小児陰嚢水腫・精索水腫
赤ちゃんの陰嚢(いんのう:精巣が入っている袋)や足の付け根がふっくらと柔らかく腫れているのに気づくと、心配になりますよね。多くの場合は 陰嚢水腫(いんのうすいしゅ) といって、陰嚢の中に水がたまっている状態で、痛みもなく、自然に小さくなっていくことが少なくありません。
💡 この記事の要点
- 痛みのない水のたまりで、1〜2歳ごろまでに自然に小さくなることが多い状態です
- お風呂やおむつ替えは普段どおりで大丈夫で、ご家庭で押したり絞ったりする必要はありません
- 強く泣き続ける、嘔吐する、急に硬く大きくなったときは受診をご検討ください
どんな病気か
陰嚢水腫は、赤ちゃんのうちに本来閉じるはずの お腹の中と陰嚢をつなぐ細い通り道(医学的には腹膜鞘状突起) が残っていて、そこからしみ出たお腹の中の水分が陰嚢にたまった状態です。男の子に多くみられ、女の子で同じ仕組みにより足の付け根や大陰唇に水がたまった場合は ヌック水腫 と呼ばれます。
新生児の男の子では比較的よくみられ、早産や低出生体重で生まれたお子さまでより多い傾向があります。多くの場合、1-2 歳ごろまでに自然に小さくなる ことが知られています。
水のたまり方には次のタイプがあります。
- 腹腔と通じているタイプ(交通性水腫): お腹と通り道が残っているため、立っている時間が長い夜には大きく、寝ている朝には小さく見えるなど、体勢や時間帯で大きさが変わります。泣いたり排便でいきんだりした後に「急に大きくなった」と感じることもありますが、これはこのタイプの特徴です。
- 通り道は閉じて水だけ残っているタイプ(非交通性水腫): 大きさが日中ほとんど変わらず、安定しています。
主な症状と気づきのポイント
おうちで気づくのは、たいてい 「陰嚢がふっくら大きい/左右で大きさが違う」 という見た目の変化です。受診を急ぐ状態かどうかを保護者の方が判断しやすいよう、典型的な様子とそうでない様子を分けて整理します。
あわてなくてよいことが多い様子
- 陰嚢や大陰唇が 柔らかく腫れている
- 触っても 痛がる様子がなく、機嫌もふだん通り
- ミルク・母乳の飲みや、おしっこ・うんちの様子が普段と変わらない
- 暗いところで光を当てると、中身が水なので ぼんやり透けて見える(診察での所見です。ご家庭で必ず確認していただく必要はありません)
様子が違う、急ぎめに相談したい様子
- これまでと違って 強く泣き続ける、痛がる
- 嘔吐をくり返す、ぐったりしている
- 陰嚢や足の付け根が 急に硬く大きくなった、色が変わってきた
これらが当てはまる場合は、後述の「症状についてのご相談」から 受診をご検討ください。
紛らわしい病気(鑑別)
似た見た目で、対応の急ぎ度が違う病気があります。区別は医師の診察で行いますので、ご家庭では「だいたいの違い」を知っていただくだけで十分です。
| 見え方・触れ方 | 陰嚢水腫 | 鼠径(そけい)ヘルニア |
|---|---|---|
| 光を当てたとき | 中身が水なので透けやすい | 腸などが入っているので透けにくい |
| 中身 | 水 | 腸や卵巣など |
| お腹の方に戻るか | 自然と落ち着いていることが多い | 医師が触れて戻すことがある |
| 急に強く痛がるリスク | 通常はない | はまり込んで戻らなくなることがある |
| 手術の急ぎ度 | 急がないことが多い | 戻らなくなった時は急ぐ |
主に区別する病気は次のとおりです。
- 鼠径(そけい)ヘルニア: 同じ通り道から、水ではなく腸などが出てきてしまう状態。陰嚢水腫と原因は似ていますが、急に戻らなくなる(嵌頓:かんとん)と緊急になります。
- 精巣がねじれる病気(精巣捻転): 強い痛みを伴い、急ぎの対応が必要です。
- 精巣のまわりの炎症(精巣上体炎): 痛みや赤み、発熱を伴うことがあります。
- 精巣のしこり(精巣腫瘍): まれですが、思春期以降に注意される病気です。
当院での診断と治療
キッズクリニックまるまるでは、視診・触診と、暗い部屋で光を当てる 透光性のチェック を行い、陰嚢水腫かどうかを診断します。鼠径ヘルニアとの区別が難しいときには、当院で 陰嚢の超音波(エコー)検査 を行い、中身が水か腸かを確認します。より詳しい検査や手術が必要なときは、小児外科にご紹介します。
治療の基本的な考え方は次の通りです。
- 概ね 1-2 歳ごろまでは自然に小さくなるのを待つ のが一般的です。痛みやはまり込み(嵌頓)の様子がなければ、定期的に当院で大きさや左右差を確認しながら経過をみていきます。
- 大きさが残っている/鼠径ヘルニアの合併が疑われる/日常生活で気になる大きさが続く といった場合には、適切なタイミングで小児外科にご紹介します。
- 手術(高位結紮術と呼ばれる方法など)が必要になった場合は、当院では実施せず、連携する小児外科をご紹介します。 術式や入院日数(外来での日帰りが可能か、1 泊するかなど)は、お子さまの年齢・全身の状態・施設の方針によって決まります。
女のお子さまの ヌック水腫 は、男のお子さまの陰嚢水腫より頻度は低いものの、同じ仕組みで起こります。鼠径ヘルニアの合併がやや多いとされるため、女のお子さまの場合は早めに当院または小児外科にご相談ください。
家庭でできるケア
陰嚢水腫があっても、日常生活で特別に控えていただくことはほとんどありません。 よくいただくご質問をもとに、ふだんの過ごし方の目安をまとめます。
- お風呂・洗い方: 普段どおりやさしく洗ってあげて大丈夫です。中身は水で皮膚に傷はないので、石鹸がしみることもありません。強くつまんだり、絞ったりは避けてください。
- おむつ替え・抱っこ・チャイルドシート: 通常のおむつ・抱っこ・ベルトで悪化することは基本的にありません。長時間ぎゅっと締め付けるような圧迫だけ避ければ、いつも通りで構いません。
- 大きさが日中で変わる: 立っている時間が長くなる夕方〜夜に少し大きく見えたり、泣いた・いきんだ後に一時的に大きく感じることがあります。これは病気の特徴によるもので、すぐに悪化しているわけではありません。気になる変化が続くときは、ご相談ください。
- 観察のしかた: 朝・夕の見た目、左右差、機嫌、ミルク/食事の様子を、写真メモなどでときどき残していただくと、診察時にとても役立ちます。
- ご家族への説明: ご兄弟やおじいちゃん・おばあちゃんに伝える際は、「中身は水で、痛くないし、多くは自然に小さくなっていくよ」と一言添えていただくと安心が広がります。
- 予防接種・乳幼児健診: 当日の体調がふだん通りであれば、通常どおり受けていただいて大丈夫です。
「自分で押し戻してあげた方がいい?」と心配される方もいらっしゃいますが、ご家庭で押したり絞ったりは必要ありません。 自然に小さくなるのを待つのが基本です。
よくあるご質問
Q. お風呂で陰嚢をしっかり洗っても大丈夫ですか?石鹸はしみませんか?
A. 中身は水で皮膚に傷はないので、いつもどおり泡でやさしく洗ってあげて大丈夫です。強くつまんだり絞ったりだけ避けてあげてください。
Q. おむつ替えや抱っこ、チャイルドシートのベルトで圧迫されるのは悪いですか?
A. 通常のおむつ・抱っこ・ベルトで悪くなることは基本的にありません。長くぎゅっと締め付けるような圧迫だけ避けてあげれば、いつも通りで構いません。
Q. 朝と夜で大きさが違うのですが、これは普通ですか?
A. 立っている時間が長い夜に少し大きく見える、泣いた後に一時的に大きく感じる、ということはこのタイプの特徴としてよくあります。ふだんの幅を超えて急に大きくなったり、硬くなったりするときはご相談ください。
Q. 兄弟や祖父母にどう説明したらいいですか?
A. 「中身は水だから痛くないし、多くは自然に小さくなっていくよ」と伝えていただくのがいちばんやさしい説明です。
Q. 女の子なのに同じような腫れがあります。これも同じ病気ですか?
A. 同じ仕組みで足の付け根や大陰唇に水がたまる ヌック水腫 という状態のことがあります。女の子の場合は念のため、早めにご相談ください。
Q. 1 歳を過ぎてもまだ残っている場合、必ず手術になりますか?
A. 残っていても痛みや急な大きさの変化がなければ、すぐに手術ということではありません。経過をみたうえで、必要な場合のみ小児外科と連携してご相談します。
症状についてのご相談
お一人で抱え込まなくて大丈夫です。見た目が気になっても痛がっていなければ、まずは落ち着いてご相談いただければ大丈夫なことがほとんどです。気になる変化があれば、受診をご検討ください。お子さまの状態を直接お伺いしたうえで、受診のタイミングを個別にご案内します。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。小児陰嚢水腫・精索水腫をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 徳洲会グループ. 小児科の病気:鼠径ヘルニア、陰嚢水腫・ヌック水腫、臍ヘルニア. https://www.tokushukai.or.jp/treatment/pediatrics/sokeiherunia.php (accessed: 2026-06-02)
- 日本小児外科学会. 鼠径ヘルニア(陰嚢水腫の鑑別含む). http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/sokei-helnia (accessed: 2026-06-02)
- MSD マニュアル家庭版. 陰嚢の腫れ(陰嚢水腫を含む). https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/05-%E8%85%8E%E8%87%93%E3%81%A8%E5%B0%BF%E8%B7%AF%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%85%8E%E8%87%93%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%B0%BF%E8%B7%AF%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E9%99%B0%E5%9A%A2%E3%81%AE%E8%85%AB%E3%82%8C (accessed: 2026-09-02)
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第21章 腎泌尿器・生殖器疾患「精巣、陰嚢の異常」(印刷 p.615-616 付近)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(腎泌尿器生殖器「性器の先天異常 陰嚢水腫」印刷 p.393)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 9 月 2 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。