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急性胃腸炎(感染性胃腸炎)

お子さまが急に嘔吐したり下痢をしたりすると、保護者の方はとても驚かれると思います。子どもの急性胃腸炎は冬から春に多い、ありふれた病気で、その多くはウイルスによるもの(全体の約 9 割)です。ほとんどは数日から 1 週間ほどで自然に良くなり、おうちでのケアの中心は「水分をどれだけ上手に取れるか」です。このページでは、症状の見分け方とご家庭での対応のコツをまとめました。

💡 この記事の要点

  • 多くはウイルス性で、数日から1週間ほどで自然に良くなります
  • 経口補水液を少量ずつこまめに、吐き気が落ち着いたら食事を早めに再開します
  • おしっこが少ない・ぐったりしているなど脱水のサインがあればご相談ください

どんな病気か

「急性胃腸炎」は、嘔吐や下痢、腹痛、軽い発熱が急に出てくる病気の総称で、「感染性胃腸炎」「急性下痢症」とも呼ばれます。お子さまでは 5 歳以下に多く、冬はノロウイルスやロタウイルス、夏はカンピロバクターなどの細菌が原因として増えます。

原因のほとんどはウイルス感染で、ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス(40, 41 型)・サポウイルスなどが知られています。中でも ロタウイルスが最も多く、重症化しやすい とされ、次いでノロウイルスが多く見られます。一部に細菌性(カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌など)や、牛乳・果汁の取り過ぎによる下痢もあります。

ロタウイルスについては、2020 年 10 月から日本でも定期予防接種となり、重症化を減らす効果が期待できます。

主な症状と気づきのポイント

最初に出やすいのは「嘔吐」で、少し遅れて「下痢」が始まることが多いです。あわせて、腹痛、気持ち悪さ、軽い発熱、いつもより元気がない、といった様子が見られます。嘔吐は多くの場合、下痢が始まる頃には落ち着いてくる ことが多いのですが、下痢は 1 週間ほど続くこともあります。

おうちで気をつけて見ていただきたいのは、水分がどのくらい取れているか/おしっこがいつ出たかです。子どもの体は大人より脱水になりやすいので、次のような様子があれば「水分が追いついていないサイン」と考えてください。

  • 口の中や舌が乾いている
  • 涙が少ない・出にくい
  • いつもよりぐずりやすい、またはぼんやり眠りがち
  • おしっこの回数や量が、いつもよりかなり少ない(おむつが半日ほとんど濡れていない 等)
  • 肌をつまんで離した時に戻りが遅い
  • 爪を押して離した時に、ピンク色に戻るまでに時間がかかる(毛細血管再充満時間)

「うちの子はどのくらい大丈夫そう?」という判断は、その時のお子さまの様子を直接お聞きするのが一番確実です。少しでも気になるサインがあれば、ためらわず受診をご検討ください。

うんち(便)の色と、下痢だけのとき

「胃腸炎 白い下痢」「赤ちゃん 下痢だけ」——実際によく調べられている 2 つについて、順にお答えします。

うんちが白っぽい・クリーム色のとき

胃腸炎の下痢で便の色が薄くなること自体は、めずらしくありません。とくに ロタウイルスによる胃腸炎では、白色〜灰白色の水様便が出るのが特徴とされています。発熱と嘔吐で始まり、その 24〜48 時間後に大量の水様下痢になる、という順番をたどることが多い病気です。

ここは大事なので、はっきり書きます。 便が白っぽいときに考えることは 2 つあり、対応がまったく違います。

胃腸炎(ロタなど)の白っぽい便 注意が必要な白っぽい便
下痢 水様の下痢と一緒に出る 下痢ではないのに便の色が薄い
続き方 下痢が治まると色も戻る 薄い色が続く
ほかの症状 発熱・嘔吐が先行 白目や肌が黄色い(黄疸)・おしっこが濃い

後者は、赤ちゃんの胆汁が腸に流れていないサインのことがあります(胆道閉鎖症など)。とくに 1 か月健診の頃に症状がそろってくることが多く、手術は生後 60 日以内(できれば 30 日以内)に行えるかどうかが経過を大きく左右します。

⚠️ 下痢をしていないのに便の色が薄い日が続く/白目や肌が黄色い/おしっこが濃い。 この 3 つが重なるときは、胃腸炎とは別の可能性を考えます。様子を見ずに受診してください。

なお、便が真っ白ではなく黄色っぽかったり、日によって色が変わったりすることもあります。「白いかどうか」で自己判断せず、迷ったら便のついたおむつをそのまま持ってきていただくのが一番確実です。 写真でも構いません。

赤ちゃんが下痢だけで、吐かない・熱もないとき

胃腸炎は嘔吐から始まって下痢が続くのが典型ですが、下痢だけで経過することもあります。元気で、母乳やミルクが飲めていて、おしっこがいつもどおり出ているなら、あわてる必要はありません。

見ていただきたいのは、便の回数よりも 水分が足りているかです。おむつが半日ほとんど濡れていない・涙が少ない・ぐったりしている・ぼんやり眠りがち、といったサインがあれば受診をご検討ください。

また、下痢が 2 週間以上続く、体重が増えない、血便が混じる、便の色が薄いまま戻らない、というときは、胃腸炎以外の原因も考えます。診察でご相談ください。

紛らわしい病気(鑑別)

「胃腸炎かな?」と思っていても、実は別の病気が隠れていることがあります。診察ではこういった可能性も一緒に考えていきます。

  • 急性虫垂炎:強い腹痛、特に右下のお腹を痛がる、発熱を伴うことがあります
  • 腸重積:乳幼児に多く、腸の一部がもう一方の腸に入り込んでしまう病気で、激しく泣いては落ち着く、を繰り返したり、いちごジャムのような血便が見られることがあります
  • 自家中毒(周期性嘔吐症候群):嘔吐を繰り返すタイプの体質で、特定の年齢の子に見られます
  • 糖尿病による重い脱水状態(糖尿病性ケトアシドーシス):のどの渇き、おしっこが多い、ぼんやりしている、といった様子を伴います
  • 食物アレルギー・アナフィラキシー:食べた直後の嘔吐、じんましん、呼吸苦などを伴います

お子さまの様子が「いつもの胃腸炎と何か違う」と感じられた場合は、その違和感そのものが大事な情報になります。診察時に遠慮なくお伝えください。

当院での診断と治療

診断は、症状・流行している病気の状況・脱水の程度を診察で評価して判断します。便でウイルスの種類を調べる検査(便迅速抗原検査)は、治療方針を変えるものではないため、通常は行いません。ノロウイルス検査は 3 歳未満などの保険適用条件があり、ロタウイルス検査は保険算定の対象外となる場合があります。

治療の柱は「口から少しずつ水分と塩分を補う方法(経口補水療法/ORT)」で、軽症〜中等症の脱水ではこの方法が点滴と同じか、それ以上に有効とされています。経口補水液(OS-1® など)を、ティースプーン 1 杯(約 5 mL)を 5 分おきにそっと、というペースで始めるのが基本です。

当院で対応できること

  • お子さまの脱水の程度を診察で評価
  • 経口補水液の飲ませ方のご相談(ご家庭での具体的な進め方)
  • 口からの水分が難しい中等症の脱水に対する点滴(輸液)
  • 整腸剤などの処方(ビオフェルミン・ラックビー などの生菌製剤)

高次医療機関へご紹介する場合

重い脱水で点滴が必要な場合や、腸重積・虫垂炎などの可能性が疑われる場合、血液中のミネラル(ナトリウム・カリウム等)のバランスが大きく崩れている場合は、入院や手術が可能な医療機関へ速やかにご紹介します。

抗菌薬(抗生物質)はウイルス性の胃腸炎には効果がないため使いません。細菌性で重い症状(血便を伴う、全身状態が悪い 等)の場合のみ検討します。下痢止めも、お子さまでは病原体の排出が遅れる可能性があるため、原則として使いません。

家庭でできるケア

おうちでできることの中心は、水分補給・食事・感染対策の 3 つです。

水分の取らせ方

  • 経口補水液(OS-1 など)をティースプーン 1 杯(約 5 mL)ずつ、5 分おきを目安に少しずつ
  • 吐いた直後は無理に飲ませず、お子さまが落ち着いてからまた少量から再開します
  • 麦茶やお茶は塩分(電解質)が含まれず、スポーツドリンクは糖分が多く吸収のバランスが合わないため、第一選択にはなりません
  • どうしても経口補水液を嫌がる時は、冷やす・凍らせてシャーベット状にする・スプーンやシリンジで少量ずつ、といった工夫を試してみてください
  • ミルクは薄めずに通常通りで構いません(古い育児書では「薄めると良い」とされていることがありますが、現行の小児急性胃腸炎診療ガイドライン 2017 では希釈は推奨されていません)

食事の再開

  • 吐き気が落ち着いてきたら、早めに食事を再開して大丈夫です
  • 消化の良いもの(おかゆ・うどん・すりおろしりんご・バナナ など)から
  • 「BRAT 食(バナナ・ごはん・りんご・トースト)だけ」のような特定の食事制限は必要ありません
  • 脂っこいものや甘いジュースは、もう少し落ち着いてからにすると安心です

感染を広げないために

  • 嘔吐物・便の処理時は、マスクと手袋を着け、塩素系の消毒液(0.1% 程度に薄めたもの)で処理します
  • 手洗いは石鹸と流水で。アルコール消毒はノロウイルスには効きにくいため、流水での手洗いが基本です
  • タオルや食器の共用は避け、お風呂は最後に入るようにします

おうちで気にしておくこと

  • ロタウイルス胃腸炎の経過中に、まれに熱がないのにけいれんを起こすことがあります(無熱性けいれん)
  • 病原性大腸菌(O157 など)の感染後には、まれに「溶血性尿毒症症候群(HUS)」など重い合併症が起こることがあるため、血便が出た場合は経過を慎重に見ます
  • 夜間に何度か嘔吐するときは、誤って気道に入らないよう横向きで寝かせ、枕元にタオルや防水シートを置いておくと安心です

よくあるご質問

Q. OS-1 を嫌がって飲んでくれません。麦茶やりんごジュースで代用していいですか?

麦茶(塩分が含まれない)やスポーツドリンク(糖分が多すぎる)は、本来の意味での経口補水液の代わりにはなりません。とはいえ「まったく飲めない」よりは何か口にできた方が良い場面もあります。冷やす・凍らせる・スプーンやシリンジで少しずつ、といった工夫でまずは経口補水液を試し、それでもうまくいかない時はお気軽にご相談ください。

Q. おしっこが何時間出ていなければ受診したほうがいいですか?

普段より明らかに回数や量が少ない(おむつが半日ほとんど濡れていない 等)は、水分が追いついていないサインの一つです。実際にどのくらいで受診が必要かはお子さまの月齢・体格・飲めている量で変わりますので、迷われた時点で受診をご検討ください。診察でお子さまの状態を直接確認します。

Q. 保育園・幼稚園にはいつから行かせていいですか?登園許可証は必要ですか?

一般的には、嘔吐と下痢が落ち着き、食事がいつも通り取れて、機嫌や活気が戻ってきたら登園可能です。書類の運用は自治体や園によって異なりますので、必要書類がある場合は受診時にご相談ください。当院で対応可能な書類についてもその場でご案内いたします。

Q. きょうだいや家族にうつさないために、家でできることは?

嘔吐物・便の処理は、薄めた塩素系消毒液(0.1%、ペットボトル 500 mL に家庭用塩素系漂白剤 約 10 mL が目安)で。手洗いはアルコールよりも石鹸と流水を徹底し、タオル・食器・お風呂の共用を避けるのが基本です。詳しい手順は受診時にもご説明します。

Q. 食事はいつから、何を食べさせていいですか?

吐き気が落ち着いたら、早めに通常の食事に戻して構いません。最初はおかゆ・うどん・すりおろしりんご・バナナなど、消化の良いものから。ミルクは薄めず通常通りで大丈夫です。脂っこいものや甘いジュースは、もう少し落ち着いてからにすると安心です。

Q. 保護者である私にも症状が出てしまいました。授乳は続けて大丈夫ですか?

母乳育児は基本的に続けていただいて問題ありません。授乳前後の手洗い・マスクの着用で対応できます。ご家族で共倒れになる前に、遠慮なくご相談ください。

Q. うんちが白っぽい(クリーム色)です。ロタウイルスでしょうか?

水様の下痢と一緒に色が薄くなっているのであれば、ロタウイルスによる胃腸炎でよくみられる経過です。白色〜灰白色の水様便はロタの特徴とされています。下痢が治まるにつれて色も戻ってきます。

ただし、下痢ではないのに便の色が薄い日が続く白目や肌が黄色いおしっこが濃い、という場合は別の可能性を考えます。とくに赤ちゃんでは、胆汁が腸に流れていないサイン(胆道閉鎖症など)のことがあり、早く見つけることがとても大切です。様子を見ずに受診してください。判断に迷われたら、便のついたおむつをそのままお持ちいただくか、写真を撮っておいていただけると確実です。

Q. 赤ちゃんが下痢だけで、吐きません。熱もありません。受診したほうがいいですか?

胃腸炎は嘔吐から始まることが多いのですが、下痢だけで経過することもあります。元気があって、母乳やミルクが飲めていて、おしっこがいつもどおり出ているのであれば、あわてなくて大丈夫です。

受診をご検討いただきたいのは、おむつが半日ほとんど濡れていない・涙が少ない・ぐったりしている・ぼんやり眠りがち、といった水分が足りていないサインがあるときです。また、下痢が 2 週間以上続く、体重が増えない、血便が混じる、便の色が薄いまま戻らない、というときも、胃腸炎以外の原因を考えますのでご相談ください。

Q. 子どもの胃腸炎は、だいたい何日くらいで治りますか?

多くは数日から 1 週間ほどで自然によくなります。嘔吐は下痢が始まる頃には落ち着いてくることが多く、下痢のほうが 1 週間ほど残ることがあります。「吐かなくなったのに下痢が続く」のは、順番としては自然な経過です。

大切なのは日数よりも水分です。少量ずつこまめに経口補水液がとれていて、おしっこが出ているなら、経過を見ていて構いません。

症状についてのご相談

お子さまの様子を見て、判断に迷うのは当然のことです。「これくらいで受診して大丈夫かな」とためらわず、受診の際に状況をお聞かせください。お子さまの状態に合わせて個別にご案内します。


自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。急性胃腸炎をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児救急医学会. 小児急性胃腸炎診療ガイドライン 2017. https://tsudashonika.com/disease-cat/pediatric-acute-gastroenteritis-guideline/ (accessed: 2026-06-02)
  2. 日本小児感染症学会. 小児消化管感染症診療ガイドライン 2024. https://www.jspid.jp/guideline/ (accessed: 2026-06-02)
  3. 日本小児救急医学会. エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン 2017 第Ⅰ部 小児急性胃腸炎診療ガイドライン. Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00577/ (accessed: 2026-09-02)
  4. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第15章 感染症「ウイルス性胃腸炎(ロタウイルス/ノロウイルス)」(印刷 p.334-335)、第18章 消化器疾患「ウイルス性胃腸炎」(印刷 p.489-490)
  5. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(消化器 印刷 p.197)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 2 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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