消化器 更新日:公開日:

自家中毒(周期性嘔吐症)

お子さまが急に何度も吐いて、顔色も真っ青——驚かれた保護者の方は少なくありません。自家中毒(周期性嘔吐症)は、多くの場合 命に関わるものではなく、思春期前期までに自然に治っていく病気 です。発作と発作の間は元気に過ごせるのが特徴で、早めの糖分補給で軽くすませられることもあります。このページでは、ご家庭でできるケアと、医療機関でできることを順に整理します。

💡 この記事の要点

  • 多くは命に関わらず、発作と発作の間は元気に過ごせる、思春期前期までに自然に治る病気です
  • 前ぶれに気づいたら早めに糖分を、吐いた後は数十分あけてから少量ずつ水分と糖分を与えます
  • 強い腹痛・血便・尿量の急な変化など、他の病気が疑われる症状があれば受診をご検討ください

どんな病気か

自家中毒は呼び名がいくつもある病気で、医療機関では 「周期性嘔吐症」「アセトン血性嘔吐症」、また 「ケトン血性嘔吐症」「ケトン性嘔吐症」 と呼ばれることもあります。どれも同じ病気を指していますので、受け取った書類やお薬手帳の記載が違っていても心配はいりません。

⚠️ 名前がよく似ていますが、「ケトン性低血糖症」は別の病気です。自家中毒(アセトン血性嘔吐症)では低血糖を伴わないのが原則で、低血糖を起こす「ケトン性低血糖症」とは医学的に区別されます[5][6]。

風邪・疲れ・興奮・長時間の空腹などをきっかけに、体の中の糖(エネルギー源)が一時的に足りなくなり、代わりに脂肪が分解されて「ケトン体(アセトン)」と呼ばれる物質が血液中に増えます。このケトン体が脳の吐き気を起こす部分を刺激することで、急に何度も吐いてしまうのが、この病気の正体です。

  • 主に 2〜10 歳のお子さまに見られ、発症のピークは 5〜7 歳ごろ です
  • 特にやせ型のお子さま は、体にためておけるエネルギーの量がもともと少なく、起こりやすいことが知られています
  • 発作は数時間〜2 日ほど続き、数週間〜数ヶ月おきに繰り返すことがありますが、発作と発作の間はふだんどおり元気 に過ごせます
  • 思春期前期までに多くのお子さまは自然に起こさなくなり、長い目で見れば予後の良い病気です
  • 一部のお子さまは、将来 片頭痛 との関連が指摘されており、長く見守る視点があるとより安心です

主な症状と気づきのポイント

「この病気は重いの?命に関わるの?」——もっとも多いご心配ですが、多くは数日で落ち着き、後遺症を残さずに回復していきます。慌てず、まず流れを知っていただくのが第一歩です。

自家中毒は、3 つの時期 をたどることが多いとされています。前の時期にあるサインに早めに気づけると、本格的な嘔吐を軽くすませられることがあります。

1. 前ぶれの時期(数時間〜半日)

  • 何となく 元気がない、機嫌が悪い
  • 顔色が悪い(青白い、白っぽい)
  • 頭痛・お腹の痛みを訴える
  • 食欲がない

このサインに気づいたら、早めに糖分(あめ・砂糖入りジュース・はちみつ ※1 歳以上)を少しずつ あげることで、本格的な発作を防げることがあります。

2. 嘔吐の時期(数時間〜2 日ほど)

  • 急に 何度も繰り返し吐く
  • お腹が痛い、強いだるさ
  • ぐったりして動かない
  • 口から熟したリンゴのような甘酸っぱい匂い(ケトン体が増えるとあらわれる独特の口臭)

3. 回復の時期

  • 嘔吐が落ち着き、少しずつ水分・食事を受けつけられるようになる
  • 顔色が戻り、ふだんの様子に近づく

紛らわしい病気(鑑別)

「繰り返し吐く」症状は、他の病気でも見られます。自家中毒として様子を見てよいのか、別の病気として早めに診てもらうべきか を判断するのは医師の役割ですが、ご家庭で知っておくと役立つ目安をまとめます。

  • 急性胃腸炎:嘔吐に 下痢が加わる ことが多く、家族や園で同じ症状が広がっていることがあります
  • 腸重積・急性虫垂炎強い腹痛・血の混じった便・お腹を触ると痛がる など、強い腹部の症状が前面に出ます
  • 糖尿病性ケトアシドーシス:嘔吐の前から 「やたらに水を欲しがる・尿の量や回数が増える・体重が減ってきた」 といった変化があります
  • 頭蓋内圧亢進(脳の中の圧が高まる状態)朝起きがけの噴き出すような嘔吐、頭痛、ふらつき、見え方の変化 などを伴います
  • 代謝の病気・薬や誤飲によるもの:乳幼児で初めて強い嘔吐が出たときは、専門的な検査で確認することがあります

これらが疑われる症状があるときは、自家中毒として様子を見るのではなく、医療機関にご相談ください

当院での診断と治療

自家中毒は、繰り返す発作・発作の間は無症状・誘因がはっきりしている といった特徴と、ご家庭での経過のお話、そして診察・検査を組み合わせて診断します。診察では、発作のきっかけやご家庭での対応もうかがいながら、次に同じことが起きたときの動き方まで一緒に整理することを大切にしています。

当院で行う検査

  • 尿検査:尿中のケトン体を測り、自家中毒の状態かどうかを確認します
  • 血液検査:血糖の値、体の水分・塩分のバランスを確認します(必要なとき)
  • 他の病気との見分けが必要な場合の画像検査・追加検査

治療の流れ

軽い段階では、ご家庭でのケア(後述)でも回復していきます。当院では、状態に応じて次のような対応を行います。

  • 吐き気止めの坐薬(ドンペリドン坐剤):吐き気が強く飲めないときに使用し、その後に少しずつ甘い飲み物・経口補水液を試します
  • 点滴(経静脈輸液):飲むことが難しいとき、脱水が強いとき、低血糖が疑われるときには ブドウ糖を含んだ点滴 を行います
  • 重症時の対応:意識がぼんやりする・けいれんを伴う・強い脱水があるなど重症のときや、他の病気の見分けが難しいときは、速やかに高次医療機関へご紹介 します

当院は LINE / Web からの予約・Web 問診票の事前記入・QR コード受付 に対応しており、お子さまが体調を崩しているときの通院負担を最小限にする運用を整えています。

家庭でできるケア

ご家庭での対応は、「前ぶれの時期にどう動くか」「吐いてしまったあとにどう支えるか」 の 2 段階で考えると整理しやすくなります。

前ぶれに気づいたとき

  • だるさ・頭痛・顔色が悪い・食欲がない、などのサインに気づいたら、早めに糖分を少しずつ 補給します
  • ジュース、砂糖水、あめ、はちみつ(1 歳以上のお子さまのみ)、ブドウ糖タブレットなどが使いやすい選択肢です
  • 静かな環境で休ませ、無理に動かしません

嘔吐してしまったあと

  • 吐いた直後は、まず数十分は何も与えずに胃を休ませます(すぐ飲ませると再び吐きやすくなります)
  • 落ち着いてきたら、ティースプーン 1 杯(5mL 程度)の甘い飲み物から 少しずつ始めます
  • 大切なのは 「水分」と「糖分」を一緒に とることです。経口補水液(OS-1® など)は水分・塩分の補給に優れますが、糖分は少なめ なので、自家中毒のときは 砂糖水・薄めたリンゴジュース・あめ・ブドウ糖 などを 併用する のがポイントです
  • お子さまが経口補水液を嫌がる場合は、薄めたリンゴジュース・凍らせてシャーベット状にする・ゼリータイプの経口補水液 などを試してみてください
  • 暗めの静かな部屋で休ませると、刺激が減って吐き気が落ち着きやすくなります。眠れるようなら、無理に起こさず休ませて構いません
  • 吐き気が落ち着き、お子さまが「お腹がすいた」と言う・顔色が戻ってきたら、おかゆ・うどん・お味噌汁の上澄み など、消化のよいものから少量ずつ再開します
  • 油の多い食事(揚げ物・脂身の多い肉など)は、しばらく控えるとよいとされています

くり返さないために

  • 空腹の時間を作らない:朝食を欠かさない、運動会・遠足・お泊まり保育の前後はおにぎりや甘いものを補食に
  • 疲労と興奮を残さない:イベント翌日は予定を詰めず、しっかり休ませる
  • 風邪のとき、発熱のときは特に意識して水分+糖分
  • 発作のきっかけ・回数を簡単に記録 しておくと、次の対策に活きますし、診察時にも役立ちます

嘔吐物の処理は、感染性の胃腸炎との見分けがつかない段階では、使い捨て手袋・マスクを使い、嘔吐物に直接触れない ように対応されると安心です。

よくあるご質問

Q. 口から熟したリンゴのような甘酸っぱい匂いがします。これは何ですか?

体のエネルギーが一時的に足りなくなり、代わりに脂肪が分解されて「ケトン体(アセトン)」が増えると出てくる、自家中毒に特徴的な口臭です。この匂いが出ているときは 糖分が足りていないサイン ですので、ご家庭ではジュース・砂糖水・あめなど 甘いものを少量ずつ 与えてあげてください。匂いだけでなく、嘔吐がくり返す・元気がない様子があれば、当院までご相談ください。

Q. 吐いているあいだ、どう過ごさせればよいですか?

暗めの静かな部屋で安静に、吐いた直後は 数十分ほど何も与えず胃を休ませて から、ティースプーン 1 杯の甘い飲み物(砂糖水・薄めたジュース・経口補水液など)を少しずつ試します。眠っているようなら、無理に起こす必要はありません。再び吐いてしまったら、もう一度数十分待ってからやり直してください。

Q. 何歳ごろまで続きますか?

多くのお子さまは 思春期前期までに自然と起こさなくなる ことが知られています。発作の間隔も、年齢とともに少しずつ長くなっていく傾向があります。

Q. 経口補水液を嫌がって飲んでくれません。代わりはありますか?

薄めたリンゴジュース、凍らせてシャーベット状にしたもの、ゼリータイプの経口補水液 などが選択肢になります。自家中毒では 糖分を一緒にとること が大切なので、味の好みに合わせて取り入れやすいものを選んでいただいて構いません。

Q. 兄弟や周りの子にうつりますか?

自家中毒は感染症ではありませんので、うつりません。胃腸炎との見分けが難しい場面もありますが、性質が違う病気です。

Q. 保育園・幼稚園・学校はいつから行けますか?

嘔吐が落ち着き、ふだんの食事が摂れて元気が戻れば登園・登校できます。感染症ではないため出席停止の扱いにはなりませんが、疲労が誘因になりやすいので、翌日以降も予定を詰めすぎないようにしてあげてください。

Q. 将来、片頭痛になりやすいと聞きました。本当ですか?

自家中毒のお子さまの一部は、成長後に 片頭痛 を経験することがあると報告されています。すべてのお子さまに当てはまるわけではありませんが、長くお付き合いする病気のひとつとして、頭痛のサインにも気を配っていただくと安心です。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、受診をご検討ください。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。自家中毒(周期性嘔吐症)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 小児慢性特定疾病情報センター. 周期性嘔吐症候群 概要. https://www.shouman.jp/disease/details/12_03_013/ (参照 2026-06-10)
  2. 茨城西南医療センター病院. 自家中毒(アセトン血性嘔吐症・周期性嘔吐症). https://www.e-seikyo-hp.jp/medical/pediatrics/6.pdf (参照 2026-06-02)
  3. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第10章 代謝疾患「アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)」(印刷 p.216-218)
  4. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(代謝・内分泌疾患「ケトン性低血糖症」印刷 p.330-331/「アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症候群)」印刷 p.332-333)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 7 月 9 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

疾患情報一覧へもどる

お子さまの体調で気になることがあれば、
どうぞお気軽にご受診ください。

公式LINEで開院のお知らせを受け取る