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百日咳(百日せき)

夜になると、息ができないほど続けざまにコンコンコン…と咳き込み、そのあと「ヒュー」と息を吸う。咳の後に吐いてしまう。百日咳は、こうした特徴的な咳が長く続く感染症です。風邪のような症状で始まり、徐々に咳が強くなっていきます。特に小さな赤ちゃんでは重い症状になることがあるため、ご家族で気になる咳が続いている場合は早めにご相談ください。このページでは、見分けるポイント・治療・登園の目安を順番に確認できます。

💡 この記事の要点

  • 感染力の強い咳の病気で、特有の咳が数週間続きます。生後6ヶ月未満の赤ちゃんは重症化しやすいです
  • お部屋を加湿しこまめに水分補給を。市販の咳止めは使わず、抗菌薬は最後まで飲み切ります
  • 呼吸が止まったように見える・唇や顔色が紫色のときは、ただちに119番へ(迷うときは #7119・#8000)

どんな病気か

百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis) という細菌が、のどや気管支に感染して起こる病気です。名前の通り、激しい咳が 数週間から、ときに数ヶ月 にわたって続くのが特徴です。

  • 感染力がとても強い 病気で、咳やくしゃみのしぶき(飛沫)でうつります
  • 潜伏期間(うつってから症状が出るまで)は 通常 7〜10 日(最長で 5〜21 日) です
  • 全年齢でかかりますが、生後 6 ヶ月未満の赤ちゃん で重症化のリスクが高くなります
  • ご両親や上のお子さま、おじいちゃん・おばあちゃんなど、大人や年長児からうつる ケースが近年増えています(ワクチンの効果が年月とともに弱まるため)
  • 学校保健安全法上の 第二種学校感染症 にあたり、特有の咳が消えるまで、または抗菌薬の治療を 5 日間続けるまで、保育園や学校はお休みする決まりです

2026 年の流行状況(2026 年 9 月 4 日時点)

百日咳は、2025 年に記録的な大流行があり、2026 年はそこから大きく減っています。 ただし、2024 年以前の水準に戻ったわけではありません [7][8]。

東京都と全国の累積報告数を並べると、こうなります [7]。

東京都の累積報告数 全国の累積報告数
2023 年(通年) 116 件 1,009 件
2024 年(通年) 394 件 4,054 件
2025 年(第 34 週まで) 5,259 件 69,797 件
2026 年(第 34 週まで) 527 件 4,144 件

2025 年は全国で、第 1〜44 週だけで 84,911 例 と、それまでの 1 年分の届出数を大きく上回る 記録的な年でした [8]。2026 年はその およそ 10 分の 1 の水準まで落ち着いています。

一方で、2026 年はまだ 8 月の時点(第 34 週)で、2024 年の 1 年分を超えています。 「大流行は終わったが、以前より多い状態が続いている」というのが、いまの位置づけです。

そして百日咳は、流行の大小にかかわらず、生後 6 ヶ月未満の赤ちゃんにとっては重い病気です。 流行が落ち着いている今は、あわてずにワクチンのスケジュールを整えられる時期でもあります。

もう一点、治療の面での変化があります。国内では いつも使う抗生剤(マクロライド系)が効きにくい型の百日咳菌 が報告されています。2025 年 8 月に学会のガイドラインが追補版として更新され、別の種類の抗生剤も使えるようになりました [1]。当院でもこの最新の方針に沿って治療を行います。

数字は週ごとに変わります。最新の状況は 東京都感染症情報センター(百日咳) でご確認ください。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子のこの咳、ただの風邪?それとも百日咳?」と迷う方が多い病気です。百日咳は、時期によって症状が大きく変わります。

経過は大きく 3 つの時期に分かれます

  1. 風邪に似た初期(カタル期、1〜2 週間): 軽い熱・鼻水・咳から始まります。この時期に最も人にうつしやすいのですが、見分けがつきにくい時期でもあります。
  2. 激しい咳の時期(痙咳期、2〜6 週間): 短く区切るような激しい咳が、息継ぎなしに続けざまに起こります。咳の後に「ヒュー」と笛のような音を立てて息を吸ったり(whoop)、激しく咳き込んだ後にミルクや食事を吐いてしまったり、顔が赤くなって唇が紫っぽくなることもあります。夜間に咳が強くなる ことが多いのも特徴です。熱は出ないことも多く、咳の合間は比較的元気そうに見える ため「ただの咳」と見過ごされがちですが、咳の発作そのものは強く出ます。
  3. 落ち着いてくる時期(回復期、数週): 咳の回数や強さがゆっくりと和らいでいきます。ただし、しばらくは他の風邪をひくたびに似たような咳がぶり返すことがあります。

こんな咳が見られたら、ご相談ください

  • 「コンコンコン…」と 続けざまに激しく咳き込む 発作がある
  • 咳の後に「ヒュー」と息を吸う音が聞こえる
  • 咳き込んだ後に 吐いてしまう ことがある
  • 夜になると咳がひどくなる 日が続いている
  • 風邪薬を飲んでも咳が 2 週間以上続いている

赤ちゃん(特に 6 ヶ月未満)で注意したいサイン

小さな赤ちゃんでは、典型的な「ヒュー」という音が出ず、咳のかわりに一時的に呼吸が止まったように見える ことがあります。下記のような様子が見られたら、迷わずご相談・受診ください。

  • 咳のかわりに 呼吸が止まったように見える
  • ミルクやおっぱいが飲めない、飲んでもすぐ吐く
  • 唇や顔色が紫っぽくなる
  • ぐったりして反応が弱い

呼吸が止まったように見える・唇や顔色が紫色・ぐったりして反応が弱い ときは、ただちに 119 番(迷うときは #7119 / #8000) にご連絡ください。

紛らわしい病気(鑑別)

似た咳症状を起こす病気はいくつかあります。診察と必要な検査で見分けていきます。

  • RS ウイルス感染症: 赤ちゃんの細気管支炎で激しい咳・ゼーゼーが出ます
  • マイコプラズマ肺炎: 学童〜思春期に多く、長引く咳が特徴です
  • 百日咳によく似た他の細菌(パラ百日咳菌など)の感染: 症状はそっくりですが、検査で区別できます
  • 気管支ぜんそくの発作: 咳とゼーゼーが出ます。既往やアレルギーの有無で見分けます
  • 気道に異物が入っている可能性: 急に激しく咳き込み始めた場合に考慮します

当院での診断と治療

感染力が強い病気のため、受診の際はご予約時に症状をお知らせください。ほかの患者さまと離れた隔離待合室でお待ちいただけます。

検査

  • 問診と診察: 咳の様子、続いている期間、ご家族の感染状況などを伺います
  • 遺伝子検査(LAMP / PCR): のどや鼻から少量の検体を採り、百日咳菌の遺伝子を調べます。診断確定に最も有用な検査です。外部の検査機関に依頼するため、結果が出るまで数日かかります
  • 必要に応じて 耐性遺伝子検査(いつもの抗生剤が効くかどうかを調べる検査)も行います

治療(抗菌薬)

抗菌薬には次のような目的があります。

  • 早めに飲み始めることで、他の人にうつす期間を短くする
  • 病気の経過を少しでも軽くする(ただし症状そのものを止める効果は限定的です)

第一選択は マクロライド系の抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンなど)です。お子さまの年齢や状態に合わせて選択します。

2025 年 8 月のガイドライン追補版 では、感受性が確認できない場合や耐性が疑われる場合には、別の種類の抗菌薬(ST 合剤)を生後 2 ヶ月以上のお子さまに使うことが示されました。生後 2 ヶ月未満の赤ちゃんには ST 合剤は原則使用せず、マクロライド系の継続や入院での個別判断となります。

ご家族・濃厚接触者への対応

赤ちゃんがいるご家庭などで、ご家族にうつるのを予防するために、あらかじめ抗菌薬を飲んでいただく ことがあります。対象や薬の選択については、診察時にご家族の状況を伺ってご相談します。

当院で対応できる範囲

  • 問診・診察・遺伝子検査による診断
  • 抗菌薬の処方(耐性株の流行状況を考慮した選択)
  • ご家族・接触者の予防的治療やワクチン接種のご案内
  • 個別の重症度判断は診察で行い、必要な場合は連携先の高次医療機関をご案内します

咳が長く続く病気ですので、診断して終わりにせず、経過中のご不安にもその都度お答えしながら診ていくことを大切にしています。

家庭でできるケア

百日咳と診断されたとき、ご家庭で気をつけていただきたいことをまとめました。

お薬と過ごし方

  • 処方された抗菌薬は最後まで飲み切る(途中で咳が落ち着いてもやめないでください)
  • 市販の咳止めは自己判断で使わない(百日咳の咳には効きにくく、赤ちゃんでは副作用の心配もあります。気になる症状があれば診察でご相談ください)
  • お部屋を 加湿 する(加湿器がなければ、洗濯物を室内に干す、湯気のこもった浴室で少し過ごすなどでも代わりになります)
  • こまめな水分補給(一度にたくさんではなく、少量を頻回に。経口補水液も活用できます)
  • 咳き込みやすい時期は 食事を少量ずつに分ける(一度にたくさん食べると吐きやすくなります)

赤ちゃん・きょうだいへうつさないために

  • ご家族に咳症状がある方は マスク・手洗い を徹底
  • できる範囲で、咳の症状がある人と赤ちゃんの 寝室を分ける・授乳前後の接触に気をつける
  • 来客や人混みは、症状が落ち着くまで控えめに

予防接種が最も大切な備えです

百日咳は、ワクチンで予防効果が高いことが分かっています。

  • 2024 年 4 月から、5 種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib:百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオ・Hib をまとめて予防)が定期接種 に加わりました。新しく接種を始めるお子さまはこちらが標準です。これまで通り 4 種混合(DPT-IPV)も継続できます。
  • 接種スケジュール: 初回 3 回(生後 2 ヶ月以降、20〜56 日間隔)+ 追加 1 回(3 回目接種から 6 ヶ月以上あけて、標準的には 12〜18 ヶ月後)
  • 学童期・思春期の追加接種 として、5〜6 歳(就学前)と 11〜12 歳の時期に三種混合(DTaP)または Tdap(成人用三種混合)を追加することが学会で推奨されています(任意接種=自費)。公費の対象は制度改正や自治体の判断で変わることがありますので、接種時点の取り扱いはお住まいの自治体の案内か当院でご確認ください
  • ワクチンの効果は 年月とともに弱まる ため、思春期以降に再びかかったり、赤ちゃんへの感染源になったりすることがあります

具体的な接種スケジュールや次に何を打つべきかは、当院の予防接種外来でご相談ください。

よくあるご質問

Q. ワクチンを定期接種で受けていれば、もう百日咳にはかからないですか?

ワクチンの効果は年月とともに少しずつ弱まるため、思春期以降に再びかかることがあります。ご自身の症状は軽くても、ご家庭の赤ちゃんへうつしてしまうことがあるため、学童期や思春期での追加接種が推奨されています。ご家庭の状況に合わせた接種プランは、診察時にご相談ください。

Q. 上の子が百日咳と診断されました。下の赤ちゃん(0 歳)にうつさないために、家でできることは?

上のお子さまの咳が落ち着くまで、できれば 寝室や食事の時間を分ける抱っこや授乳前の手洗い・マスク を徹底するなどが基本です。状況によってはご家族にも予防的な抗菌薬を検討します。ご家庭の人数や生活パターンによって最適なやり方が変わりますので、診察時に具体的にお伝えください。

Q. 兄弟やパパ・ママも一緒に検査・治療を受けたほうがいいですか?

赤ちゃんがいるご家庭、妊娠後期の方、保育や医療に関わるご家族などでは、予防的な抗菌薬の検討対象になります。ご家族全員の状況を伺った上でご提案しますので、診察時にお気軽にご相談ください。

Q. 咳がひどくて夜眠れません。家で楽にしてあげる方法はありますか?

お部屋の 加湿(湯気のこもった浴室で少し過ごす、洗濯物を室内に干す)、少量ずつのこまめな水分補給食事は少量を分けて などが負担を減らす助けになります。咳き込みが強い・呼吸の様子が気になるときは無理をせず、受診をご検討ください。

Q. 保育園・幼稚園・学校はいつから行けますか?

学校保健安全法上、特有の咳が消えるまで、または抗菌薬の治療を 5 日間完了するまで が出席停止の目安です。実際の登園・登校の再開時期は、お子さまの状態を診察で確認した上でご案内します。

Q. 咳がもう何週間も続いています。これって普通ですか?

百日咳の咳は、抗菌薬を飲み始めても 数週間から、ときに数ヶ月 続くことが知られています。少しずつ和らいでいくのが通常ですが、咳の様子が以前より強くなった・呼吸が苦しそう・水分が摂れないなど、変化が気になるときはご相談ください。

Q. 薬を飲み始めたのに咳が良くなりません。効いていないのでしょうか?

抗菌薬の主な目的は、他の人にうつす期間を短くすること です。咳そのものをすぐに止める効果は限定的で、薬を飲んでも咳がしばらく続くことは多くあります。経過が予想と違う・症状が重くなっているように感じる場合は、診察でご相談ください。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」というご判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、受診をご検討ください。


自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。百日咳をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2022 百日咳に関する追補版(2025 年 8 月). https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/2025/08/guide_bp_20250820.pdf (閲覧: 2026-06-02)
  2. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について(2025 年 3 月 29 日). https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250402_hyakunitizeki1.pdf (閲覧: 2026-06-02)
  3. 国立健康危機管理研究機構. 東京都の小児病院におけるマクロライド耐性百日咳菌感染症例の検出. IASR. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/IASR/Vol46/543/543p01.html (閲覧: 2026-06-02)
  4. 日本周産期・新生児医学会. 百日咳の流行とマクロライド耐性株への注意喚起(2025 年 5 月 9 日). https://www.jspnm.jp/uploads/files/memberinfo/hyaku202505.pdf (閲覧: 2026-06-02)
  5. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第15章 感染症 C.細菌感染症「百日咳」(印刷 p.353)
  6. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(感染症「百日咳」印刷 p.540)
  7. 国立健康危機管理研究機構. 感染症発生動向調査 週報(IDWR)速報データ「報告数・累積報告数、疾病・都道府県別」(2026 年第 34 週・2025 年第 34 週・2024 年第 52 週・2023 年第 52 週の各 CSV より集計). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/provisional/2026/34/2026-34-zensu.csv (閲覧: 2026-09-04)
  8. 国立健康危機管理研究機構. 百日咳 2025 年 11 月現在. IASR Vol.47 No.1 (No.551). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol47/551/551t.html (閲覧: 2026-09-04)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 4 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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