流行性耳下腺炎(おたふくかぜ・おたふく風邪)
耳の下〜あご周りが腫れて痛がる、熱が出た。「もしかしておたふくかぜ?」と心配になったときに、まず知っておきたいことをまとめました。 おたふくかぜは多くのお子さまが 1〜2 週間で元気に回復する病気です。一方で、1,000 人に 1 人ほど起こる「片耳の聞こえにくさ(ムンプス難聴)」のように、知っておきたい合併症もあります。 このページでは、症状の見分け方・ご家庭でのケア・登園や登校の目安・ワクチンの考え方まで、自由が丘 キッズクリニックまるまるの小児科医がご案内します。
なお「おたふく風邪」「おたふくかぜ」「おたふく」と書かれることもありますが、いずれも同じ病気で、医学的な正式名称が流行性耳下腺炎です。
💡 この記事の要点
- 耳下腺が腫れるウイルス感染症で、多くのお子さまが1〜2週間で元気に回復します。
- 酸っぱいものを避け柔らかい食事にし、痛むところは布で包んだ保冷剤で冷やしましょう。
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐、聞こえ方の異変があれば早めにご相談ください。
こんな症状はおたふくかぜかも
「おたふくかぜかな?」と思うサインは、こんな見た目や様子です。
- 耳の下〜あご周りがふっくら膨らんでくる(左右両方のことも、片側だけのこともあります)
- 腫れたところを触ると痛がる、噛んだり飲み込んだりすると痛がる
- 38〜39℃ くらいの熱が出る
- なんとなく元気がない、ぐったりする
- 顔の輪郭が「おたふく」のように丸く見える
腫れは 1〜3 日かけてだんだん大きくなり、5〜7 日ほどで自然にひいていくのが典型的な経過です。
どんな病気か
おたふくかぜは、ムンプスウイルスという小さなウイルスが体に入って起こる感染症です。耳の下にある「耳下腺」という唾液をつくる場所がふくらむのが特徴で、医学的には「流行性耳下腺炎」と呼ばれます。
- 主に 1〜15 歳 のお子さまがかかります
- 国内では予防ワクチンが任意接種で、接種率が高くないため、およそ 4 年に一度 流行の波が来ます
- どうやってうつる? うつり方は せきやくしゃみ(飛沫)と、唾液がついたおもちゃ・コップなど(接触) です
- 約 3 割のお子さまは症状がほとんど出ません(不顕性感染)。気づかないうちにかかっていることもあります
- 一度きちんとかかると、生涯にわたって免疫がつきます
ウイルスが体に入ってから症状が出るまでの 潜伏期間 は 平均 14〜18 日(およそ 2〜3 週間) と長めで、保育園や学校で流行ったあと、しばらくしてから家庭に持ち込まれることがあります。
いつからいつまでうつるのか も知っておくと安心です。人にうつる期間は 耳下腺の腫れが出る 2〜3 日前から、腫れが出たあと 5 日目ごろまで とされています [4][5]。これが「腫れが出た日から 5 日」という出席停止の目安の根拠でもあります。腫れる前からうつるため、おたふく風邪と分かる前にお友だちやご家族へ広がっていることも少なくありません。
主な症状と気づきのポイント
冒頭にも挙げたサインを、もう少し詳しく順を追ってご紹介します。
- 耳の下〜あご周りの腫れ:多くは両側ですが、4 人に 1 人ほどは片側だけ の腫れから始まります。片側だけでもおたふくかぜのことがあります。
- 痛み:腫れた部分を押すと痛がる、口を開けたり食べ物を飲み込むときに痛がる、というのが典型的です。
- 発熱:38〜39℃ の熱が数日続くことがあります。
- 顎の下や舌の下の腫れ:耳下腺だけでなく、あごや舌の下のリンパ腺のような場所が腫れることもあります。
- だるさ・食欲低下:飲み込むのが痛いので、食事や水分を嫌がるお子さまも少なくありません。
「うちの子の腫れ、本当におたふくかぜ?」 という最初の不安には、見た目だけで判断するのが難しい場合もあります。同じように耳の下が腫れる別の病気もあるため、気になるときはご相談ください。
紛らわしい病気(鑑別)
耳の下が腫れていても、おたふくかぜ以外の原因のことがあります。代表的なものをご紹介します。
| 紛らわしい病気 | 特徴 |
|---|---|
| 化膿性耳下腺炎(細菌が原因の腫れ) | 片側だけが強く赤く腫れ、押すと強い痛みがある。細菌が原因のため抗菌薬での治療が必要 |
| 反復性耳下腺炎 | 小児に多く、軽い腫れを何度も繰り返す。おたふくかぜとは違い、何度もかかる |
| 唾石症(だ液の通り道に石ができる) | 食事のときに腫れが強くなる、片側に多い |
| リンパ節炎 | 耳の下のリンパ節が炎症で腫れる。風邪のあとなどに起こりやすい |
| インフルエンザなどの全身性の感染症 | 全身症状が中心で、耳下腺の腫れが目立つことは少ない |
「おたふくかぜは一度かかれば終わり」と言われているのに 何度も腫れを繰り返す場合は、反復性耳下腺炎などの別の病気 であることが多いので、診察でしっかり見分けます。
いつから登園・登校できる?(学校保健安全法の出席停止期間)
おたふくかぜは法律で 「治るまではお休み」と決められている病気(学校保健安全法上の第二種学校感染症)です。
耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫れが出た日から 5 日が経過し、かつ全身の状態が良くなるまで が出席停止の目安です。
腫れがひいていても 5 日経っていなければお休み、5 日経っていてもぐったりしていればもう少しお休み、という考え方です。 保育園・幼稚園・学校によっては書類(医師意見書)が必要な場合がありますので、お休み明け前にお気軽にご相談ください。
当院での診断と治療
感染力が強い病気のため、受診の際はご予約時に症状をお知らせください。ほかの患者さまと離れた隔離待合室でお待ちいただけます。
診断の進め方
おたふくかぜは、腫れ方・痛み方・周りでの流行状況・予防接種歴 などを総合して、診察で診断するのが基本です。
必要に応じて、血液検査(唾液腺や膵臓の状態を反映する値の確認や、ムンプスウイルスに対する抗体検査)を行うこともあります。検査の必要性はお子さまの状態に合わせてご説明します。
治療
おたふくかぜには、ウイルスを直接やっつけるお薬はありません。つらい症状をやわらげるケア(対症療法) が中心になります。
- 熱や痛みに対しては アセトアミノフェン(カロナールなど) を使います
- 水分補給と安静
- 食事は柔らかく、酸味の少ないものを
- 痛みが強いところを冷やすと楽になることがあります
当院で対応できること
- おたふくかぜの 診断と対症療法
- ムンプスワクチン接種(任意接種・自費)
- 登園・登校に必要な 医師意見書 の発行のご相談
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐、聞こえ方の異変、強い精巣・卵巣の腫れと痛みなど、入院や専門的な治療が必要なサインがあれば、速やかに大きな病院へご紹介します
家庭でできるケア
つらい数日を少しでも楽に過ごすための、ご家庭でのケアのポイントです。
食事と水分
- 酸っぱいもの(柑橘類・酢の物・梅干しなど)は避けましょう。唾液がたくさん出て、痛みが強くなります
- 柔らかくて飲み込みやすいもの がおすすめ:おかゆ、うどん、豆腐、茶碗蒸し、プリン、ヨーグルト、バナナなど
- 冷たいものは食べやすい ことが多いです:アイス、ゼリー、冷たいスープ、シャーベットなど
- 少量をこまめに:一度にたくさん飲み込むのがつらいときは、ストローや小さなスプーンで少しずつ
- 水分は 経口補水液・麦茶・薄めたジュース(柑橘以外) などで。アイスやゼリー飲料で水分を取るのも一つの方法です
痛みのケア
- 痛がるところを冷やすと楽になることがあります。保冷剤はそのままではなく、必ずタオルやハンカチで包んで 当ててください
- 嫌がるときは無理に続けず、本人が心地よい範囲で
- 熱や痛みがつらいときはアセトアミノフェン(カロナールなど)を使います。市販薬を使うときの量や種類で迷われたらご相談ください
過ごし方
- 腫れている間は 激しい運動は控えめに、ゆったり過ごしましょう
- お風呂は、熱が下がって元気があればシャワー程度から再開して構いません
- 兄弟・きょうだいや家族にうつさないために、タオル・コップ・食器は分け、こまめな手洗いを
家族・きょうだいへの感染を防ぐには
- 症状が出る数日前から感染力があるため、家族内での感染を完全に防ぐのは難しい面があります
- 手洗い・タオルや食器の共用を避ける・寝室を分けられる場合は分ける が基本のケアです
- 大人がかかると重症化しやすい傾向があります。ご家族の予防接種歴 も確認しておくと安心です
- 妊娠中のご家族 がいる場合は、念のため早めにご相談ください
おたふくかぜワクチンは受けるべき?
日本ではおたふくかぜワクチンは 任意接種(自費) で、定期接種には含まれていません。一方で、自然にかかった場合に 1,000 人に 1 人ほど起こる「ムンプス難聴」は、現時点で回復させる治療法がない ため、医学的にはワクチンでの予防が最も大切と考えられています。
- 国内では年間 700〜2,300 人 がおたふくかぜによる難聴になっていると推定されています
- 多くは片耳の聞こえにくさで、小さなお子さまの場合は 本人や保護者がしばらく気づかない こともあります
- 学会の推奨は 1 歳と、就学前(5〜6 歳ごろ)の合計 2 回接種
- 2 回目は MR ワクチン(麻しん・風しん)の 2 期と同じ時期 に受けやすいタイミングです
- 目黒区にお住まいの場合:1 歳〜就学前のお子さまを対象に、おたふくかぜワクチンの費用助成があります(1 回 3,000 円 × 2 回まで。2026 年 4 月から 2 回に拡大されました)
「軽い病気と聞いたから接種は不要では?」というご質問もよくいただきますが、ワクチンで防ぎたいのは「かかること」よりも「難聴などの後に残る合併症」 です。 「ワクチンで髄膜炎になると聞いて不安」というお声もありますが、ワクチン接種後に起こる無菌性髄膜炎は 自然にかかったときに起こる髄膜炎よりも頻度が低く、経過も良好 とされています。
なお 2026 年 5 月に、麻しん・おたふくかぜ・風しんの 3 種混合ワクチン 「ミムリット」 が約 30 年ぶりに承認され、おたふくかぜワクチンの定期接種化も検討されています。ただし 制度はまだ確定しておらず、おたふくかぜに対する抗体のつきかたについては、国内試験で いまの単独ワクチンを上回るとは言えていません。何がどこまで決まっているのかは MMRワクチン「ミムリット」が承認 — おたふくかぜの定期接種はどうなる? → で一次情報にもとづいて整理しています。
費用や接種スケジュールの詳細は、ご予約時にあわせてご案内します。
よくあるご質問
Q. 片側だけ腫れていますが、本当におたふくかぜですか?
おたふくかぜでも 約 4 人に 1 人は片側だけ の腫れから始まります。一方で、細菌が原因の耳下腺炎や、何度も繰り返す反復性耳下腺炎、唾石症など別の病気のこともあります。診察で見分けますので、気になるときはご相談ください。
Q. 兄弟・家族にうつさないために、家でできることはありますか?
タオル・食器・コップを分ける、可能なら 寝室を分ける、こまめな手洗い が基本です。症状が出始める数日前から人にうつしやすい状態になるため、完全に防ぐのは難しい面がありますが、これらの対策でリスクを下げられます。大人がかかると重症化しやすい 傾向がありますので、ご家族の予防接種歴の確認もおすすめします。
Q. ワクチンを 2 回打っていてもかかることはありますか?
ごくまれにありますが、2 回接種を受けたお子さまは、たとえかかっても症状や合併症が軽くなる 傾向があります。難聴などの重い合併症を防ぐ意味でも、2 回の接種をおすすめします。
Q. 食べたがらず、水も飲みたがりません。どうすれば?
冷たいもの(アイス・ゼリー・シャーベット)、ストローを使う、少量を何回かに分けて などの工夫が役立ちます。経口補水液をゼリー状にしたものも便利です。おしっこの回数が減ってきた、ぐったりしている、唇が乾いて元気がない、といったときは早めにご相談ください。
Q. 解熱薬はどれを使えばいいですか?大人用は使えますか?
お子さまにはまず アセトアミノフェン(カロナールなど) をおすすめします。市販薬を使う場合の選び方や量で迷われたら、診察時にご相談ください。大人用の薬を自己判断でお子さまに使うことは避けてください。
Q. 「2 回かかった」と聞きました。本当にあるのですか?
おたふくかぜは一度かかると 一生免疫が続く とされており、本当にかかるのは原則 1 回だけです。「2 回かかった」と言われているケースの多くは、反復性耳下腺炎 という別の病気を繰り返していることが多いです。気になる場合は診察でご確認します。
Q. ワクチン後にほっぺが腫れたのですが大丈夫?
ワクチン接種後の軽い腫れは 自然にかかったときと比べて軽症で、経過も良好 とされています。気になるようでしたら遠慮なくご相談ください。
症状についてのご相談
おたふくかぜは多くのお子さまが元気に回復する病気ですが、腫れ方や合併症のサインは一人ひとり違います。「これは受診したほうがいい?」と迷われたら、ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。当院がお子さまの状態をうかがった上で、受診の必要性や次の一歩を一緒に考えます。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
現行ガイドライン(日本小児科学会 2025 年 4 月改訂版)に基づき、以下を参照しました。
- 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説 2025 年 4 月改訂版. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250430_yobo_kansensho.pdf (accessed: 2026-06-02)
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)詳細版. https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/mumps/detail/index.html (accessed: 2026-06-02)
- 兵庫県小児科医会. おたふくかぜと難聴. https://hyogo-pa.org/survey/mumps/ (accessed: 2026-06-02)
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第15章 感染症「ムンプス」(印刷 p.328-329)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(感染症「流行性耳下腺炎」印刷 p.506)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 8 月 29 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。