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細気管支炎

赤ちゃんが「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と苦しそうに呼吸をしていて、不安になっていませんか。 細気管支炎は、主に 2 歳未満 の赤ちゃんがかかる、肺の奥の細い気道がウイルスでむくむ病気です。RS ウイルスをはじめとした、ありふれたウイルスが原因で、多くは 1〜2 週間で自然によくなります。 ただし月齢が小さいほど呼吸が苦しくなりやすい病気でもあるので、ご家庭でのケアと、状態に合わせた受診の見きわめが大切です。

💡 この記事の要点

  • RSウイルスなどありふれたウイルスが原因で、多くは1〜2週間で自然によくなります
  • 哺乳前・寝る前の鼻吸いで鼻水を取り、母乳・ミルクは回数を増やしてこまめに与えます
  • 呼吸がとても速い・唇や指先が青っぽい・ぐったりする様子があれば早めにご相談ください

どんな病気か

「細気管支」とは、肺の奥で気管支が枝分かれを繰り返してたどり着く、いちばん細い気道(直径およそ 1 mm 以下) のことです。赤ちゃんはもともとこの気道がとても細いので、ウイルス感染で内側がむくんだり粘液が詰まったりすると、息の通り道が一気に狭くなりやすい構造になっています。これが、赤ちゃんで重症化しやすい理由のひとつです。

  • 好発年齢: 2 歳未満、特に生後 6 か月未満 の赤ちゃん
  • 流行時期: 冬(12〜2 月)が中心、近年は夏にも流行が見られます
  • 主な原因ウイルス: RS ウイルス(およそ 50〜70 %) が最も多く、そのほかヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザ、インフルエンザ、ライノウイルス、アデノウイルスなど
  • うつり方: 飛沫感染(咳・くしゃみ)と接触感染(手・物を介して)

最初の数日は鼻水や軽い熱など「ふつうの風邪」のような症状から始まり、その後、咳が強くなって「ゼーゼー」した苦しそうな呼吸が出てくる、という経過をたどることが多い病気です。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子のゼーゼー、ただの風邪? それとも細気管支炎?」——これは多くの保護者が最初に抱く疑問です。下に挙げたサインは、細気管支炎の赤ちゃんに見られやすい呼吸の様子です。お子さまの今の状態と照らし合わせる目安にしてください。

よく見られる症状

  • ゼーゼー・ヒューヒューという音(医学的には喘鳴)— 息をはくときに笛のような音がする
  • 呼吸が速い(多呼吸)— いつもより明らかに胸の上下が忙しい
  • 胸がへこむ呼吸(陥没呼吸)— 息を吸うたびに、のどの下や肋骨の間、みぞおちがペコッとへこむ
  • 小鼻がピクピクする(鼻翼呼吸)— 息のたびに鼻のわきが開く
  • 鼻水・咳・軽い発熱
  • 哺乳の量が減る、元気がなくなる

経過のイメージ

  1. 最初の 1〜3 日: 鼻水・軽い熱(上の気道の症状)
  2. その後: 咳が強くなり、ゼーゼー・呼吸が速い・胸のへこみなど、下の気道の症状が前面に出る
  3. 回復期: 多くは 1〜2 週で軽快

知っておきたい重症化のサイン

下のような様子が見られたら、月齢が小さい赤ちゃんでは急に悪化することがあるので、迷わず医療機関にご相談ください。

  • 呼吸がとても速く、胸が大きくへこむ
  • 唇や指先が紫っぽく、青っぽく見える(チアノーゼ)
  • ミルク・母乳がほとんど飲めない
  • ぐったりして反応が鈍い
  • 数十秒、息が止まったように見える(特に新生児・若い乳児)

判断に迷うときは、ご家庭だけで抱え込まず、受診をご検討ください。

紛らわしい病気(鑑別)

「ゼーゼー」「苦しそうな呼吸」を起こす病気は細気管支炎だけではありません。当院では問診・診察・必要に応じた検査で見分けていきます。

  • 小児気管支ぜんそく — 繰り返しゼーゼーが出る、アレルギー体質、年齢がもう少し上の子に多い
  • クループ症候群(急性喉頭気管支炎) — 「ケンケン」と犬の鳴き声のような咳、息を吸うときに音がする
  • 百日咳 — 続けざまの咳発作、ときに息が止まる
  • 気道異物(誤嚥) — 急に突発的に咳き込んだ、片側だけ呼吸音がおかしい
  • 心臓の病気にともなう症状(先天性心疾患がある場合)— 哺乳の弱り・体重の伸び悩み・くり返す呼吸の異常

当院での診断と治療

診断

細気管支炎は基本的に 問診と診察(症状と経過)で診断する病気 です。必要に応じて以下を行います。

  • 指先のクリップ型センサーで血液中の酸素量を測定(SpO₂ 測定)
  • RS ウイルス迅速抗原検査(入院が必要な赤ちゃん・パリビズマブ適応のお子さま・免疫不全の方など、保険適用の条件があります。外来で全例に行うわけではありません)
  • 血液検査(重症度の評価が必要なとき)

肺炎の合併が疑われるなど胸部レントゲンなどの画像検査が必要なときは、連携する医療機関へご紹介します。

治療

細気管支炎には、原因のウイルスを直接やっつける薬はありません。そのため、現行の小児呼吸器感染症診療ガイドライン(2022 年)でも、つらい症状をやわらげて自然回復を支える「対症療法」が中心 で、外来での治療は気管支炎の治療に準じる形で進めます。

  • 鼻汁吸引 — 哺乳や睡眠を妨げる鼻づまりを取ることが、赤ちゃんが楽になるためにとても重要です
  • 水分・栄養補給 — こまめに少量ずつ
  • 必要時の酸素投与・補液(脱水時)

ガイドラインでは、以下の治療は ルーチンで使う有効性が示されていません。当院でも、「他院でステロイドや吸入を出されたのに、今回は出されなかった」というご質問をいただくことがありますが、現在の医学的根拠にもとづいた対応です。

  • ステロイドの全身投与・吸入のルーチン使用
  • β2 刺激薬(吸入気管支拡張薬)のルーチン使用
  • 抗菌薬(細菌の合併が疑われない場合)

入院が必要になるケース

赤ちゃんの状態によっては、入院が望ましいことがあります。当院では下記のような状態を含め、より高次の医療機関への紹介が必要と判断した場合は、速やかに連携先へおつなぎします。

  • 酸素の値が下がり続けている
  • 息が止まる発作がある
  • 強い努力呼吸が続く
  • ミルクが飲めず脱水になっている
  • 月齢 3 か月未満で呼吸の症状がある
  • 早産児・慢性肺疾患・先天性心疾患などの基礎疾患がある

重症化リスクの高い赤ちゃんへの予防

早産児・慢性肺疾患・先天性心疾患・免疫不全などのお子さまを対象に、RS ウイルスシーズン中に パリビズマブ(重症化予防のための抗体注射)を月 1 回投与する選択肢があります。当院では適応に該当するお子さまへの投与にも対応しています(手配可能な場合)。

RS ウイルスの予防には、現在はパリビズマブのほかに、ニルセビマブ(赤ちゃんに注射する長時間作用型の抗体のお薬。現在は早産児など重症化リスクの高いお子さま中心に使われています)や、妊婦さんが接種する RS ウイルスワクチン(2026 年度から定期接種)が使えるようになっています。詳しくは RS ウイルス感染症のページ をご覧ください。

当院で対応できる範囲

  • 視診・SpO₂(血中酸素)測定・必要時の RS ウイルス検査
  • 鼻汁吸引、対症療法、経過観察
  • 脱水時の点滴、必要に応じた一時的な酸素投与も院内で行います
  • パリビズマブ予防適応の高リスク児への投与
  • 重症化サインがあれば、速やかに高次医療機関へ紹介

家庭でできるケア

赤ちゃんの細気管支炎では、ご家庭でのケアそのものが「治療の中心」と言ってよいほど大切です。お薬で治す病気ではなく、つらい時期を少しでも楽にしてあげることが、赤ちゃんが自分の力で治っていくのを支えます。

  • 鼻のケア(鼻吸い) — 哺乳前・寝る前のタイミングで鼻水を取ってあげると、ミルクが飲みやすく・眠りやすくなります。電動の鼻吸い器・口で吸うタイプ、どちらでも構いません。
  • 水分補給 — 母乳・ミルクは、ふだんと同じ 1 回量を飲めなければ、「1 回量を減らして回数を増やす」 形で、こまめに与えてみてください。母乳の赤ちゃんは、欲しがるたびに与えて構いません。
  • 加湿 — 室内の空気が乾燥していると咳が出やすくなります。加湿器がなければ、濡れタオルを部屋に干すだけでも効果があります。
  • 姿勢の工夫(起きている時間) — 縦抱きなどで上体を少し起こすと、呼吸が楽になることがあります。ただしこれは、抱っこなど大人が起きて見守れる時間に限った工夫です。就寝中は、固く平らな場所であお向けに寝かせるのが原則です。 クッションやタオルで寝床に傾斜をつけることは、窒息や乳幼児突然死症候群(SIDS)の観点からおすすめできません。
  • 感染を広げないために — RS ウイルスは大人や年長児もかかります。手洗い・タオルを分ける・キスを控えるなどで、ご家族同士の感染も予防できます。

「いま家でできることをしているけれど、これでよいのか不安」「夜中で受診すべきか判断に迷う」というときは、受診をご検討ください。

よくあるご質問

Q. 保育園・幼稚園にはいつから行けますか?

細気管支炎は学校保健安全法上の出席停止疾患ではないため、法律上は登園可能なタイミングに明確な決まりがありません。一般的には「呼吸が落ち着いて、平熱・通常の食欲・通常の睡眠が戻ったころ」が一つの目安とされます。園ごとに復帰条件が異なることも多いので、登園時期は園の方針も合わせて、受診の際にご相談ください。

Q. 上の子(兄弟)や、親にもうつりますか?

RS ウイルスなどの原因ウイルスは年長児・大人にも感染しますが、多くは普通の風邪程度で済みます。家庭内では手洗い・タオルを分ける・直接の口の接触を控えるなどで広がりを抑えられます。ご家族にご高齢の方や妊娠中の方がいる場合は、注意していただきたいウイルスですので、別途お気軽にご相談ください。

Q. 抗生剤や気管支を広げる吸入はもらえないのですか?

細気管支炎の原因はウイルスのため抗生剤は効きません。気管支拡張薬の吸入も、この病気では効果が限定的であることがガイドラインで示されています。「効かないと分かっている治療をなんとなく行うことは、赤ちゃんへの負担になる」 という考え方から、当院では鼻吸い・水分補給・経過観察など、本当に役立つケアを中心にご案内しています。

Q. 将来、ぜんそくになりますか?

乳児期に細気管支炎で重症化したお子さまでは、その後に「ゼーゼー」を繰り返したり、気管支ぜんそくにつながったりすることがあると報告されています。ただし 必ずぜんそくになるわけではありません。今の症状を楽にしてあげること、回復後も定期健診で発育を見守っていくことを大切にしましょう。気になる場合は乳幼児健診などの際にいつでもご相談いただけます。

Q. 一度治ったのに、またゼーゼーしています。再発でしょうか?

細気管支炎のあと、しばらく軽い咳やゼーゼーが残ることはよくあります。多くは時間とともに落ち着きますが、繰り返したり、夜の咳が強くなったりする場合はぜんそくなど別の病気が背景にあることもありますので、受診の際にご相談ください。

Q. RS ウイルスの予防接種は受けられますか?

早産児など重症化リスクの高い赤ちゃんへの パリビズマブ は、適応に該当する場合に当院での投与にも対応しています。そのほか、現在は ニルセビマブ(長時間作用型の抗体のお薬。現在は重症化リスクの高いお子さま中心に使われています)や、妊娠中の母体に対する RS ウイルスワクチン(2026 年度から定期接種)も使えるようになっています。お子さま・ご家族にどの選択肢が当てはまるかは、RS ウイルス感染症のページ もご覧のうえ、受診時にあらためてご相談ください。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、受診をご検討ください。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。細気管支炎をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2022. https://jspp1969.jp/journal/guidelines-for-the-treatment-of-pediatric-respiratory-infections/ (accessed: 2026-06-02)
  2. 日本小児呼吸器学会・日本新生児成育医学会. 小児 RS ウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン 2021. Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00663/ (accessed: 2026-06-02)
  3. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第 16 章 呼吸器疾患 F.下気道疾患「急性細気管支炎」(印刷 p.391-392)
  4. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン(2025 年 8 月 31 日改訂). https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250831Beyfortus_GL.pdf (accessed: 2026-06-10)
  5. 厚生労働省. RSウイルスワクチン(定期接種). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rs/index.html (accessed: 2026-06-10)
  6. こども家庭庁. 赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~. https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids (accessed: 2026-06-10)
  7. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(呼吸器「急性細気管支炎」印刷 p.574)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 11 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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