誤飲・異物を飲んだ・中毒(小児)
小さなお子さまが、薬や身の回りのものを誤って口にしてしまう「誤飲」は、多くのご家庭で一度は経験する身近な出来事です。誤飲・異物誤飲には、①薬などを飲んでしまうことによる中毒症状、②異物がのど・気管に入ってしまうことによる呼吸のトラブル、③食道や胃腸に異物が入り込むことによる症状、の3つのタイプがあり、なかでも最も急を要するのは、のどや気管が詰まって呼吸ができなくなること(窒息)です。落ち着いて、何を・いつ・どれくらい口にしたかを確認し、対応を一緒に考えていきましょう。
💡 この記事の要点
- 誤飲は活動性が高まる1〜5歳に多く、家庭内の消毒薬・洗剤・たばこ・ボタン電池などが主な原因です。
- 何を飲ませる・吐かせるかは物質によって正反対の対応が必要で、自己判断はかえって危険です。まず中毒110番か当院にご相談ください。
- のどが詰まって苦しそうな呼吸をしている、ボタン電池を飲み込んだなどは119番へ、迷ったときは中毒110番・#8000をご利用ください。
どんな病気か
誤飲・異物誤飲とは、お子さまが家庭内にある薬などを誤って飲んでしまう、あるいは異物を誤って飲み込んでしまうことによって、体に悪い影響が生じる出来事の総称です。大きく次の3種類に分けられます。
- 薬物を誤って飲むことによる中毒症状
- 異物がのど・気管に入ることによる呼吸のトラブル
- 食道を含む消化管に異物が入ることによる症状
このなかで、最も緊急性が高いのは、のどや気管が異物でふさがれてしまう窒息です。
- 誤飲・中毒のほとんどは、活発に動きまわるようになる 1〜5歳 のお子さまに起こります
- 家庭内にある消毒薬や洗剤などの生活用品、食品、おもちゃなどが原因となることが多く、お子さまが過ごす環境の中で、周りの大人が気づきにくかったことがきっかけとなります
- こうした事故が起こりやすい環境があること自体が、もっとも重要な問題とされています
主な症状と気づきのポイント
タイプによって、気づかれ方には違いがあります。
- 中毒(薬物) — 何かを飲んだ形跡があることで気づかれることが多く、ご家族からの申告で発見されるケースが中心です。飲んだ薬物の種類によっては、たいへん重い合併症につながったり、命に関わったりすることもあります
- 気道異物 — お子さまが急に苦しそうな呼吸を始めることで気づかれます。ご家族が誤飲の場に居合わせていることも多いのですが、その場では気づかれず、後になって喘息やクループとの見分けの中で初めて診断されることもあります
- 消化管異物 — 何かを飲み込んだ様子があることで気づかれます。最初は特に症状がないことが多いのが特徴です
原因となりやすいものとして、たばこ・芳香剤や消臭剤・乾燥剤・石けん・保冷剤・肥料・ホウ酸団子・衣類用洗剤などの家庭用品、ピーナッツなどの豆類やおもちゃ(気道異物として)、ボタン電池・磁石・鋭利なもの(消化管異物として)が挙げられます。特にボタン電池は、飲み込んでから4時間程度という短い時間で消化管に穴があくこともある、注意が必要な異物です。なお、年齢が高いお子さまで誤飲が繰り返されるような場合には、虐待の可能性も考慮します。目安として、母子健康手帳には、お子さまの口に入ってしまう大きさかどうかを確認するための円(直径39mm)が掲載されています。
紛らわしい病気(鑑別)
異物誤飲による症状は、ほかの病気と見分けが必要になることがあります。
| 見分けたいポイント | 詳細 |
|---|---|
| 喘息・クループ | 気道異物が慢性化・くり返す気道の症状として現れた場合、これらの病気との見分けが必要になります |
| 食中毒(細菌性)・感染性胃腸炎 | 嘔吐や下痢を伴う場合に、原因が誤飲によるものか感染性のものかを見分けます |
| 気管支内異物 | 異物が気管支をふさぐと、息を吸うときと吐くときで胸の中の空気の動きに差が出ます。この確認には画像検査が必要なため、連携医療機関へご紹介します |
診察やご家族からのお話をもとに、これらを丁寧に見分けていきます。
当院での診断と治療
当院で対応できる範囲
当院では一般小児科外来として、誤飲・中毒の初期評価を行います。ご家族からの申告で発見されることが多い出来事のため、症状の有無にかかわらず、迅速な対応を心がけています。
- 中毒(薬物): 何を・いつ・どれくらい飲んだかをお伺いし、物質の特定と初期対応のために、日本中毒情報センター(中毒110番)への問い合わせも活用します。受診の際は、飲み残しの容器を持参いただけると診断の助けになります
- 気道異物: 自発呼吸が保たれている場合は、直ちに医療機関を受診いただくことが基本です。当院では呼吸の状態と全身状態を確認します。当院にはレントゲン設備がありませんので、画像での確認が必要と判断した場合は、撮影ができる連携医療機関へ速やかにご紹介します
- 消化管異物: 飲み込んだものによっては、レントゲンや内視鏡でなければ確認できないことがあります。いずれも当院では行えない検査のため、必要と判断した場合は連携医療機関へご紹介します
専門医療機関へご紹介する場合
次のようなケースは、救急搬送または高次医療機関へのご紹介が必要です。
- のどや気管がふさがれて呼吸ができない・窒息の状態
- ボタン電池を飲み込んだ場合(短時間で消化管に穴があくことがあるため、迅速な摘出が必要です)
- 強酸・強アルカリ、揮発性の物質を誤飲した場合
- 内視鏡による摘出が必要な消化管異物
家庭でできるケア
誤飲・異物誤飲は、起きてしまった後の対応と同じくらい、「起こさないための環境づくり」が大切な出来事です。
予防のポイント
- 中毒・誤飲の原因となりやすいもの(たばこ・洗剤・乾燥剤・ボタン電池など)は、お子さまの手の届かない場所で管理してください
- こうした事故が起こりやすい環境そのものを見直すことが、もっとも重要な対策とされています
起きてしまったときの対応
何かを誤飲した場合、飲ませる・吐かせるといった処置の判断は、物質によって正反対になることがあり、誤った処置がかえって害になることがあります。判断に迷うときは、自己判断で処置をする前に、病院か中毒センターにお問い合わせください。
参考として、物質ごとの対応の違いには次のようなものがあります。
- 強酸・強アルカリ(粘膜を傷つけるもの): 牛乳を飲ませ、吐かせないようにして直ちに受診
- 揮発性の物質(化学性肺炎の原因になるもの): 何も飲ませず・吐かせず、直ちに受診
- 防虫剤(脂に溶けやすいもの): 牛乳ではなく水を飲ませ、吐かせてから受診
- たばこ: 水や牛乳を飲ませないでください(ニコチンが溶け出して吸収が早まります)。無理に吐かせず、口の中に残っていれば取り除いて受診(吸い殻を浸した水を飲んだ場合は特に緊急性が高くなります)
日本中毒情報センター 中毒110番(情報提供料は無料、通話料はご負担ください)[2]:
- 大阪中毒110番: 072-727-2499(365日24時間)
- つくば中毒110番: 029-852-9999(365日24時間)
- たばこ専用電話: 072-726-9922(365日24時間・自動音声)
※食中毒(細菌性のもの)、慢性中毒、小石・ビー玉などの異物誤飲は、中毒110番では受け付けていません[2]。
元気そうに見えるときこそ、確認したいこと
「飲んだかもしれないけれど、本人は元気そう」——実際にはこれがいちばん多い場面です。ただ、元気そうかどうかだけでは判断できません。ボタン電池・磁石・たばこ・強酸や強アルカリのように、飲んだ直後は変わりなく見えても、時間をおいて重い症状につながるものがあるためです。まずは次の3点をご確認ください。
- 何を飲んだか(飲んだ可能性があるか) — 飲み残し・容器・包み・かじった跡が残っていれば、そのまま受診時にお持ちください
- 大きさ — 母子健康手帳には、お子さまの口に入ってしまう大きさを確かめるための直径39mmの円が掲載されています。この円を通る大きさのものは、のどに詰まる可能性があります
- いつ・どれくらい — 中毒110番や当院にご相談いただくとき、いちばん必要になる情報です
何を飲んだのか分からないときも、分からないままお伝えください。 手の届く範囲に何があったか、口の中や周り・衣服に付着物がないか、といった情報から絞り込んでいきます。
なお、紙・シール・ビニールの切れ端・小さなプラスチックなど、中毒性のないものを飲み込んだ場合、中毒110番は対象外です(小石・ビー玉などの異物誤飲は受け付けていません[2])。この場合のご相談先は、当院などの小児科になります。ボタン電池・磁石・とがったもののいずれでもないことがはっきりしていて、呼吸・飲み込み・機嫌にふだんと変わりがないか——といった点を含めて確認します。飲み込んだものと月齢によって対応が変わりますので、自己判断せずにご連絡ください。
🚑 こんなときは迷わず救急受診を
次のような状況では、夜間・休日でもためらわず救急受診、または 119番をご利用ください(迷うときは中毒110番、または小児救急電話相談 #8000)。
- 呼吸が止まっている、または止まっているように見える。自発呼吸が保たれていない場合は、背部叩打法・腹部突き上げ法(ハイムリック法)を試み、異物が摘出できず意識がない場合は心肺蘇生を開始しながら救急車を呼んでください
- 急に苦しそうな呼吸を始めた(気道異物の疑い)
- ボタン電池を飲み込んだ、または飲み込んだ可能性がある
- 強酸・強アルカリ、揮発性の物質を誤飲した
よくあるご質問
Q. 親の薬を飲んだかもしれません。どうすればいいですか?
誤飲する薬物は種類が多岐にわたり、毒性もさまざまです。対処法は物質によって大きく異なるため、自己判断で吐かせたり様子を見たりせず、まず日本中毒情報センター(中毒110番)または当院にお問い合わせください。お問い合わせの際は、何の薬を・いつ・どれくらい飲んだ可能性があるかを伝えられるよう、薬のパッケージや説明書があれば手元にご用意ください。
Q. 誤飲の瞬間を見ていません。何を飲んだか分からないときはどうすればいいですか?
誤飲は、ご家族が「何かを飲んだ形跡がある」ことで気づかれることが多く、必ずしも瞬間を目撃していなくても対応は可能です。周辺に飲み残しの容器やパッケージ、噛んだ跡のあるものがないかを確認し、見つかったものがあれば受診時にご持参ください。何も手がかりがない場合も、症状の有無にかかわらず早めにご相談ください。
Q. とりあえず吐かせたほうがいいですか?
いいえ、物質によっては吐かせてはいけないものがあります。たとえば強酸・強アルカリや揮発性の物質は、吐かせることでかえって食道やのど、肺を傷つける危険があります。何を飲んだか分かっている場合は、まず中毒110番か当院にご相談のうえで対応してください。
Q. ボタン電池を飲み込んだかもしれません。急いだほうがいいですか?
はい、ボタン電池は誤飲した異物の中でも特に緊急性が高いものの一つです。飲み込んでから4時間程度という短い時間で消化管に穴があくことがあるため[1]、飲み込んだ可能性がある時点で、様子を見ずに直ちに受診してください。
Q. 突然、苦しそうな呼吸をし始めました。何を疑いますか?
急に苦しそうな呼吸が始まった場合は、のどや気管に異物が入り込んだ可能性(気道異物)を考えます。ピーナッツなどの豆類やおもちゃの小さな部品が原因になることがあります。自発呼吸が保たれていれば直ちに医療機関を受診し、呼吸が止まっているようであれば背部叩打法・腹部突き上げ法を試みながら救急車を呼んでください。
Q. 中毒110番に電話するとき、何を伝えればいいですか?
何を(物質名やパッケージの情報)、いつ、どれくらいの量を飲んだ可能性があるかを伝えられるようにしておくと、スムーズに相談できます。手元にパッケージや容器があれば、そのまま持ちながら電話されることをおすすめします。なお、食中毒(細菌性のもの)や慢性中毒、小石・ビー玉などの異物誤飲は中毒110番の対象外のため、その場合は当院や医療機関へご相談ください。
Q. 紙やシールを食べてしまいました。元気そうですが、受診したほうがいいですか?
まず、飲み込んだものがボタン電池・磁石・とがったもののいずれでもないことをご確認ください。この3つは元気そうに見えても急を要します。紙やシールのように中毒性のないものは中毒110番の対象外ですので、ご相談先は当院などの小児科になります。何を・いつ・どれくらい飲み込んだか、呼吸や飲み込みにふだんと変わりがないかをお伝えいただければ、受診が必要かどうかを含めてご案内します。
症状についてのご相談
判断に迷うとき、ひとりで抱え込まずにご相談ください。お子さまの状態によって最適な対応は変わるため、個別にご案内しています。
上記「🚑 こんなときは迷わず救急受診を」のサインがあるときは、ためらわず 119番、判断に迷うときは 中毒110番 や小児救急電話相談 #8000 をご利用ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。誤飲・異物を飲んだ・中毒(小児)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第6章 救急疾患 各論E「誤嚥・誤飲」/各論F「中毒」(印刷 p.67-69)
- 公益財団法人 日本中毒情報センター. 中毒110番・電話サービス. https://www.j-poison-ic.jp/110serviece/ (accessed: 2026-06-05)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(小児科総論「その他の事故・傷害(誤嚥・誤飲)」印刷 p.94-96)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 9 月 8 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。