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小児急性虫垂炎(俗にいう「盲腸」)

お子さまのお腹の痛みのなかには、虫垂(盲腸の先にある細い管)に炎症が起こる「虫垂炎」と呼ばれるものがあります。多くは年長のお子さまに見られますが、小さなお子さまでも起こりえます。早い段階で気づければ、落ち着いて対応できる病気です。「もしかして?」と気になったとき、何を見ておけばよいかから順に整理します。

💡 この記事の要点

  • 虫垂に炎症が起こる病気で、早めに気づければ落ち着いて対応できます
  • 痛みの移動や歩き方の変化を時系列でメモし、鎮痛薬の自己判断での使用は控えます
  • 痛みが急にラクになっても油断せず受診を(迷うときは小児救急電話相談 #8000)

どんな病気か

「盲腸」と呼ばれるこの病気の正式名称は「虫垂炎」です。お腹の右下のほうにある、虫垂という細い管に炎症が起こる病気です。虫垂のなかが詰まることで炎症が広がり、進行すると虫垂に穴があくこと(穿孔)や、お腹の中の膜にまで炎症が広がること(腹膜炎)につながる場合があります。

  • 小学校高学年〜中学生のお子さま に比較的多く見られます。
  • 5 歳以下の小さなお子さま でも起こりえます。小さなお子さまほど症状がはっきり出にくく、見極めが難しいことが知られています。
  • 早めに気づいて医療機関で評価できれば、落ち着いて治療につなげやすい病気です。

虫垂炎は 小児外科で扱う病気 の一つで、診断がついた場合は専門医のいる病院での対応になります。当院では「虫垂炎かもしれない」と感じたお子さまの 初期評価と、必要に応じた小児外科への紹介 を担当します。


主な症状と気づきのポイント

「うちの子のこの腹痛、虫垂炎かもしれない? お腹の風邪と何が違うの?」

よくいただくご質問です。虫垂炎には、保護者の方が気づきやすい特徴的な経過があります。

年長のお子さまに多い、典型的な経過

  1. はじめは みぞおち・おへその周り がなんとなく痛い
  2. 数時間〜1 日のあいだに、痛みが 右下のお腹 へ移動してくる
  3. 食欲がなくなる・気持ち悪さ・吐き気が出る
  4. 微熱が出はじめ、進行とともに発熱がはっきりしてくる
  5. 歩いたり、ジャンプしたりすると、お腹にひびくような痛みが出る

「最初はおへその周りだったのに、だんだん右下が痛くなってきた」という変化は、虫垂炎で典型的な経過です。お子さまから聞き取れたら、診察のときに教えてください。

小さなお子さま(特に幼児)の場合

幼児のお子さまは「どこがどう痛い」と言葉にしづらく、症状もはっきりしないことが多いです。次のようなサインがヒントになります。

  • いつもより 機嫌が悪い・元気がない
  • 食欲がない、食べたものをくり返し吐く
  • 歩きたがらない、抱っこをせがむ、かかとを地面につけるのを嫌がる
  • 下痢を伴うこともあり、お腹の風邪(急性胃腸炎)と見分けがつきにくい

小さなお子さまは進行が早いことが知られています。「いつもと様子が違う」と感じたら、自己判断せずご相談ください。

痛みが急にラクになったときの注意

虫垂に穴があく前後で、痛みが 一時的にやわらいだように見える ことがあります。「治ったみたい」と感じても、その後にお腹全体に炎症が広がって急に悪化することがあるため、油断は禁物です。


紛らわしい病気(鑑別)

お腹の痛みは原因が多く、虫垂炎と見分けにくい病気がいくつかあります。診察ではこれらを丁寧に区別していきます。

紛らわしい病気 虫垂炎との見え方の違い
急性胃腸炎(お腹の風邪) 下痢・嘔吐が中心で、痛みの場所が定まらないことが多い。虫垂炎との見分けが難しい場面もあります。
腸間膜リンパ節炎 風邪やウイルス感染のあとに起こる腹痛で、自然によくなることが多い。
腸重積 主に乳幼児に見られ、強い腹痛が波のようにくり返し、いちごジャムのような便(血便)が出ることがあります。
便秘による腹痛 排便がしばらくない経過があることが多い。浣腸などで排便してもお腹の痛みが続く・悪化する場合は、虫垂炎を含めて再評価が必要です。
尿路感染症 排尿時の痛みや頻尿を伴うことがあります。女の子で見落とされやすい病気です。

このほかにも、女の子であれば卵巣の病気、男の子であれば精巣の病気など、年齢や性別によって考えるべき病気が変わります。診察では、症状の経過とお腹の所見をていねいに確認します。


当院での診断と治療

当院は 初期の評価から専門医療機関への紹介まで を担当します。当院での手術は行いません。

当院で行うこと

  • お話のうかがい(いつ・どこから・どう痛みが移ってきたか、食欲・吐き気・発熱・歩き方の変化など)
  • 診察(お腹を触ったときの反応や、痛みのある場所の確認)
  • 必要に応じた 血液検査・腹部の超音波検査
  • 小児急性虫垂炎を評価するためのスコア(医師が点数化して判断する評価表)を用いた総合的な判断

専門医療機関での対応

虫垂炎の診断がついた場合、または強く疑われる場合は、小児外科のある医療機関へ速やかにご紹介・搬送 します。専門医療機関では以下のような対応が行われます。

  • 腹腔鏡下の手術(お腹に小さな穴を数か所あけて、カメラで虫垂を取り除く方法)が第一選択
  • 状態によっては開腹手術
  • 炎症が比較的軽く一定の条件を満たす場合に限り、抗菌薬による保存的な治療(手術をせずに様子をみる方法)が選択されることもあります。ただしこの治療の適応はお子さまの状態次第で、小児外科医による判断が必要です。

紹介の前に当院でお願いすること

  • 飲食を控える(手術が必要になる可能性に備えるため)
  • 状態によっては点滴で水分を補う準備
  • 受診前の自己判断での鎮痛薬は控えていただく(診察の参考になる情報が減ってしまうため。医療機関では必要に応じて痛みを和らげる治療を行います)

家庭でできるケア

虫垂炎は「家庭で治す」というよりも、「早めに気づいてご相談いただく」ことが何より大切な病気です。ご家庭ではお子さまの様子をていねいに見守りつつ、次のことを心がけてください。

観察のポイント

  • いつから・どこが・どんなふうに痛いか を時系列でメモしておく(受診時にとても役立ちます)
  • 痛みの場所が 移動したか(おへその周り → 右下、など)
  • 発熱の有無と推移、嘔吐の回数、食欲の変化
  • 歩き方・体の動かし方 に変化はないか(ジャンプを嫌がる、かかとをつくのを嫌がる、丸まって動かない、など)

控えていただきたいこと

  • 市販の鎮痛薬を自己判断で飲ませる こと(痛みの場所や強さが分からなくなり、診断が難しくなります)。すでに飲ませてしまった場合は、必ず診察時にお伝えください。
  • 受診の可能性がある場合は 飲食を控える(すでに飲食している場合も、最後に食べた時間を診察時にお伝えください)。
  • 「お腹の風邪だろう」と決めつけずに、状態が変わったら早めにご相談ください。

受診のときにご持参いただくもの

  • マイナ保険証(または資格確認書)・医療証
  • 母子手帳・お薬手帳
  • 念のため、着替え・エチケット袋(嘔吐に備えて)

夜間や休診時間にどう動けばよいか迷うときは、#8000(小児救急電話相談) や、お住まいの地域の救急外来も選択肢になります。

🚑 こんなときは迷わず救急受診を

次のようなときは、夜間・休日でも救急外来の受診をご検討ください(迷うときは小児救急電話相談 #8000)。

  • お腹全体が痛くなった、お腹を触られるのを強く嫌がる
  • 痛みが 急にラクになったあとで、また強くなった(穿孔のサインのことがあります)
  • ぐったりして反応が鈍い、顔色が悪い
  • 高い熱が出て、繰り返し吐く
  • お腹が板のように 硬く張っている

よくあるご質問

Q. おへその周りが痛いだけで、まだ右下には痛みが移っていません。様子を見ていていいですか?

A. 虫垂炎では、痛みが「おへその周り → 右下」へ移動するのが典型的な経過です。今の段階での判断は、痛みの強さ・続き方・発熱・吐き気・歩き方の変化など、お子さまの様子によって変わります。一緒に考えますので、受診をご検討ください。

Q. 鎮痛剤(カロナールなど)を飲ませてもいいですか?

A. 受診前に痛み止めを飲ませてしまうと、痛みの場所や強さが分からなくなり、診断が難しくなることがあります。原則として自己判断での服用は控えてください。すでに飲ませてしまった場合も、診察時に必ずお伝えいただければ大丈夫です。

Q. 下痢もあります。お腹の風邪(胃腸炎)でしょうか?

A. 虫垂炎でも下痢を伴うことがあり、特に小さなお子さまでは胃腸炎と見分けが難しい場合があります。痛みが右下のお腹へ移ってくる・歩くとお腹にひびく、といった様子がないかも合わせて見てください。自己判断せず、ご相談ください。

Q. 痛みが急にラクになりました。よくなったということでしょうか?

A. 必ずしも「治った」とは限りません。虫垂炎では一時的に痛みがやわらぐことがあり、その後にお腹全体に炎症が広がって急に悪化する場合があります。油断せず受診のご相談をお願いします。

Q. 子どもでも盲腸になりますか? 何歳からですか?

A. 「何歳から」という明確な下限はなく、まれですが乳幼児でも起こりえます。5 歳以下の小さなお子さまでも起こりえますが、小学校高学年〜中学生のお子さまに比較的多く見られます。

Q. 手術にならずに薬で治せると聞きました。本当ですか?

A. 一定の条件を満たす軽い虫垂炎では、抗菌薬による治療が選ばれる場合もあります。ただし適応は限られており、小児外科医による総合的な判断が必要です。


症状についてのご相談

判断に迷うとき、ひとりで抱え込まずにご相談ください。お子さまの状態によって最適な対応は変わるため、個別にご案内しています。

緊急性が高いと感じられたときは、#8000(小児救急電話相談) や救急外来もご利用ください。


自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。小児急性虫垂炎をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児救急医学会. エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017 第Ⅱ部 小児急性虫垂炎診療ガイドライン(Minds ガイドラインライブラリ). https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00575/ (accessed: 2026-06-10)
  2. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第18章 消化器疾患 F.小腸・結腸疾患「虫垂炎」(印刷 p.492-493)
  3. 東京医科大学 消化器・小児外科学分野. 小児外科の治療. https://team.tokyo-med.ac.jp/syoukakigeka/organ/prediatricsurgery.html (accessed: 2026-06-02)
  4. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(消化器 印刷 p.193-195)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 14 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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