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伝染性単核球症(EB ウイルス感染症)

熱が下がりにくく、のどが強く痛んで首のリンパ節が腫れているお子さまをみていると、「ただの風邪と何が違うのだろう」と心配になりますよね。伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)は、EB ウイルスというありふれたウイルスにかかったときに、こうした症状が少し強めに出る病気です。「伝染性単核症」と書かれることもありますが、同じ病気です。小さなお子さまでは症状がほとんど出ないことが多く、多くは数週間で軽快します。当院では血液検査と腹部エコーを含めた診療を行い、運動再開や登校のタイミングまで一緒に伴走します。

💡 この記事の要点

  • EBウイルスによる感染症で、小さなお子さまでは症状がほとんど出ず多くは数週間で軽快します
  • 水分補給とのどに優しい食事を中心に、脾臓を守るため接触の強い運動は控えます
  • 抗生剤を飲んで発疹が出た場合も薬アレルギーとは限らないため診察時にお知らせください

どんな病気か

伝染性単核球症は、EB ウイルス(Epstein-Barr virus)に初めて感染したときに起こる、ウイルス性の感染症です。海外では「キス病(kissing disease)」という別名でも知られています。これは、ウイルスがおもに唾液を介してうつるためで、食器やコップ、タオルの共用などからも感染することがあります [1][2]。

潜伏期間(うつってから症状が出るまで)は 4〜6 週間と長く、いつ・誰からもらったか特定しにくいのが特徴です [1]。日本では成人の約 90% がこのウイルスにすでに感染しているといわれており、ご家族の多くもすでに感染して免疫を持っている可能性が高い、ありふれたウイルスです [1]。

学校保健安全法では「第三種その他の感染症」に分類され、出席停止期間は一律に決まっておらず、症状が改善するまで主治医と相談して判断します [4]。

お子さまの年齢で症状の出方が違います

  • 乳幼児(小さなお子さま): 症状がほとんど出ない(不顕性感染)か、軽い発熱・のどの赤み程度で済むことが多いです [1]。
  • 思春期以降のお子さま: 感染したうちの約半数で、発熱・のどの強い痛み・リンパ節の腫れといった典型的な症状が出ます [1]。

主な症状と気づきのポイント

「これは普通の風邪と違うかも?」と感じる代表的なサインは次のとおりです(思春期以降のお子さまで出やすい症状です)[1][2][5]。

  • 38〜39℃以上の発熱 が 1〜2 週間続くことがある
  • のどの強い痛み・扁桃腺の腫れ(白っぽい苔(こけ)のようなものが付くこともあります。溶連菌のときと似ています)
  • 首のリンパ節(ぐりぐり)が両側で腫れて、触ると痛い(後ろ側の首に多い)
  • 強い倦怠感(だるさ) が続き、回復まで数週間かかることがある
  • 脾臓(左わき腹の臓器)や肝臓が一時的に腫れる(脾臓は約半数、肝臓では血液検査で異常が出ることが多いとされています)[1]
  • 皮膚にぶつぶつ(発疹)が出ることがある(特に、扁桃炎と間違えてアンピシリン系の抗生剤を飲んだあと高い頻度で出やすい)[1][2]

「風邪と何が違うの?」という最初の疑問

風邪や普通の扁桃炎との一番の違いは、「発熱が長引く」「だるさがとても強く長く続く」「首のリンパ節がはっきり腫れる」「お腹(脾臓・肝臓)が腫れることがある」点です。1 週間たっても熱や強い倦怠感が続く場合や、首の腫れが目立つ場合は、別の病気の可能性も含めて一度ご相談ください。

なお、小さなお子さまではほとんど症状が出ないことも多いので、軽い風邪のように見えて気づかれずに治っているケースも珍しくありません [1]。

「キス病」という名前について

インターネットで調べると「キス病」という呼び名が先に出てきて、お子さま本人やご家族が戸惑われることがあります。診断を伝えたときに、思春期のお子さまが恥ずかしそうにしたり、口をつぐんでしまったりすることも少なくありません。その心配は不要です。

  • EB ウイルスは 唾液を介してうつるため、海外で「kissing disease(キス病)」という通称が付いただけで、キスでしかうつらない病気ではありません
  • 実際には、同じコップ・スプーン・ペットボトルの回し飲み、食べ物の取り分け、タオルの共用といった日常の接触で十分にうつります
  • 日本では 成人の約 90% がすでに EB ウイルスに感染しています。その多くは幼児期に、症状がほとんど出ないままもらったものです。つまり「いつどこでもらったか分からない」のがふつうです
  • 潜伏期間が 4〜6 週間と長いため、そもそも感染源をたどれないことがほとんどです

診断名を園や学校に伝えるとき、この通称が気になる場合は「EB ウイルス感染症」とお伝えいただいて構いません。診断書もその名称で発行できます。

紛らわしい病気(鑑別)

伝染性単核球症は、よく似た症状が出る別の病気と見分ける必要があります。当院では問診・診察・必要な検査を組み合わせて判断します [1][2]。

  • 溶連菌(ようれんきん)咽頭炎: のどの強い痛みや扁桃腺の白い苔の見え方が似ています。迅速検査で鑑別します。溶連菌と思って抗生剤(アンピシリン系)を出したあとに発疹が出た場合、実は伝染性単核球症だった、ということもあります。
  • サイトメガロウイルス感染症: 同じように発熱や倦怠感、肝機能の異常が出ることがあります。
  • アデノウイルス感染症: 高熱・のどの炎症が似ています。
  • 急性肝炎(A 型・B 型): 肝臓の数値が上がる点が共通します。
  • 川崎病: 高熱・首のリンパ節腫脹など一部の症状が重なるため、他の特徴的なサインの有無を診察で確認します。

当院での診断と治療

診断のために行う検査

医師が必要と判断した場合に、以下を組み合わせて評価します [1][2]。

  • 血液検査: ウイルスへの反応が表れる白血球の特徴的な姿(異型リンパ球の増加)、肝臓の数値(ALT, AST)、白血球の構成を確認します。
  • EB ウイルス抗体検査: 今かかったばかりの感染かどうかを血液で調べます。
  • 腹部エコー: 脾臓・肝臓の腫れの程度を確認します。運動再開の判断にも使います。
  • 溶連菌の迅速検査: 紛らわしい溶連菌咽頭炎との区別が必要なときに行います。

治療

ウイルスを直接やっつける特効薬はなく、症状をやわらげる対症療法(たいしょうりょうほう)が中心です [1][2]。

  • 解熱薬: アセトアミノフェン(カロナールなど)を使います。
  • 水分補給と安静
  • のどの痛みのケア

抗生剤について大切なこと

伝染性単核球症に抗生剤は効きません。とくに アンピシリン・アモキシシリンといったペニシリン系の抗生剤を飲むと、皮膚に発疹が出やすい ことが知られています [1][2][5]。他院で扁桃炎として抗生剤を処方されたあとに発疹が出た場合でも、必ずしも薬のアレルギーとは限らず、この病気の特徴的な反応であることが多いので、診察時にお知らせください。

脾臓を守るための運動制限

腫れている脾臓は、強い衝撃で傷つくことがあるため、激しい運動・接触の強いスポーツ(サッカー・バスケットボール・柔道・体当たり遊びなど)は 発症後 3〜4 週間 はお休みします。部活動も同じ考え方で、この期間は部活を休むか、見学・軽い自主練にとどめてください。その後も腹部エコーで脾臓の腫れが落ち着いたことを確認してから再開を判断します [1][2]。歩く・軽く遊ぶといった日常活動はかまいません。

当院で対応できること・連携すること

  • 臨床診断・血液検査・腹部エコーまで院内で対応します。
  • 対症療法と、運動・登校再開のタイミングをご家族と一緒に判断します。
  • 扁桃の強い腫れで息苦しさが出ているとき、強い貧血や出血傾向、脳に関わる症状など、入院や専門的治療が必要と判断した場合は、連携する高次医療機関へすぐにお繋ぎします。

家庭でできるケア

ご家庭では、お子さまの体力を回復させることと、脾臓を守ることがケアの中心になります [1][2]。

  • 水分をこまめに: のどが痛くて飲みにくいときは、一口ずつ・少量ずつでかまいません。経口補水液や薄めたスポーツドリンクも使えます。
  • のどに優しい食事: ゼリー、プリン、アイス、冷ましたうどん、おかゆ、茶わん蒸しなど、冷たくて柔らかいものが食べやすいです。固形が無理な日は、水分とゼリー類でしのいでも大丈夫です。
  • 解熱薬: 市販のものを使う場合はアセトアミノフェン(カロナールなど)を選びます。
  • 接触の強い運動は控える: 体育の見学・習い事(サッカー・柔道など)のお休み期間については、診察時に経過に合わせてご案内します。
  • タオル・コップ・歯ブラシは分ける: 唾液からうつるため、共用は避けます。
  • 無理せず段階的に: 倦怠感は数週〜数ヶ月続くことがあります。短時間登校や活動量を少しずつ戻すイメージで、無理をして体調を崩さないペースを大切にしてください。

ご家族への感染が心配な場合も、大人の多くはすでにこのウイルスに感染して免疫を持っているため、過度な隔離は必要ありません。食器・タオル・歯ブラシの共用を避ければ、同じ部屋で過ごすことに大きな問題はありません。

よくあるご質問

Q. 保育園・幼稚園・学校はいつから行けますか?

学校保健安全法では「第三種その他の感染症」に分類され、出席停止期間は一律には決められていません。熱が下がり、お子さまの元気が戻ってきたら、主治医と相談して登園・登校時期を判断します [4]。お子さまの状態に合わせて個別にご案内しますので、ご相談ください。

Q. 兄弟や家族にうつりますか? 家での感染対策はどこまで必要ですか?

唾液を介してうつるため、タオル・コップ・歯ブラシ・食器の共用は避けてください。一方で、大人の多くはすでにこのウイルスに感染して免疫を持っているといわれており、ご家族全員がそれを理由に発症することは多くありません [1]。マスクは必須ではなく、同じ部屋で過ごしても問題はないので、過度な隔離はせず、唾液が直接行き来する場面だけ気をつけていただければ十分です。

Q. 運動はいつから再開できますか? 体育やプール、習い事は?

脾臓が腫れている間は、サッカー・バスケットボール・柔道・体当たり遊びなど接触の強い運動は控えていただきます。発症後 3〜4 週間は接触の強いスポーツをお休みし、その後は腹部エコーで脾臓の腫れが落ち着いたかを確認したうえで再開を判断します [1][2]。歩く・軽く遊ぶ・教室での学習などは問題ありません。具体的に「この習い事はいつから」というご相談は、診察時に経過を見て個別にお伝えします。

Q. 抗生剤を飲んだら発疹が出ました。薬のアレルギーですか?

伝染性単核球症のお子さまにアンピシリン系・アモキシシリン系の抗生剤を投与すると、特徴的な発疹が出やすいことが知られています [1][2][5]。これは多くの場合、いわゆる薬のアレルギーとは別の反応で、将来同じ系統のお薬が一切使えなくなるとは限りません。ただし、次に医療機関にかかるときに「この時に発疹が出た」という情報は必ず伝えていただけると、より安全な処方につながります。判断に迷うときは当院にご相談ください。

Q. 倦怠感がなかなか取れません。学校にどう戻したらよいですか?

倦怠感が数週〜数ヶ月残ることは、この病気では珍しくありません [1][2]。無理をしてすぐに元の生活量に戻すと長引かせてしまうことがあるので、短時間登校や活動量を少しずつ増やすイメージでゆっくり戻していくのが基本です。学校への配慮のお願いが必要な場合は、当院でご相談に乗ります。

Q. 「キス病」と言われました。うつる原因はキスだけですか?

いいえ。EB ウイルスは唾液でうつるため通称が付いただけで、コップやスプーンの共用、回し飲み、食べ物の取り分け、タオルの共用といった日常の接触でうつります。日本では成人の約 90% がすでに感染していて、その多くは幼児期に症状のないままもらったものです。潜伏期間も 4〜6 週間と長いため、どこでもらったかは、たいてい分かりません。ご本人が気にされている場合は、この点をぜひ伝えてあげてください。

Q. 部活はいつから戻れますか?

脾臓が腫れている間は、体当たりのあるスポーツで脾臓を傷つけるおそれがあるため、発症後 3〜4 週間は部活をお休みするか、見学・軽い自主練にとどめます。その後、腹部エコーで脾臓の腫れが落ち着いたことを確認してから再開を判断します。吹奏楽や文化部など、腹圧が強くかからない活動は早めに戻れることもありますので、診察時にご相談ください。

Q. EB ウイルスは一生体に残ると聞きました。将来悪い病気になりませんか?

EB ウイルスは感染後、体の中に静かに居続けるウイルスです [1]。ただし、これは大人の多くにあてはまる普通の状態で、健康に育っていくお子さまでほとんど問題が起こらないこともわかっています。慢性活動性 EB ウイルス感染症や、ごく一部のリンパ系の病気との関連が知られていますが、これらは非常にまれな別の病気で、伝染性単核球症の通常の経過とは区別して考えていただいて大丈夫です [3]。気になる症状が続く場合は、ご相談ください。

症状についてのご相談

気になる症状があれば、一人で抱え込まず一緒に考えさせてください。「この症状で受診したほうがよいか」「いつ受診すべきか」というご判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内しています。受診をご検討ください。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。伝染性単核球症(EB ウイルス感染症)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. MSD マニュアル家庭版. 伝染性単核球症. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/16-%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E4%BC%9D%E6%9F%93%E6%80%A7%E5%8D%98%E6%A0%B8%E7%90%83%E7%97%87 (2026-06-02 閲覧)
  2. 日本臨床内科医会. 伝染性単核球症 — 症状、診断・治療方針(J-POC データベース). https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=156 (2026-06-02 閲覧)
  3. 大阪母子医療センター 血液腫瘍科. 慢性活動性 EB ウイルス感染症の治療. https://www.wch.opho.jp/hospital/department/ketuekishuyouka/ketuekishuyouka01.html (2026-06-02 閲覧)
  4. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説 2025 年 4 月改訂版. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250430_yobo_kansensho.pdf (2026-06-02 閲覧)
  5. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第15章 感染症 B.ウイルス感染症「EB ウイルス感染症(伝染性単核球症)」(印刷 p.332-333)
  6. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(感染症「伝染性単核〔球〕症」印刷 p.512)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 8 月 28 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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