子どもの便秘、一緒に治していきましょう
子どもの便秘は、外来でとてもよく出会うご相談です。「ただ便が出にくいだけ」と思われがちですが、長引くと痛い・漏れる・食欲が落ちる、と日常の困りごとに直結します。当院では、お薬で溜まった便を出すところから、再発しにくい生活づくりまで、家族のペースに合わせて長くサポートします。「何日もうんちが出ない」「うちの子、便秘かも?」と思った時点でご相談いただいて大丈夫です。
💡 この記事の要点
- 便を我慢して溜め込む悪循環に入りやすい状態で、便もれは叱るべき症状ではありません
- 食後にトイレへ5分座る習慣づくりと、水分・食物繊維を意識した食事が土台になります
- 痛みが強い・繰り返し血が混じる・嘔吐がある・お腹が張るときは受診をご検討ください
どんな病気か
「慢性便秘」とは、排便の回数が少ない・便が硬い・出すのに苦労する、といった状態が続くことを言います。子どもの場合、便が硬くて痛い経験をすると排便を我慢するようになり、便がさらに溜まって大きく硬くなる、という悪循環に入りやすいのが特徴です。
赤ちゃんから学童期まで、どの年齢でも起こります。とくに「離乳食が始まったころ」「トイレトレーニング中」「入園・入学のころ」に増えやすいことが知られています。多くは体の構造に問題のない『機能性便秘』ですが、まれに体の病気が隠れていることもあるため、長引く便秘は一度ご相談いただくのが安心です。
排便の回数は年齢で変わります。新生児期は1日に2〜7回とこまめですが、生後1〜2年ごろには「毎日〜週3回くらい」に落ち着いてくるのがふつうです。回数がそれより少ない、または出すのに苦労している状態が続くときが便秘の目安です。数日に1回でも、やわらかい便を痛みなく出せていれば心配は少なく、「回数」だけでなく「かたさ」と「出すときのつらさ」をあわせて見てあげてください。
主な症状と気づきのポイント
「うちの子の便秘って、病院に行くレベル?」と迷われる保護者の方は多いです。次のようなサインがあれば、家庭ケアだけで様子を見るより、一度ご相談いただく方がスムーズに治療に入れます。
- 排便が週3回より少ない日が続いている
- 便が硬く、出すときに痛がる・泣く
- お尻が切れて便に少し血がつく
- 便を我慢する姿勢(足を交差させる、隠れる など)
- 知らない間にパンツが汚れる『便もれ』(便失禁)がある
- お腹が張る・食欲が落ちる
- トイレを詰まらせるほど大きな便が出ることがある
このうち、『便もれ』は本人がわがままで漏らしているのではなく、お尻の出口の近くに大きな便が溜まっているサインであることが多いです。叱らずに、まず受診をご検討ください。
国際的な便秘の見極めの目安(Rome IV 基準)では、4歳以上のお子さまで上記のようなサインのうち複数が1か月以上続く場合に、慢性便秘症として治療の対象になります。4歳未満のお子さまには別の基準があり、月齢・年齢で判断は変わるため、当てはまるかは無理にご自身で決めず、外来でご一緒に確認します。
紛らわしい病気(鑑別)
便秘に見えても、別の体の病気が隠れていることがあります。当院では問診と診察で、次のような疾患を慎重に見分けます。
- ヒルシュスプルング病:生まれつき腸の動きを司る神経の細胞が一部欠けている病気で、生まれてすぐの時期からの便秘や、最初の便(胎便)が出るのが遅かった、お腹が強く張る、といったエピソードがあるときに疑います。
- 甲状腺機能低下症:便秘に加え、体重が増えにくい・元気がない・成長がゆっくり、などの全身症状を伴うことがあります。
- 食物アレルギー(特に牛乳):乳児期に、便秘や血便・湿疹と一緒に出ることがあります。
- 薬の影響:服用中のお薬(抗ヒスタミン薬など)で便秘が出る場合があります。
- 発達特性に伴う排便の困りごと:感覚の特性やトイレへの苦手意識から、便秘が長引くケースもあります。
新生児期からの便秘・成長がゆっくり・お腹が極端に張る、といったエピソードがある場合は、必ず外来でお知らせください。
当院での診断と治療
診察では、お腹の触診(便塊が触れるか)と、必要に応じて直腸の診察を行います。器質的な病気が疑われるときには小児外科・小児消化器の専門医療機関と連携します。
治療は、現行のガイドライン(小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025 年版)に沿って、2段階で進めます。
1. まず、溜まった便を出す(便塊除去)
便が直腸に大きく溜まっている場合、生活指導や飲み薬だけでは進みません。新しい便秘の飲み薬(PEG/モビコール®) を多めに使うか、グリセリン浣腸で、まず溜まった便を出します。浣腸は怖そうに感じられますが、適切に使えばクセになるものではなく、悪循環を断つ第一歩として大切な治療です。
2. 再発させない『維持療法』
溜まった便を出した後、すぐ薬をやめると高い確率で元に戻ってしまいます。便がやわらかい状態を保てる量のお薬を、数か月から年単位で続けていきます。
当院でよく使うお薬は次のとおりです。お子さまの年齢・体格・生活に合わせて選びます。
- モビコール®(PEG/ポリエチレングリコール、2歳以上で保険適用):水に溶かして飲む薬で、腸に水分を呼び込み便をやわらかくします。現行ガイドラインの第一選択で、長期に続けても安全性が高いお薬です。
- 酸化マグネシウム:古くから使われている、便をやわらかくする薬。乳児にも使えます。腎臓の働きが弱いお子さまでは量を調整するため、事前にお知らせください。
- マルツエキス(麦芽糖):乳児にも使いやすい、甘くて飲ませやすいシロップです。
- ラキソベロン®(ピコスルファート):腸の動きを助けるお薬。出ない日だけ使うなど、補助的に使います。
加えて、排便日誌(うんち日記)で出た日とかたさを一緒に記録し、お薬の量を細かく調整していきます。自己判断で急にやめると再発しやすいため、減量はかならず外来で一緒に計画します。
家庭でできるケア
お薬での治療と並行して、生活の中での工夫が再発予防に役立ちます。「全部やらなきゃ」と気負わず、できそうなものから1つ取り入れてみてください。
排便のリズムを作る
- 食事のあとは腸が動きやすい時間帯です。朝食やお昼の後、トイレに5分座る習慣を作ると、便意が育ちやすくなります(胃結腸反射という、食べると腸が動く生理反応を活用します)。
- トイレでは 足台を使い、しゃがむような姿勢になると、いきみやすくなります。
- トイレトレーニング中のお子さまは、出なくても怒らない・急かさないことが大切です。
水分と食事
- 水分は、起きた後・食事中・遊びの合間にこまめに。乳児期は母乳・ミルク以外を無理に与える必要はありませんので、量の目安は外来でご相談ください。
- 食物繊維はさつまいも・りんご・バナナ・海藻・全粒穀物などに多く含まれます。離乳食期にはプルーン・つぶしたさつまいも・りんごのすりおろしなどが取り入れやすいです。
便もれを叱らない
- 知らない間にパンツが汚れてしまう『便もれ』は、本人のだらしなさではなく、病気の症状です。叱ると排便そのものを我慢するようになり、悪循環につながります。「気づいたら教えてね」とフラットに伝える方がうまくいきます。
園・学校で我慢してしまうとき
- 「外のトイレでうんちをするのが恥ずかしい」と感じるお子さまは多いです。家での朝うんちタイムを作る、先生に事情を一言伝える、など家庭側からのサポートが効きます。先生への伝え方も外来でご相談ください。
続ける時間軸
- 食事・水分・トイレ習慣の効果は、すぐには見えません。2〜4週間は続けて様子を見るつもりで取り組み、それでも変化が乏しいときは無理せずご相談ください。
よくあるご質問
Q. 綿棒浣腸や、市販のイチジク浣腸を家で使ってもいいですか?
A. 乳児の綿棒浣腸は、出ないときに短期的に使う分には問題ありません。市販のイチジク浣腸も、たまに使うのは差し支えありませんが、繰り返し家で使い続けても根本治療にはならず、便を溜め込む癖を強めることがあります。週に何度も必要な状態は治療対象ですので、その時点で外来へ。どのくらいの頻度なら続けてよいかは、お子さまの状態で変わります。診察のときに一緒に決めましょう。
Q. うんちの時にすごく痛がって泣きます。今夜できることは?
A. お腹を温める・水分を多めにとる・トイレで足台を使うなど、出しやすくする工夫を試してみてください。無理に強くいきませる必要はありません。痛みが強い・繰り返し血が混じる・嘔吐がある・お腹がパンパンに張る、といったときは 受診をご検討ください。
Q. 硬いコロコロ便で、便に血がつきました。大丈夫でしょうか?
A. 多くは肛門が少し切れたことによるもので、便がやわらかくなれば数日で落ち着きます。ただし、血の量が多い・黒っぽい便・繰り返し血が混じるときは、別の原因の可能性もあるためご相談ください。
Q. モビコール®や酸化マグネシウムは、いつまで続けますか?
A. 一般に 数か月〜数年続けます。改善してきたからとすぐにやめると、半数以上で再発するというデータがあります。便のかたさと回数を見ながら、外来で一緒に少しずつ減らしていきます。下痢・腹痛が強いときは医師にお知らせください。
Q. 食事だけで便秘は治せますか?
A. 食事と生活習慣は土台としてとても大切ですが、便がすでに溜まって硬くなっている状態を、食事だけで戻すのは難しいことが多いです。お薬で一度リセットしてから、再発予防として食事・生活で支えていく、という順番が現実的です。
Q. きょうだいも便秘がち、私(母)も便秘です。一緒に相談できますか?
A. 便秘は生活習慣の影響を強く受けるため、ご家族で重なることはよくあります。お子さまの診察時にあわせてご相談ください。
症状についてのご相談
「この症状で受診すべき?」「今は様子を見ていい?」という判断は、お子さまごとに違います。迷う段階で気軽にご相談ください。受診の際に、優先度や通院の進め方をご案内します。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。子どもの便秘をはじめ、お子さまの気になる症状は、LINE からご予約ください。
参考文献
- 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会. 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025 年版. 診断と治療社, 2025. https://www.shindan.co.jp/np/isbn/9784787827173/ (アクセス:2026-09-12)
- 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会. 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2013. https://www.jspghan.org/constipation/files/guideline.pdf (アクセス:2026-09-12)
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院, 2013.(第18章 消化器疾患「便秘」「Hirschsprung 病」)
- Minds ガイドラインライブラリ. 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00226/ (アクセス:2026-09-12)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 7 月 8 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。