伝染性膿痂疹(とびひ)
とびひは、皮膚にいる細菌が原因で、水ぶくれやかさぶたが「飛び火」のように広がる、子どもにとても多い夏の皮膚の病気です。アトピーや虫さされ、湿疹などで皮膚のバリアが弱くなっている部分から始まりやすく、掻いた手で別の場所やきょうだいにうつることもあります。多くは外用薬や飲み薬で 1〜2 週間ほどで落ち着く病気なので、気づいたら早めにご相談ください。
💡 この記事の要点
- 皮膚のバリアが弱い部分から始まる細菌感染で、多くは外用薬や飲み薬で1〜2週間ほどで落ち着きます
- シャワーでやさしく洗い軟膏を塗って覆う、爪を短く切るなどのケアが基本です
- 尿の色が濃くなる、むくみが出るなどのサインがあれば早めにご相談ください
どんな病気か
とびひは「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」というお名前の、子どもの皮膚に細菌がうつる感染症です。原因となる細菌は主に 2 種類あり、皮膚にいる細菌(黄色ブドウ球菌)と、のどなどによくいる細菌(A 群溶連菌)が知られています。
とびひには 2 つのタイプがあり、原因の細菌も、なりやすい年齢も違います。
| 水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん) =水ぶくれタイプ |
痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん) =かさぶたタイプ |
|
|---|---|---|
| 原因の細菌 | 黄色ブドウ球菌 | A 群溶連菌(黄色ブドウ球菌との混合が多い) |
| なりやすい年齢 | 乳幼児〜小学生(子どものとびひの多く) | 年長児・大人 |
| 季節 | 夏に多い | 季節を問わない |
| 見た目 | やわらかい水ぶくれ → 破れてジュクジュク → うすいかさぶた | 厚い黄色〜茶色のかさぶた |
| 全身の症状 | 通常は目立たない | 熱・リンパ節の腫れを伴いやすい |
子どもに多いのは水疱性(水ぶくれタイプ)です。かさぶたタイプは年長のお子さんや大人にみられ、熱や首・わきのリンパ節の腫れを伴うことがあります。
掻いた手で別の場所を触ることでぶつぶつが「飛び火」のように広がり、保育園・幼稚園や家族の中で集団発生することもあります。
多くは「虫刺され」「あせも」「湿疹」から始まります
とびひは、皮膚のバリアがこわれているところから始まります。もっとも多いきっかけが次の 4 つです。
- 虫刺され(蚊に刺されたあと) — 掻きこわしたところに細菌が入ります。夏にとびひが増えるいちばんの理由です
- あせも
- 湿疹・アトピー性皮膚炎 — もともと荒れている部分から広がります
- すり傷・転んだあとの傷
つまり、虫刺されを掻かせない・早めに治すことが、そのままとびひの予防になります。蚊に刺されたところが赤くジュクジュクしてきた、かさぶたが広がってきた、というときはとびひを疑ってください。
また、鼻の穴のまわりや耳の周囲に広がることがよくあります。お子さまが自分で触りやすい場所であること、鼻の中に細菌がいることが理由です。
主な症状と気づきのポイント
「これってとびひ?」と思ったら、次のような特徴がないか見てみてください。
- 顔まわり・手足・体に、ぷよっとした水ぶくれができている
- 水ぶくれが破れて、ジュクジュクと汁が出ている/うすいかさぶたになっている
- 痒くて掻いてしまい、その手で触った別の場所にも広がっている
- 鼻のまわりや口元から始まることが多い
- アトピー・湿疹・虫さされ・あせもなど、もともと皮膚が荒れていた場所から出ている
年長のお子さんで、厚い黄色〜茶色のかさぶたができ、熱・首やわきのリンパ節の腫れ・元気のなさを伴う場合は、かさぶたタイプの可能性があります。広がりが早かったり、お子さんが不機嫌な場合は早めにご相談ください。
なお、見た目だけで他の皮膚トラブルと区別するのは保護者の方には難しいので、判断に迷うときは無理に決めず、診察にお越しいただくのが安心です。
紛らわしい病気(鑑別)
見た目がとびひに似ていて区別が必要な代表的な病気には、次のようなものがあります。最終的な見分けは診察で行います。
- アトピー性皮膚炎が悪くなって細菌がついた状態 — 元々の湿疹のある部分でジュクジュクが強くなることがあります
- 水ぼうそう(水痘) — 体じゅうに赤いブツブツ→水ぶくれ→かさぶたが同時に混ざって現れ、強い痒みと発熱を伴うのが特徴です
- 口唇ヘルペスなどの単純ヘルペス — 小さな水ぶくれが集まって出て、同じ場所に繰り返しできる傾向があります
- 水いぼ(伝染性軟属腫) — 中心がへこんだ、つるんとした白っぽいできもの。痒みやジュクジュクは目立ちません
- かぶれ(接触皮膚炎) — 何かに触れた部分にだけ赤みや水ぶくれが出ます
「とびひかな、それとも別の発疹かな?」と判断に迷う場合は、写真を撮ってお越しいただくと診察の参考になります。
当院での診断と治療
当院では、皮膚の見た目と広がり方を診察し、必要に応じて細菌の検査を行ったうえで、お子さんの状態に合わせて治療をご提案します。
- 軽い場合・狭い範囲: 抗菌薬の塗り薬(軟膏)でケアします。皮膚を清潔に保つことも大切です
- 広がりが大きい場合・熱がある場合: 飲み薬の抗菌薬を併用します
- 薬が効きにくい場合・繰り返す場合: どの細菌が原因でどの薬が効くかを調べる検査(細菌培養と薬剤感受性検査)を行うことがあります
- かさぶたタイプで重い場合: 治った後、数週間してから尿の検査をお勧めすることがあります(後述)
近年は塗り薬への耐性菌(薬が効きにくい細菌)が増えてきているため、自己判断で同じ軟膏を繰り返し使うのではなく、効きが悪いときは早めに医師にご相談いただくことをお勧めしています。広範囲・難治例・耐性菌が疑われる場合は、皮膚科の先生との連携もご提案します。
ごく稀ですが大切なこと(腎臓の検査について)
かさぶたタイプのとびひでは、ごく稀に治った後 3〜6 週間ほど(平均 3 週間前後)してから腎臓に炎症(急性糸球体腎炎)が起きることがあります(皮膚の感染では、のどの感染のとき[1〜2 週間後]より遅れて起こります)。頻度は高くありませんが、ご家庭で次のサインに気づいたら早めにご相談ください。
- 尿の色がコーラのように濃い色になる
- まぶたや顔がむくんでいる
- 尿の量が急に減る
- 機嫌が悪くぐったりしている
必要に応じて尿検査でフォローをお勧めしますので、診察時にご案内します。
家庭でできるケア
ご家庭で気をつけていただきたいポイントをまとめます。今日からそのまま実践できる順序でお伝えします。
毎日のスキンケア・お風呂
- 湯船よりシャワーで、石けんをよく泡立てて、こすらずやさしく洗う(ナイロンタオルは使わない)
- 洗ったあとは清潔なタオルでおさえ、処方された軟膏を塗り、ガーゼや絆創膏で覆う
- きょうだいがいる場合は、お子さんは最後に入る/湯船は一緒にしないようにすると安心です
- タオル・バスタオル・枕カバー・シーツはできるだけ分けて使う
掻かない・広げない工夫
- 爪を短く切る
- 寝ているあいだに掻きむしってしまうお子さんには、長袖の寝間着・薄手のミトンなどで物理的に守る
- 触ったあとは手洗いを徹底(お子さんも保護者も)
お薬の使い方
- 塗り薬は清潔にしてから塗り、ガーゼで覆うのが基本です
- 飲み薬・塗り薬は、見た目が治ったように見えても処方された期間は最後まで使い切ってください
- 軟膏でかぶれた/飲み薬で下痢などの不調が出たときは、自己判断で中止せず、まずはご連絡ください
きょうだい・園・プールについて
- きょうだいに湿疹・アトピー・虫さされがあるとうつりやすいので、そちらのスキンケアも一緒に整えてあげると予防になります
- 保育園・幼稚園・学校は、患部をガーゼや絆創膏でしっかり覆え、ジュクジュクが他のお子さんにつかない状態なら通えることが多いです。広い範囲に出ている、汁が多い場合は、お休みをお願いすることがあります(出典 3 の現行運用に基づく)
- プール・水遊びは、患部がある間はお休みしてください。治って覆いが不要になってから再開します
再発を防ぐために
とびひは「皮膚のバリアが弱くなった部分」から始まりやすい病気です。毎日の保湿・湿疹のケア・虫さされへの早めの対応が、そのまま再発予防になります。アトピーや湿疹があるお子さんは、ふだんのスキンケアを大切にしてあげてください。
よくあるご質問
Q. お風呂はどうしたらいいですか? きょうだいと一緒に入っても大丈夫?
シャワーで石けんをよく泡立て、こすらずやさしく洗ってしっかりすすぐのがお勧めです。湯船はお子さんが最後に入る/きょうだいと同時には入らないようにすると、感染予防になります。タオルも分けてください。
Q. 保育園・幼稚園はいつから通えますか?
患部をガーゼや絆創膏で覆え、ジュクジュクが他のお子さんに付かない状態であれば、通えることが多いです。広範囲・汁が多い場合は休んでいただくこともあります。園ごとの規定もあるので、状態に迷ったらご相談ください。
Q. きょうだいや家族にうつりますか? 何に気をつければ?
うつる病気です。タオル・衣類・寝具を分け、患部を覆い、触ったら手洗いを徹底してください。きょうだいに湿疹・虫さされがあるとうつりやすいので、そちらのスキンケアも合わせて。
Q. プールには入れますか?
患部がある間はお休みしてください。治って覆いが不要になってから再開します。
Q. 軟膏はいつ・どうやって塗ればいいですか?
シャワーで清潔にしてから塗り、ガーゼ等で覆うのが基本です。見た目が治ったように見えても、処方された期間は最後まで続けてください。
Q. アトピーや湿疹がある子は予防できますか?
皮膚のバリアを保つ毎日の保湿・湿疹のケアが、そのまま予防になります。虫さされ・あせもも早めに対処してあげてください。
Q. 跡は残りますか?
多くの場合、跡を残さずに治ります。ただし掻きこわして深くなった部分は、しばらく色が残ることがあります(時間をかけて薄くなっていきます)。跡を残さないためにも、掻かせない工夫と、早めの治療が役に立ちます。
Q. 大人にもうつりますか?
うつります。とびひは接触でうつる病気なので、看病するご家族にも起こりえます。とくにかさぶたタイプ(痂皮性膿痂疹)は年長児・大人にもみられます。患部に触れたら手を洗う、タオルを分ける、といった対策をお願いします。当院ではお子さまと同じ症状であれば、保護者の方もあわせて診察できます。
Q. うつってから何日で出てきますか?
数日〜10 日ほどで出てくることが多いとされますが、はっきりしないことも少なくありません。すでに皮膚に傷や湿疹があると、そこから短期間で広がることがあります。
Q. 広い範囲が赤くなって皮がむけてきました。
水ぶくれタイプの原因菌がつくる毒素が広く働くと、全身の皮膚が浅くむける状態(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)を起こすことがまれにあります。3 歳以下に多く、広い範囲の赤み・皮むけ・発熱を伴います。この場合は早めの受診が必要です。
Q. 薬を飲み終わったのに、また出てきました。受診すべき?
はい、再発・繰り返しがある場合は、原因菌と効く薬を調べ直すことがあります。お気軽にご相談ください。
症状についてのご相談
「この症状で受診すべき?」「うちの子の発疹はとびひ?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。一人で抱え込まず、気になる症状があれば受診をご検討ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。伝染性膿痂疹(とびひ)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
現行の日本皮膚科学会・日本小児皮膚科学会・日本小児科学会のガイドラインおよび解説と、小児科の標準教科書に基づいて作成しています。
- 日本医事新報社『伝染性膿痂疹(とびひ)[私の治療]』(日本皮膚科学会 皮膚科診療ガイドラインに準拠). https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=22050 (参照: 2026-06-02)
- 日本小児皮膚科学会『とびひ Q&A』. https://jspd.umin.jp/qa/02_tobihi.html (参照: 2026-06-02)
- 内山聖 編『標準小児科学 第8版』医学書院, 2013.(第15章 感染症 C.細菌感染症)
- 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会『学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説 2025 年 4 月改訂版』. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250430_yobo_kansensho.pdf (参照: 2026-06-02)
- 立川病院『健康コラム — とびひ』. https://tachikawa-hosp.kkr.or.jp/health-column/cat99/impetigo.html (参照: 2026-06-02)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(感染症「伝染性膿痂疹(とびひ)」印刷 p.530)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 8 月 26 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。