夜尿症(おねしょ)
夜にお子さまがおねしょをしてしまうと、ご家族もご本人もつらい気持ちになりますよね。おねしょは決して「しつけの失敗」ではなく、体の成長と眠りのリズムの問題で起こることが多い、医学的に整理されたお悩みです。このページでは、夜尿症の基礎知識・受診を考える目安・一般的な治療の選択肢・ご家庭でできる工夫を順にご紹介します。
💡 この記事の要点
- 5歳以降で月1回以上のおねしょが3ヶ月以上続く状態で、しつけの失敗ではありません
- 夕方以降の水分を控えめにし、寝る前のトイレ習慣と便秘のケアを続けることが助けになります
- お薬使用中に朝の頭痛・吐き気・ぼんやりするなどがあれば、必ずご相談ください
どんな病気か
「夜尿症」とは、5 歳をすぎてから、月に 1 回以上、夜寝ているあいだに自分の意思とは関係なくおしっこが出てしまうことが、3 ヶ月以上続いている状態 をいいます(夜尿症診療ガイドライン 2021)。
5 歳のころはおよそ 5 人に 1 人、7 歳ごろでも 10 人に 1 人のお子さまにみられるとされ、決して珍しいことではありません。日本全国で約 78 万人のお子さまが夜尿症に当てはまるとされていますが、実際に医療機関を受診しているのはそのうち 5% ほどといわれています。
おねしょのタイプは大きく次の 2 つに分けられます。
- 夜だけタイプ: 夜のおねしょだけがあり、昼間のおしっこのトラブルはないお子さま
- 昼の症状もあるタイプ: 夜のおねしょに加えて、昼間にも「急に我慢できなくなる」「回数が多い」「少しもれてしまう」などがみられるお子さま
タイプによって考えられる原因や治療の進め方が変わってきます。
おねしょが起こる主な理由
夜のおねしょが続く背景には、次のような体の働きが関係していると考えられています。
- 夜にだけおしっこの量が多くなる: おしっこの量を減らすホルモンが、夜にまだ十分に出ていない
- ぼうこうにためられる量が少ない: 夜のあいだ、ぼうこう(おしっこをためる袋)が十分に広がりきれない
- ぼうこうがいっぱいでも目が覚めにくい: 眠りが深く、もよおしても起きられない
このほか、慢性的な便秘、いびきを伴う眠りの浅さ、心理的なストレスなどが重なって続いていることもあります。また、家族にも子どものころ夜尿があった方は多く、家族歴のあるお子さまは約 70% といわれています。「親としての関わり方が悪いから」というものではありません。
ずっと続いているタイプと、いったん治まってから再び始まったタイプ
- ずっと続いているタイプ(一次性): 生まれてから夜が乾いていた時期が連続 6 ヶ月以上ない(こちらが多数を占めます)
- 再び始まったタイプ(二次性): いったん 6 ヶ月以上おねしょのない時期があったあとに、また始まった
二次性の場合は、心や体に新しい変化が起きていることがあります。心理的なストレス、便秘の悪化、眠りの質の低下のほか、まれに別の体の病気が背景にあることもあるため、一度ご相談いただくことをおすすめします。
主な症状と気づきのポイント
「うちの子の年齢でおねしょが続くのは、普通のことなのか、それとも一度相談したほうがよいのか」――これは多くのご家族が最初に思うご質問です。
「おねしょは何歳まで普通なの?」 という問いには、医学的な目安があります。 5 歳以降で、月 1 回以上のおねしょが 3 ヶ月以上続いている 場合に「夜尿症」と考えます。 裏を返せば、4 歳ごろまでは珍しいことではありません。ただし、年齢や頻度だけで判断する必要はなく、 ご本人やご家族が困っているかどうかも大切な目安です。
夜のおねしょだけがみられる場合
- 夜寝ているあいだだけ、自分の意思とは関係なくおしっこが出てしまう
- 昼間はおしっこのトラブルはない
昼間にも気になるサインがある場合(昼間のお漏らし)
夜のおねしょに加えて、昼間のお漏らしなど次のような様子があるときは、 ぼうこうやおしっこの働きについて少し詳しく見ていく必要があります。
- 急にトイレに行きたくなり、我慢ができない
- トイレが近い・回数が多い
- 少しおしっこがもれてしまう
- 出始めが遅い、または途切れ途切れに出る
- 便秘もあわせてみられる
「夜だけ」なのか「昼間の様子もあるか」を一度振り返ってみていただくと、ご相談のときに大切な手がかりになります。
紛らわしい病気(鑑別)
おねしょと似た形であらわれる別の病気もあります。ご家庭で判断する必要はありませんが、診察のときには次のような可能性を一通り確認していきます。
- おしっこの病気(尿路感染症): おしっこのときに痛みがある、回数が急に増えた、発熱を伴う
- おしっこの量がふえる体質的な病気(糖尿病・尿崩症など): 昼間も含めて、いつもよりおしっこの量がとても多い、のどがとても渇く
- 背骨や神経の発達に関係する病気: 足の感覚や動き方が気になる、便もうまくコントロールできない
- 夜の眠りの中で起こるけいれん(てんかんなど): 朝、舌をかんでいる、ぐったりしているなどの様子がある
- 心の負担からの一時的な変化: 引っ越し・入学・きょうだいの誕生など、生活の大きな変化のあとから再びおねしょが始まった
特に、いったんおねしょのない時期があってから再び始まった場合(再び始まったタイプ)は、上記のような新しい原因がないかを丁寧に確認したいので、一度ご相談いただくと安心です。
夜尿症の診断と治療(一般的な流れ)
夜尿症は、夜尿症診療ガイドライン 2021 にもとづき、お子さまとご家族の生活に無理のない範囲で診療が進められます。一般的には、次のような流れになります。
診察でうかがうこと・行う検査
- いつごろから始まったか、頻度、ご家族の経験
- 昼間のおしっこの様子、便秘の有無
- 睡眠の様子(いびき、眠りの深さ)
- 心身の状況、生活リズム
- 排尿日誌(おしっこの時間・量、夜のおねしょの量と時刻などをご家庭で記録していただきます)
- 尿検査(糖や血の混入などを調べます)
- 必要に応じて、おなかの超音波検査
- 経過によっては追加の検査をご相談します
排尿日誌は最初少し大変に感じるかもしれませんが、ご家庭の様子を整理するためのとても大事な手がかりで、受診の際の大切な資料になります。
治療の進め方(夜尿症の治し方)
生活の整え方からスタートし、必要に応じてお薬やアラーム療法を組み合わせていく のが基本です。お子さまの年齢・タイプ・ご家族の生活リズム、修学旅行などの予定もふまえて方針を決めていきます。
Step 1: 生活の整え方
- 水分のとり方を見直す: 朝・日中はしっかり、夕方以降は少し控えめに。夜の食事の汁物・果物・ジュースなども含めて全体の水分量を意識します
- 就寝前のトイレを習慣に
- 便秘があれば一緒に治療していく(便秘の改善だけでおねしょがよくなることもあります)
- 叱らず、できた朝はゆっくり褒める
- 「自然に治るのを待つだけ」よりも、生活の整え方と一緒に取り組んだほうが、改善が早く、ご本人の気持ちも軽くなります
Step 2: 治療の選択肢
| 治療 | 向いているタイプ | どんな治療か |
|---|---|---|
| デスモプレシン(ミニリンメルト®) | 夜のおしっこの量が多いタイプ | 寝る前に口の中で溶かして飲む、夜のおしっこの量を減らすお薬。服用前後の水分制限を守る必要があります |
| アラーム療法 | ぼうこうにためられる量が少ない・目が覚めにくいタイプ | おねしょをすると音が鳴る小さな機械を下着につけ、3〜6 ヶ月ほどかけて起きる練習をしていく方法 |
両者は同じくらい効果が期待される第一選択です。「家族で夜に対応できそうか」「修学旅行など短期で間に合わせたい予定があるか」も大事な判断材料になります。
なお、どちらの治療が向いているかは、排尿日誌でわかる「夜のおしっこの量」と「ぼうこうにためられる量」 をもとに見極めていきます。夜のおしっこの量が多いタイプにはお薬(デスモプレシン)が、ためられる量が少ないタイプにはアラーム療法やぼうこうの動きを整えるお薬が向いていると考えられており、両方の特徴があるお子さまには組み合わせて考えていきます。
Step 3: 組み合わせ療法・他の選択肢
- デスモプレシンとアラーム療法の組み合わせ
- 昼間の症状もある場合は、ぼうこうの動きを落ち着かせるお薬を併用すること もあります
- どうしても他の治療で改善がない場合に検討されるお薬として、古いタイプの内服薬(イミプラミンなど)もありますが、心臓への影響や、誤って多く飲んでしまった場合の重い副作用が知られています。近年は用いられることが少なく、使用する場合も専門の医療機関で慎重に扱われます
専門的な診療をご希望のとき
夜尿症の詳しい評価や治療(排尿日誌にもとづく評価、デスモプレシンの処方、アラーム療法の導入、便秘が背景にある場合の併行治療など)をご希望の場合は、夜尿症を診療している医療機関へのご相談をおすすめします。詳しい泌尿器科的な検査が必要な場合や、背景に別の病気が疑われる場合も、専門の医療機関で詳しく調べることができます。
家庭でできるケア
ご家庭で取り組めることは少しずつでも大丈夫です。すべてを完璧に行う必要はなく、ご家族の生活に無理のない範囲から始めましょう。
生活の整え方
- 水分のとり方: 朝〜昼にしっかり、夕方以降はコップ 1 杯程度を目安に控えめに。みそ汁・スープ・牛乳・果物・アイスなどに含まれる水分も合わせて考えます
- 夕食以降の塩分・糖分を控えめに(味のこい食事やジュースは控えるなど)
- 寝る前に必ずトイレに行く 習慣を
- 規則正しい睡眠リズム
- 便秘があれば早めに整えていく(おねしょの改善につながることがあります)
心の面でのケア
- 「叱らない」と言われても、つい言葉が出てしまうことはありますよね。ご家族も寝不足で大変なときに、いつも穏やかにとはいきません。少し落ち着いたあとで、「大丈夫、一緒にやっていこう」と一言かけ直すだけでも、お子さまの安心感は変わります
- 朝、乾いていた日はカレンダーにシールを貼るなどして、ご本人と一緒に喜びを共有
- 「これは病気の一つで、自分のせいではない」とお子さまに伝えてあげてください
- きょうだいやご家族にも、「責めない・からかわない」を共有しておくとご本人が安心できます
夜の備えを上手に整える
おねしょシーツや吸水パッドは「甘やかし」ではありません。ご本人の自尊心とご家族の睡眠を守るための大切な道具 です。安心して取り入れてください。
- 防水シーツ・おねしょケットの活用
- 吸水パンツ(夜だけ使う)の併用
- 朝の片付けがしやすいよう、替えのシーツやパジャマを近くにまとめておく
- 「におい」が気になるときは、布専用の消臭スプレーや、つけおき洗いで対応
デスモプレシン(お薬)を使う場合の注意
- 服用前 1 時間と、服用後の夜(およそ 8 時間)は水分を控える ことが大切です(処方を受ける際に、医療機関からあらためて説明があります)
- 朝に頭痛・吐き気・ぼんやりするなどがあるときは、必ずご相談ください(体の中の塩分バランスが薄まりすぎているサインのことがあります)
- お薬は決められた量を守り、お子さまの手の届かない場所に保管してください
アラーム療法を行う場合
- 下着に専用の小さな機械をつけ、夜尿があると音や振動でお知らせします
- 3〜6 ヶ月ほど続けることで、起きる練習を重ねていきます
- 最初の数週間はご家族の協力が欠かせません。事前に「どう対応するか」をご家族でも話し合っておくとスムーズです
修学旅行・お泊まり保育が近いとき
- 早めに医療機関へ相談すれば、短期間だけお薬を使う方法など、現実的な選択肢を一緒に考えられます
- 当日の持ちものや、学校の先生への伝え方についても、事前に整理しておくと安心です
夜中に起こしてトイレに連れていったほうがよい?
ご家庭でよくお聞きするご質問ですが、現在のガイドラインでは「夜中に無理に起こしてトイレに行かせること」は基本的にはおすすめしていません。眠りのリズムが乱れて、かえってお子さまもご家族もつらくなることがあります。
よくあるご質問
Q. うちの子はまだおねしょをしています。何歳ごろから相談していいですか?
5 歳ごろから 5 人に 1 人にみられ、決して特別なことではありません。「5 歳以降で月 1 回以上のおねしょが 3 ヶ月以上続いている」「ご本人やご家族が困っている」「修学旅行など気になる予定がある」――どれかに当てはまれば、年齢にかかわらず一度、夜尿症を診療している医療機関にご相談ください。
Q. 私自身も子どものころおねしょをしていました。遺伝でしょうか?
夜尿症のお子さまの約 70% にご家族の経験があるとされています。体質的な背景があることは事実ですが、「家系のせい」ではなく、生活の整え方や治療で十分に改善が期待できます。
Q. ついおねしょのことで叱ってしまいました。もう手遅れでしょうか?
大丈夫です。寝不足のなかで、つい強い言葉が出てしまうのは誰にでもあることです。これからの関わり方で十分に取り戻せます。「責められた」記憶よりも、「一緒に取り組んでくれた」という経験のほうがずっと残ります。
Q. おねしょシーツや吸水パンツを使うのは甘やかしになりませんか?
なりません。ご本人の自尊心とご家族の睡眠を守るための、とても大切な道具です。安心して取り入れてください。
Q. 修学旅行・お泊まり保育が近いです。間に合いますか?
短期的にお薬を使う方法など、現実的に取れる選択肢があります。日程までに余裕をもって医療機関に相談すると、検討できる選択肢の幅が広がります。
Q. 便秘とおねしょは関係がありますか?
はい。便秘があるとぼうこうのスペースが圧迫され、おねしょにつながることがあります。便秘の治療だけでおねしょが改善するお子さまもいらっしゃるため、受診の際は便秘の有無もあわせて相談するとよいでしょう。
受診を考えるとき
おねしょは、お子さまにもご家族にもつらいものですが、ご家族だけで抱える必要はありません。まずはご家庭でできる工夫から始めていただき、「5 歳以降で月 1 回以上のおねしょが 3 ヶ月以上続いている」「ご本人やご家族が困っている」「修学旅行など気になる予定がある」といったときは、夜尿症を診療している医療機関へのご相談をおすすめします。
なお、当院では夜尿症(おねしょ)の専門的な診療は行っておりません。上記に当てはまる場合は、夜尿症を診療している医療機関にご相談ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。夜尿症の専門的な診療は行っていませんが、発熱やせきなど、お子さまの体調で気になる症状があるときは、LINE からお気軽にご予約ください。
参考文献
- 日本夜尿症学会(現:日本夜尿症・尿失禁学会). 夜尿症診療ガイドライン 2021. Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00690/ (accessed: 2026-06-02)
- Minds ガイドラインライブラリ. 夜尿症(公開 PDF). https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00690.pdf (accessed: 2026-06-02)
- 原寿郎(監修), 高橋孝雄・細井創・斎藤昭彦(編). 標準小児科学 第9版. 医学書院, 2022. 第21章 腎・泌尿器疾患「夜尿症」(印刷 p.591).
- ケアネット. 夜尿症推計 78 万人のうち受診は 4 万人. https://www.carenet.com/news/general/carenet/42376 (accessed: 2026-06-02)
- ファーマシスタ. 夜尿症治療薬一覧 デスモプレシン製剤の特徴と服薬指導のポイント. https://pharmacista.jp/contents/skillup/academic_info/pediatrics/3868/ (accessed: 2026-06-02)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(腎・泌尿器・生殖器疾患 Suppl「夜尿症」印刷 p.399)
※ 本ページの記載は「夜尿症診療ガイドライン 2021」に基づいています。
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 10 月 8 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。