症状
  • 1%未満:発疹、鼻血、胃腸炎、中耳炎

鼻づまり・鼻水は約6割と高い頻度です。「打った翌日から鼻水が出た」というのはよくある反応で、多くは数日でおさまります。

なお、接種後にインフルエンザのような症状が出て検査をすると、ワクチン由来のウイルスが検出されてインフルエンザと診断される可能性があります [1]。心配な症状があるときは、「いつ、どのワクチンを打ったか」を必ずお伝えください。

抗インフルエンザ薬を飲んだ直後は避けます

フルミストと抗インフルエンザウイルス薬を一緒に使うと、ワクチンウイルスの増殖が抑えられて効果が弱まる可能性があります [1]。

米国では、オセルタミビル(タミフル)またはザナミビル(リレンザ)を過去48時間以内、ペラミビル(ラピアクタ)を過去5日以内、バロキサビル(ゾフルーザ)を過去17日以内に使った場合は接種を推奨していません [1]。

「先週インフルエンザにかかって薬を飲んだ」というお子さんは、いつ・どの薬を飲んだかをお伝えください

当院での取り扱いについて

キッズクリニックまるまるは2026年10月中旬〜下旬の開院を予定しています。フルミストの取り扱いの有無・費用・予約開始時期は、開院にあわせてこのサイトでご案内します。

インフルエンザワクチンは例年10月頃から接種が始まります。年によって供給の状況が変わるため、現時点で「必ずご用意できます」とはお伝えできません。決まり次第、予防接種のご案内準備中 に掲載します。

よくあるご質問

Q. 注射がこわがりです。鼻からなら痛くないのですか?

痛みはありません。学会の文書にも「小児にとって、ワクチンに伴う痛みは重大な懸念事項であり、経鼻接種による痛みの軽減には重要な意義があります」と書かれています [1]。ただし、鼻に噴霧されること自体を嫌がるお子さんもいます。冷たさや、鼻の奥に入る感覚が苦手な場合があります。

Q. 何歳から打てますか?

2歳から19歳未満です [1]。2歳未満は打てません。国外の試験で、2歳未満に接種した後に入院や喘鳴のリスクが増えたという報告があるためです [1]。1歳のお子さんは注射(不活化ワクチン)になります。

Q. うちの子は喘息があります。鼻からを選べますか?

日本小児科学会は、喘息のあるお子さんには不活化ワクチン(注射)を推奨しています [1]。国内の添付文書でも「重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者」は接種要注意者に分類されています [1]。喘息の状態はお子さんごとに違いますので、診察でご相談ください。

Q. 卵アレルギーがありますが打てますか?

国内の添付文書では「鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある者」は接種要注意者(接種の判断に注意を要する方)に分類されています [1]。一方、米国では「卵アレルギーのみの場合は、重症度に関係なく、特別な安全対策は必要ない」とされています [1]。判断が分かれる部分ですので、これまでの症状の程度を診察でお聞かせください。

なお、フルミストは安定剤として精製ゼラチンを含みます。ゼラチンでアナフィラキシーを起こしたことがある場合、学会は注射のみを推奨しています [1]。ゼリーやグミで強いアレルギー症状が出たことがある方は、必ずお申し出ください。

Q. 家族に妊婦がいます。子どもに打っても大丈夫ですか?

妊娠している方ご本人はフルミストを接種できません(接種不適当者) [1]。ご家族への接種については、添付文書が接種後1〜2週間に配慮を求めているのは「重度の免疫不全者との密接な関係」です [1]。妊婦の同居のみで一律に禁止という記載はありませんが、ご家庭の状況によって考え方が変わりますので、受診時にお申し出ください

Q. 1回打てばそのシーズンは大丈夫ですか?

国内では1シーズン1回までと定められています [1]。ただし「打てば必ずかからない」ワクチンではありません。国内試験での有効率は全株に対して28.8%でした [1]。手洗いや、具合の悪いときに無理をしないことと合わせてお考えください。

予防接種のご相談

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。インフルエンザワクチンの選び方やスケジュールについては、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方 〜医療機関の皆様へ〜(2024年9月2日). https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240909_keibi_i_vaccine.pdf (閲覧: 2026-08-21)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 11 日

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