熱性けいれん(熱性発作)
お子さまが急にけいれんを起こすと、誰でも頭が真っ白になります。熱性けいれんは生後 6 ヶ月から 5 歳ごろまでのお子さまの 7〜9% が経験するとても身近な症状で、その多くは数分以内に自然に止まり、後に残るものはありません。このページでは、保護者の方が「いま何をすればいいのか」「これからどう備えればいいのか」を落ち着いて確認できるよう、現行の診療ガイドライン(2023 年版)に沿って整理しました。
💡 この記事の要点
- 発熱時に起こる身近なけいれんで、多くは数分以内に自然に止まり、約 9 割が 10 分以内に収まります。
- 体を横向きに寝かせ、口に物を入れず、時間を計りながらスマホで動画を撮って様子を記録しましょう。
- けいれんが 5 分以上続く・意識が戻らないまま発作を繰り返す・唇が紫色になるときは 119 番(迷うときは #8000)へ。
「熱性痙攣」「熱痙攣」との違い
「熱性けいれん」と「熱性痙攣」は同じものです。ひらがなと漢字の書き方が違うだけで、指している病気は変わりません。医療機関では読みやすさから「けいれん」とひらがなで書くことが多く、この記事もそれに合わせています。
紛らわしいのが「熱痙攣(ねつけいれん)」で、こちらは別のものです。暑い環境で大量に汗をかいたときに、塩分が不足して足やお腹の筋肉がつる状態を指します(熱中症の一種)。発熱に伴って全身がひきつける熱性けいれんとは、原因も対応もまったく違います。
どんな病気か
熱性けいれん(最近は「熱性発作」とも呼ばれます)は、生後 6 ヶ月〜5 歳ごろのお子さまが発熱(おおむね 38℃ 以上)したときに起こるけいれん のことを指します。髄膜炎などの脳の病気や、てんかんなど他にはっきりした原因がない場合にこう呼びます。
- 発症のピークは 1 歳代 で、初めて起こすお子さまの約 8 割が 3 歳までに経験するとされます
- ご家族(特にご両親)に熱性けいれんの経験がある場合、お子さまにも起こりやすい傾向があります
- 突発性発疹やインフルエンザなど、急に熱が上がる感染症のときに 最も起こりやすい ことが知られています
- 解熱薬を使っても熱性けいれん自体は予防できません(お子さまが楽になる目的での使用は問題ありません)
主な症状と気づきのポイント
熱性けいれんの「典型的なかたち」は次のような様子です。発作の多くは数分以内に自然に止まり、約 9 割が 10 分以内 に収まります。
- 体がピンと突っ張ったあと、手足がガクガクとリズミカルに揺れる(医学的には「全身性の強直間代性発作」と呼びます)
- 目が上を向いたり、一点を見つめたまま動かない
- 呼びかけても反応しない
- 顔色が悪くなったり、唇が紫色になることがある
- 発作のあとは、ぐったりして眠ってしまったり、しばらくぼんやりすることがあります(多くは自然に回復します)
けいれんの 時間・体の動き方(左右どちらか or 全身か)・目の向き・意識の戻り方 は、後で医師が診断するときの大切な手がかりです。可能であれば スマホで動画を撮影 すると、時間と様子を同時に記録できます。撮れなくても、覚えている範囲で構いません。
医学的には、発作の様子によって「単純型」(短く一回で終わる、多くはこちら)と「複雑型」(時間が長い・繰り返す・体の一部だけが動くなど)に分けられます。判断は医師が行うため、ご家庭で分類を気にされる必要はありません。
紛らわしい病気(鑑別)
「けいれんに見えるけれど、別の状態」ということもあります。受診時に医師がこれらを区別します。
- 熱がないときのけいれん — てんかんなど、別の原因を考える必要があります
- 髄膜炎・脳炎などの脳の感染症 — 発熱に加えて、ぐったりが続く・嘔吐を繰り返す・けいれんの後も意識がはっきりしない場合に疑います
- 悪寒戦慄(おかんせんりつ) — 熱が上がるときの寒気でブルブル震える状態。意識ははっきりしている点がけいれんとの違いです
- 失神(一時的に意識が遠のく) — 体が一瞬カクッとなることがあり、けいれんと見間違えることがあります
- 代謝の異常(低血糖など) — まれですが、血液検査で確認します
当院での診断と治療
当院では、初めての熱性けいれんの評価から、再発を繰り返すお子さまのフォローまで対応します。
- 初めての発作のとき — 発作の様子や経過をお伺いし、ガイドラインに沿って必要な検査(血液検査・必要に応じて髄液検査など)を判断します
- 複雑型・繰り返すお子さま — 脳波検査や、必要に応じて頭部 MRI などを専門医療機関と連携して検討します
- ジアゼパム坐剤(いわゆる「ダイアップ」)の処方 — 15 分以上続く長い発作を起こしたことがある、短い期間に発作を繰り返している など、一定の条件を満たすお子さまには、発熱時にけいれんを予防する坐薬の処方を検討します。処方の適応や具体的な使い方(タイミング・量・回数)は、お子さまの発作の状況に応じて医師から個別に詳しくご説明します
- 解熱薬 — お子さまが楽になる目的での使用は可能です。アセトアミノフェンを基本とし、ライ症候群のリスクから一部の市販解熱薬(NSAIDs 系)は避けます
- 専門医療機関へのご紹介 — けいれんが 30 分以上続いた既往(重積)、繰り返す複雑型、発達面で気になる点があるお子さま、生後 12 ヶ月未満での初発などは、小児神経の専門医療機関と連携してご紹介します
家庭でできるケア
けいれんが起きてしまったとき
慌ててしまうのは当然です。覚えておいていただきたいのは、次のシンプルな点だけです。
- 平らで安全な場所に寝かせ、体を横向きにする(嘔吐したものが気管に入って窒息するのを防ぐためです)
- 衣服の首まわりをゆるめる
- 口の中に物(指・タオル・スプーンなど)を入れない(窒息のリスクの方がはるかに大きく、舌をかんで大けがをすることはまれです)
- 時間を測る(スマホで動画を撮影すると、時間も同時に記録できます)
- 可能なら動画を撮る(顔と全身が映る角度で。間に合わなければ、覚えている範囲をあとで医師にお伝えいただければ大丈夫です)
- 5 分以上続く/意識が戻らないうちに次の発作が起きた/呼吸が止まっている・唇や顔色が紫色になっている ときは、ためらわずに 119 番 に通報してください
- 発作が止まったあとに、しばらくぼんやり眠ってしまうのはよくある経過 です。ただし、なかなか目を覚まさない・呼吸の様子が普段と違うなど気になる場合は、すみやかに受診してください
普段からの備え
- 体温計・スマホ(充電)・かかりつけの連絡先メモ・マイナ保険証(または資格確認書)の場所 を、ご家族で共有しておきましょう
- ジアゼパム坐剤を処方されている場合は、保管場所と使い方を改めてご確認ください
- ご兄弟がいるご家庭では、「片方が発作のときにもう一人をどう見守るか」を事前に話し合っておくと安心です
- 保育園・幼稚園や祖父母など、お子さまをお預けする先にも、発作時の対応(横向き・口に物を入れない・時間を測る・動画)を共有しておくと、いざという時に落ち着いて対応してもらえます
予防接種について
現在のガイドラインでは、熱性けいれんを経験したお子さまも予防接種は通常通り受けて大丈夫 です。以前は「熱性けいれんのあとはワクチンを延期した方がよい」と指導されていた時期もあり、ご年配のご家族や他院でそう聞かれたことがあるかもしれませんが、現行ガイドラインでは延期は不要とされています。スケジュールについてご不安があれば、ご相談ください。
よくあるご質問
Q. 救急車を呼んでしまいました。呼ばなくてよかったのでしょうか?
呼んで正解です。 目の前でお子さまがけいれんしているとき、何分続いているか・意識が戻っているかを冷静に見分けるのは、医療者でも簡単ではありません。迷ったら呼ぶでまったく構いません。
結果的に短時間で止まっていたとしても、「呼ぶべきでなかった」ということにはなりません。次に同じことが起きたときにどう動くかを診察でご一緒に整理しますので、遠慮なくご相談ください。
Q. けいれんが起きたら、すぐに救急車を呼んだ方がいいですか?
けいれんが 5 分以上続いている・意識が戻らないまま発作を繰り返す・呼吸が止まっている、唇や顔色が紫色になっている ときは、ためらわずに 119 番 をお呼びください。数分以内に止まって意識が戻った場合も、初めての発作のときは当日中の受診をおすすめします。判断に迷うときは小児救急電話相談(#8000)や当院へご連絡ください。
Q. 発作のあと、ぐったりして眠ってしまったのですが大丈夫ですか?
発作のあとに眠ってしまったり、しばらくぼんやりするのは、多くのお子さまで見られるよくある経過です。回復の様子には個人差がありますので、なかなか目を覚まさない・呼吸が普段と違うなど気になる点があれば、すみやかに受診してください。
Q. 動画を撮る余裕がなかったのですが、診療に困りますか?
動画があると診療に役立ちますが、撮れなかった場合も大丈夫です。時間・体の動き方(左右どちらか/全身か)・目の向き・発作後の意識の戻り方 のうち、覚えている範囲をお伝えいただければ十分です。
Q. 保育園・幼稚園や祖父母には、どう伝えればいいですか?
発作時の対応(横向き・口に物を入れない・時間を測る・可能なら動画)を共有しておくと安心です。診断書や説明資料が必要な場合は、当院で対応できますのでご相談ください。
Q. 兄弟も将来同じけいれんを起こしますか?
ご家族に熱性けいれんの経験があるとお子さまも起こしやすい傾向がありますが、必ず起きるわけではありません。気になる場合は、健診や受診時にお気軽にご相談ください。
Q. 解熱薬を使えば、けいれんは防げますか?
残念ながら、解熱薬で熱性けいれんを予防することはできません。ただしお子さまが熱でつらそうなときに、楽にしてあげる目的で使うのは問題ありません。
Q. 将来てんかんになったりしませんか?
熱性けいれんを経験したお子さまの大多数は、その後てんかんを発症することはありません。ガイドライン上は一般のお子さまよりわずかにリスクが上がる可能性が示されていますが、ご家族の経験を後悔する必要はまったくありません。気になる点があれば、診察時に丁寧にご説明します。
症状についてのご相談
けいれんを目の前で見ると、誰でも不安になります。「この症状で受診すべき?」「救急車を呼ぶべき?」という判断は、お子さまの様子を直接お伺いしながら、一緒に整理させてください。気になることがあれば、受診をご検討ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。熱性けいれん(熱性発作)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 日本小児神経学会 熱性けいれん診療ガイドライン改訂ワーキンググループ. 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン 2023. Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00763/ (accessed: 2026-06-02)
- 日本小児神経学会. 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン 2023 — 序論. https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/02fs2023_introduction.pdf (accessed: 2026-06-02)
- 日本小児神経学会. 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン 2023 第2部 各論4 治療(1) 発熱時のジアゼパム坐剤(CQ04). https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2023GL/07fs2023_sec2_CQ04.pdf (accessed: 2026-07-08)
- 日本小児神経学会. 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン 2023 案内. https://www.childneuro.jp/about/6442/ (accessed: 2026-06-02)
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第22章 神経疾患 B.けいれん性疾患「熱性けいれん」(p.628-629)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(神経「熱性けいれん」印刷 p.602-603)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 9 月 2 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。