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小児てんかん

お子さまにけいれんや「数秒ぼーっとして反応がない」といった症状があると、保護者の方は大きな不安を感じられると思います。小児てんかんは、きっかけが無いのにけいれんや短い意識消失がくり返し起きる脳の病気で、適切な診断と治療で多くのお子さまが発作をコントロールできます。このページでは「どんな病気なのか」「家庭でできること」「当院でできること」を、保護者の方の目線で整理しました。

💡 この記事の要点

  • けいれんや意識消失がくり返し起きる脳の病気で、多くは薬で発作をコントロールできます
  • 発作時は周りの物を離し横向きにし、時間を計り可能なら動画を撮ります
  • 5分以上続く・意識が戻らないうちに次の発作・呼吸が止まる時は119番へ

どんな病気か

てんかんは、熱や強い刺激などのきっかけが無いのに、けいれんや短い意識消失といった「発作」がくり返し起きる脳の病気です。脳の神経細胞が一時的に過剰に活動することで起こります。

  • 小児期に発症するケースが多く、年齢ごとに特徴のある「症候群」がいくつも知られています。
  • 国内の有病率は人口の約 0.7〜1% と報告されています。
  • 多くのお子さまは、お子さまに合った薬を続けることで発作をコントロールできます。医学的にも、薬物療法で全体のおよそ 6〜7 割以上のお子さまで発作の完全なコントロールが期待できると報告されています。
  • 一部の症候群(夜中の顔のひきつりが中心となるローランドてんかんや、数秒ぼーっとする小児欠神てんかんなど)は特に予後が良好で、思春期までに自然に治まるタイプもあります。

原因の考え方(現行ガイドライン 2018 に基づく分類)

国際分類(ILAE 2017)では、てんかんの原因を次の 6 つに分けて考えます。

  • 素因性(生まれつきの体質的なもの)
  • 構造的(脳の構造の変化があるもの)
  • 感染性
  • 代謝性
  • 免疫性
  • 不明(原因がはっきりしないもの)

小児では原因がはっきりしないタイプも約半数を占めると報告されています。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子のあの様子は、てんかんなのか別の何かなのか?」というのが、保護者の方が最初に抱く疑問だと思います。小児のてんかんでは、次のような症状で気づかれることが多いです。

大きく分けて 2 つの発作タイプ

  • 脳の一部分から始まる発作(焦点発作。旧称:部分発作)
    • 体の一部だけがピクついたり、突然動きが止まったり、意識が薄れたりする。
    • 最初は体の一部から始まり、その後全身のけいれんに広がることもあります(旧称:二次性全般化)。
  • 脳全体から一斉に始まる発作(全般発作)
    • 強直間代発作:体が突っ張った後にガクガク震える、いわゆる「大きなけいれん」。
    • 欠神発作:数秒〜十数秒、ぼーっとして呼びかけても反応がない。
    • ミオクロニー発作:体や手足がピクッと一瞬だけ跳ねる。
    • 脱力発作:急に力が抜けて崩れ落ちる。

学校や家庭で気づかれやすいサイン

  • 授業中や食事中に急に手が止まり、数秒ぼーっとする(欠神発作。学校で担任の先生から指摘されることもあります)。
  • 寝入りばなや起床時に体や手足がピクッと跳ねる動きをくり返す。
  • 睡眠中に片側の顔のひきつりやよだれ、しゃべりにくさが出る(ローランドてんかんに特徴的)。
  • 乳児(4〜12 か月頃)で、起きた時に体をピクッと折り曲げる短い動作をくり返す(点頭てんかん/West 症候群。早期の小児神経専門医受診が大切です)。

くり返すかどうかが大きな手がかり

てんかんは「1 回限り」ではなく「くり返し起きる」ことが診断の基本です。1 回だけのけいれんではてんかんと診断されないことも多く、別の原因(熱性けいれん・失神など)の可能性もあります。動画で記録できると診察にとても役立ちます。

紛らわしい病気(鑑別)

てんかんに似ているけれど別の病気・別の現象であるものがいくつもあります。代表的なものを保護者の方の目線で整理します。

  • 熱性けいれん:発熱がきっかけで起きるけいれん。多くは 5 歳までに自然に卒業します。きっかけ(熱)がある点がてんかんと大きく違います。
  • 失神(立ちくらみによる一時的な意識消失):朝礼で立っていて倒れる、長湯のあとに倒れる、など。倒れた直後にすぐ回復するのが典型です。
  • チック・不随意運動:本人の意思とは関係なく、まばたきや肩の動きをくり返す。意識ははっきりしています。
  • 夜驚症・夢遊病など(睡眠中の現象):睡眠中に泣き叫んだり歩き回ったりしますが、てんかん発作とは仕組みが異なります。
  • 心理的な要因による発作のような症状:脳の電気的な異常は無いものの、強いストレスから発作のような症状が出ることがあります。

「うちの子のあれはどれか」を見分けるのは保護者の方だけでは難しいため、迷ったら一度ご相談いただくのが安心です。

当院での診断と治療

検査と診断

詳しい問診(いつ・どんなふうに・どれくらい続いたか・前後の様子)と、可能であれば発作中の動画がもっとも大切な情報になります。当院では、これらをもとに どの検査が・どのタイミングで必要か を判断し、理由をお伝えしたうえで検査の手配・ご紹介を行います。

  • 血液検査:代謝の異常や別の病気の可能性を調べます。当院で対応します
  • 脳波検査:頭に電極をつけて脳の電気的なはたらきを記録する検査で、痛みはありません当院では行えないため、必要と判断した場合は連携医療機関へご紹介します。
  • 頭部 MRI:脳の構造に変化が無いかを確認する検査です。こちらも当院では行えないため、専門医療機関でお受けいただきます。
  • 長時間ビデオ脳波モニタリング遺伝子検査は、必要時に専門医療機関で行います。

治療の考え方

新規にてんかんが疑われる場合、診断確定と治療開始は小児神経専門医・てんかん専門医のいる医療機関で行うのが原則です。発作の型・症候群によって選ぶべき薬が異なるため、専門医がお子さまに合った薬を選びます。

  • 慢性管理:発作の型に応じた抗てんかん薬を毎日決まった時間に服用します。
  • 思春期以降に妊娠の可能性があるお子さまへバルプロ酸を新たに始める場合は、児への影響が報告されているため、他の薬で代替できるかを専門医と十分に相談することが推奨されています(PMDA・ガイドライン 2018 追補に基づく方針)。
  • 難治例(複数の薬で十分に発作が抑えられないタイプ):複数薬剤の併用、ケトン食療法(脂肪を多く糖質を極端に減らす特別な食事)、迷走神経刺激術(首の神経に電気刺激を送る装置)、てんかん外科などの選択肢が専門医療機関で検討されます。近年は新しい薬の選択肢も少しずつ広がっています。

当院の役割

当院は、お子さまにとって最初の窓口であり、長くお付き合いする「かかりつけ」としての役割を担います。

  • 初めてのけいれん・気になる発作の初期評価:問診・動画確認・必要な検査の手配を行います。
  • 専門医療機関への紹介:新規診断・治療開始は、小児神経専門医・てんかん専門医のいる医療機関へお繋ぎします。
  • 安定期のフォローアップ:専門医の方針に沿って、抗てんかん薬の処方継続・副作用のチェック・成長や生活面のご相談に対応します。
  • 学校・保育園向けの診断書・生活管理指導表の作成。

初めてのけいれんが起きた場合は、当日中に小児科または救急医療機関を受診することが安心です。判断に迷う際は 受診をご検討ください。

家庭でできるケア

発作が起きた時の手順(落ち着いてこの順番で)

パニックになって当然の場面ですが、できる範囲で次の順番を意識してみてください。

  1. 周りの硬いものを離す(机の角・おもちゃなど)。お子さまを無理に押さえつけない。
  2. 体を横向きにして、よだれや吐いたものが気道に入らないようにする。
  3. 時計やスマホで発作の始まった時刻と続いている時間を計る
  4. 余裕があればスマホで発作の様子を動画に撮る(診察でもっとも参考になります)。
  5. 5 分以上続く、または意識が戻らないうちに次の発作が起きた呼吸が止まっている・唇や顔色が紫色になっているときはためらわずに 119 番

すでに医師から頓用の坐剤(ジアゼパムなど)が処方されているお子さまは、医師の指示通りに使ってください(医師から指示のないご家庭では使用しません)。

やってはいけないこと

  • 口の中に箸・タオル・指などを入れる(昔ながらの「舌を噛まないように」は誤解です。窒息や歯の損傷の方が危険で、現在は推奨されていません)。
  • けいれんしている体を強く押さえつける。
  • 発作直後に水や薬を無理に飲ませる。

発作後の様子

発作が止まったら、意識がはっきり戻るまで横向きで静かに見守ってください。発作後はしばらく眠ったり、ぼんやりしたりすることがあります。発作の後に一時的に体の一部が動かしにくくなることもあります(発作後の一過性の現象です)。落ち着いてから、診察のために発作の様子を整理してメモしておくと役立ちます。

発作日誌に記録したいこと

診察のとき、次のような情報があるととても助かります。

  • 発作のあった日時・続いた秒数(分数)
  • 体のどこがどう動いたか(片側か全身か、ピクピクか突っ張りか、など)
  • 意識があったかどうか
  • 直前の睡眠時間・食事・体調・体温
  • 動画があれば一番分かりやすい

平時に気をつけたいこと

  • 抗てんかん薬は毎日決まった時間に自己中断は最も発作再燃のリスクが高いことが知られています(飲み忘れに気づいた時の対応や、嘔吐してしまった時の対応は主治医に確認しておくと安心です)。
  • 十分な睡眠を確保する。極端な睡眠不足は発作の誘因になります。
  • 服薬手帳・発作日誌を活用する。
  • 入浴は年少のお子さまでは大人が必ず一緒に。年齢が上がっても、発作のコントロールが安定するまでは一人にしない方が安心です。
  • 運動・水泳・自転車は、症候群と発作のコントロール状況によって個別に判断します。医学的にも運動そのものを一律に制限する必要はないとされ、チームスポーツや体操などにはむしろ積極的に参加させてよいと考えられています。ただし発作が十分に抑えられていない時期は、高い所への登はん・付き添いのない水泳・交通量の多い場所での自転車は避けます。生活を必要以上に狭めないことを大切に、主治医と一緒に決めていきましょう。
  • 予防接種は基本的に受けられます。一般に1 年以上発作が抑えられていれば、主治医の判断のもとで個別に接種を進められます。接種の可否やタイミングは主治医にご相談ください。
  • 学校・保育園には発作の型・頓用薬の有無・発作時の対応手順を共有します。当院で生活管理指導表・診断書を作成できます。
  • ご家族(兄弟姉妹を含む)で発作時の対応を共有しておくと、誰が居合わせても落ち着いて行動できます。

よくあるご質問

Q. 発作中、舌を噛まないように口に何か入れた方がいいですか?

入れないでください。窒息や歯の損傷の方が危険です。横向きにして安全を確保することを優先してください。

Q. 1 回だけけいれんがあった場合、必ずてんかんですか?

いいえ、1 回だけではてんかんと診断されないことが多いです。熱性けいれんや別の原因の可能性もあります。診察と検査で見極めますので、まずは落ち着いてご相談ください。

Q. 発作の時、何を記録しておくと診察に役立ちますか?

時刻・続いた時間・体のどこがどう動いたか・意識の有無・前後の様子・直前の睡眠や食事・体温などです。動画があれば最も参考になります

Q. 保育園・幼稚園・学校に、どこまで伝えるべきですか?

発作の型・頓用薬の有無・発作時の対応手順を共有することをおすすめします。診断書・生活管理指導表は当院で作成できます。

Q. 兄弟やこれから生まれる弟妹も、同じ病気になりますか?

症候群によって遺伝の関わり方は異なり、多くは遺伝しないか、関わりは限定的です。気になる場合は受診時にご相談ください。

Q. 薬はいつまで続けるのですか?将来やめられますか?

発作が一定期間(一般に 2〜3 年)出ていない・脳波が改善しているなどの条件で、減薬・中止を主治医と検討します。自己判断での中断は厳禁で、必ず主治医と相談しながら進めます。

Q. 運動・プール・自転車は禁止ですか?

症候群と発作のコントロール状況によって個別に判断します。水泳は付き添い必須、自転車はヘルメット推奨など、生活を必要以上に狭めない方針で一緒に考えていきます。

症状についてのご相談

一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。お子さまの様子をお聞きしたうえで、必要な受診のタイミングや専門医療機関への紹介などを個別にご案内します。

すでに発作が5 分以上続いている・意識が戻らない・呼吸が止まっているといった緊急時は、まず 119 番通報をお願いいたします。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。小児てんかんをはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本神経学会. てんかん診療ガイドライン 2018. Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00446/ (参照 2026-06-02)
  2. 日本神経学会. てんかん診療ガイドライン 2018 追補版(2022). https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_tuiho_2018_ver2022.html (参照 2026-06-02)
  3. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第22章 神経疾患 B.けいれん性疾患「てんかん」(印刷 p.629-633)
  4. エキスパートナースweb. てんかん診療ガイドライン 2018 のポイント. https://expertnurse.jp/articles/id=8833 (参照 2026-06-02)
  5. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(神経「てんかん」印刷 p.604-615)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 10 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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