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夜驚症(睡眠時驚愕症)

眠ってから 1〜3 時間ほどたった頃、お子さまが突然泣き叫び、目を見開いたまま声をかけても届かない——そんな場面を初めて見たご家族は、本当に驚かれることと思います。これは「夜驚症(やきょうしょう)」と呼ばれる、子どもにはよくみられる睡眠中のできごとで、脳や心の病気ではありません。多くは成長とともに自然になくなっていきます。このページでは、夜驚症とはどのようなものか、ご家庭でできる対応、似ている病気との違いなどを、小児科医がやさしく整理してお伝えします。

💡 この記事の要点

  • 眠ったまま泣き叫ぶ現象で脳や心の病気ではなく、多くは成長とともに自然になくなります
  • 無理に起こさず声をかけすぎず、安全を確保して自然に治まるのを見守りましょう
  • 連日続く・生活に影響が出ているときはご相談ください

どんな病気か

眠りの前半(最初の 3 分の 1 ほど)の一番深い眠りの時間帯に起こりやすく、お子さまは「眠ったまま」泣き叫んでいる状態です。本人に意識はなく、翌朝には覚えていないことがほとんどです。

おおまかな特徴は次の通りです。

  • 2 歳ごろから学童期までに起こりやすく、子ども全体の 1〜6%ほどにみられます
  • 男女差はほとんどなく、思春期までに自然と治まることが多いです
  • ご家族(きょうだいや親)にも経験者がいることが多く、体質的な要素が関係しています
  • 「年齢とともに必ず卒業する現象」であり、知能や心の発達に影響することはありません
  • 日中の疲れ・興奮(楽しい行事の後など)・睡眠不足・発熱・環境の変化が誘因になることが知られています

主な症状と気づきのポイント

「これって何かの病気?危ない病気じゃない?」というのが、初めて目にしたご家族のいちばんの不安だと思います。先にお伝えすると、夜驚症は脳の病気でも心の病気でもなく、深い眠りからの「不完全な目覚め」によって起こる現象です。

典型的な様子は次のようなものです。

  • 眠ってから 1〜3 時間以内に、突然起き上がって叫び声・悲鳴をあげる
  • 目を見開いていることもあるが、声をかけても反応せず、なだめても落ち着かない
  • 汗をたくさんかいたり、心臓がドキドキしたり、呼吸が速くなったりすることがある
  • 多くは数分〜20 分ほどで自然に治まり、そのまま再び眠りに入る
  • 翌朝になると、本人は何があったか覚えていない
  • 1 晩のうちに繰り返すことは少なく、数日〜数週ごとに出ることが多い

涙を流しながら叫んでいても、お子さまは「眠ったまま」です。「呼びかけても届かない」のは普通のことで、ご家族が何か悪いことをしたわけではありません。

夜驚症になりやすい子はいますか

「こんなに激しいのはうちの子だけではないか」と感じられるかもしれませんが、夜驚症は子ども全体の 1〜6% にみられます。決して珍しいことではありません。

起こりやすさに関わるとされているのは、お子さまの性格や育て方ではなく、次のようなものです。

  • 年齢 — 2 歳ごろから学童期に多く、なかでも 3〜7 歳ごろがいちばん多い時期です
  • 体質・家族歴 — ご家族(親やきょうだい)にも夜驚症や夢遊病の経験者がいることが多く、生まれ持った体質が関係しています
  • 睡眠不足・不規則な睡眠リズム
  • 発熱 — 体調を崩した夜に増えることがあります
  • 強い疲れや興奮 — 運動会、旅行、はじめてのお泊まりなど
  • 環境の変化 — 引っ越し、入園・入学、きょうだいの誕生など
  • 一部のお薬

並べてみると、どれも「深い眠りからの目覚めが不完全になりやすい状況」です。裏を返せば、睡眠時間を十分に確保して生活リズムを整えるだけで、回数が減っていくお子さまは少なくありません。まず手をつけていただきたいのはここです。

「愛情不足」でも「育て方のせい」でもありません

夜驚症について調べていると、「愛情不足」「母親のせい」といった言葉に行き当たることがあります。そのたびに胸が痛くなる、というお声を診察室でもよく伺います。

医学的には、夜驚症は深い眠り(ノンレム睡眠)から脳がうまく目覚めきれずに起こる、神経の生理的な現象です。心の傷や愛情の不足によって起こるものではありません。日中に強い疲れや興奮があった日に増えることはありますが、それは「楽しい一日を過ごした」ことの裏返しでもあり、ご家族の関わり方が悪かったという意味ではありません。

夜中に泣き叫ぶお子さまを前にして、ご自分を責める必要はまったくありません。

「夜驚症の子は頭がいい」という話について

こちらもよく見かける説ですが、夜驚症と知能の高さを結びつける医学的な根拠は確認されていません

夜驚症が起こりやすいのは脳が大きく育っていく幼児期と重なるため、「脳が活発だから」というイメージから広まった言い伝えと考えられています。心配なご家族を励ますために語られてきた面もあるのでしょう。

安心材料として受け取っていただくぶんには構いませんが、逆に「うちの子は夜驚症がないから」と気にされる必要もありません。夜驚症の有無は、お子さまの能力とは関係がありません。

発達障害との関係

ここは、誤解のないように少していねいにお伝えします。

自閉スペクトラム症や ADHD のあるお子さまでは、夜驚症を含む睡眠中のできごと(パラソムニア)が定型発達のお子さまより多く報告されています[6][7]。この関係自体は、研究として知られています。

ただし、逆は成り立ちません。夜驚症は子ども全体の 1〜6% にみられるありふれた現象で、その大多数は定型発達のお子さまです。夜驚症があること自体は、発達障害を示すサインではありません。

もし気がかりがあるとすれば、それは夜の様子ではなく日中のご様子のほうです。ことばの発達、お友だちとの関わり、落ち着きなどで気になる点があるときは、夜驚症とは切り離してご相談ください。当院では、そのどちらのご相談もお受けしています。

夢遊病(睡眠時遊行症)との関係

夜驚症と夢遊病は、同じ「深い眠りからの不完全な目覚め」から起こる、いわば兄弟のような現象です。同じお子さまに両方みられることも、同じご家系に出やすいこともあります。

違いは、どう体が動くかです。夜驚症では強い恐怖の反応として泣き叫び、夢遊病では起き上がって歩き回ります。どちらも本人に意識はなく、翌朝は覚えていません。

ご家庭での対応も基本的に同じで、無理に起こさず、安全を確保して見守ることになります。歩き回るタイプの場合は、玄関や階段、窓まわりの戸締まりを先に確認しておくと安心です。

紛らわしい病気(鑑別)

夜驚症は典型的な様子を聞き取るだけで診断がつくことが多い一方、よく似た別の症状もあります。代表的なものを比較します。

症状・病気 見分けるポイント
悪夢(悪い夢) 眠りの後半(明け方寄り)に多く、起きた後に夢の内容を覚えている。声をかければ目が覚めて会話できる
夢遊病(睡眠時遊行症) 同じ睡眠中のできごとの仲間。起き上がって歩き回ることがある。同じ家系で出やすい
てんかんの夜間発作 似た動きが毎回ほぼ同じパターンで繰り返される。典型的な夜驚症とは、詳しい問診で多くは見分けられる。判断に迷う場合のみ脳波検査を検討
熱性けいれん 発熱に伴い、体が硬くなる・ガクガクするなどの「けいれん」が起こる。意識のない時間がはっきりある

「うちの子はてんかんではないか」と不安になるご家族は多いのですが、典型的な夜驚症は詳しい症状の聞き取りだけで見分けられることがほとんどです。

当院での診断と治療

夜驚症の診断は基本的に問診(典型的な経過とご家族からの目撃情報)で行います。検査が必須の病気ではありません。

当院でできることは次の通りです。

  • 症状の聞き取りと臨床的な診断、ご家族へのご説明
  • 生活リズム・睡眠環境についてのご相談
  • てんかんとの区別が必要だと判断した場合の脳波検査の手配、必要時の小児神経科へのご紹介
  • 頻度が多く生活に影響が出ているケースでの専門医ご紹介

治療の基本は、「年齢とともに自然に治まる現象なので、無治療で経過をみる」ことです。これは医学的にも確立された方針で、ほとんどのお子さまはお薬を飲む必要はありません。診察では、ご家族が安心して見守れるよう、今後の見通しを言葉にしてお伝えすることを大切にしています。

ごくまれに、症状の頻度がとても多い場合や、動き回ってけがをする危険がある場合に、就寝前に神経のたかぶりを抑えるお薬(ベンゾジアゼピン系のクロナゼパムなど)を専門医と相談しながら検討することがあります。当院では必要に応じて専門機関にご紹介します。

家庭でできるケア

今夜またなったときの 3 ステップ

  1. 無理に起こさない、声をかけすぎない。声かけや明るい光は、かえって混乱を長引かせることがあります
  2. そっと見守り、安全だけ確保する。ベッドから落ちないか、近くにぶつかるものがないかだけ気をつけてください
  3. 数分〜20 分ほどで自然に治まるのを待つ。多くはそのまま静かに眠りに戻ります

抱きしめても反応がないことがありますが、それはお子さまが「眠ったまま」だからで、ご家族の愛情を拒んでいるわけではありません。そばにいてくださるだけで十分です。

動画で記録しておくと診察に役立ちます

スマホで様子を短く録画していただくと、診察のときに状況がとても分かりやすくなり、診断や説明がスムーズになります。罪悪感を持たずに撮影していただいて大丈夫です。

普段の生活で気をつけたいこと

  • お子さまの睡眠時間を十分に確保し、就寝・起床の時刻をできるだけそろえる
  • 就寝前は読み聞かせや入浴など、リラックスできる時間を作る
  • テレビ・タブレット・スマホは寝る前に控える
  • 寝室の温度・湿度・暗さを心地よく整える
  • 日中に大きな興奮(イベント・遠出など)があった日は、夜に出やすいことがあります

共働きで夕食・入浴・就寝の時間が後ろにずれがちなご家庭も多いと思います。完璧にしようとせず、「今週は早めに寝かせる日を 2〜3 日作る」など、できる範囲から整えていきましょう。

ケガをしないための寝室の準備

  • ベッドのまわりに、ぶつかると危ないものを置かない
  • 落ちやすいベッドには柵があると安心です
  • 2 階以上のお部屋では、窓のロックを確認しておきましょう

きょうだいや、ご家族自身のことも

下のお子さまが同じ部屋で眠っていて怖がってしまう場合は、当面寝室を分ける・「お兄ちゃんの体は寝たままだから大丈夫だよ」と短く伝えるなどで安心してもらえます。

そして、毎晩のように起きるとご家族のほうがぐったりされることもあります。期間限定で必ず終わる現象です。どうかおひとりで抱え込まず、当院やご家族で支え合ってください。

よくあるご質問

Q. 起きているとき、声をかけたり電気をつけたりしてもいいですか?

基本は「そっと見守る」で大丈夫です。声かけや明るい光は目覚めを促し、かえって混乱が長引くことがあります。安全だけ確保してあげてください。

Q. 毎晩のように起きるのですが、普通ですか?

多くは数日〜数週おきですが、頻度には個人差があります。連日続く・生活に影響が出ているとお感じのときは、ご相談ください。

Q. 下の子(きょうだい)も起きてしまい、怖がります。どうすれば?

当面の間、寝室を分けるのもひとつの方法です。下のお子さまには「お兄ちゃん/お姉ちゃんは寝たままだよ。明日は覚えてないんだよ」とシンプルに伝えてあげると安心しやすいです。

Q. スマホで様子を撮ってもいいですか?

はい、診察のときの大きな手助けになります。罪悪感を持たずに撮ってください。

Q. おばあちゃんやパパに「起こした方がいい」「心の病気では」と心配されます。どう説明すれば?

「無理に起こさない」「成長とともに自然に治まる」「脳や心の異常ではない」の 3 点をお伝えいただければ大丈夫です。当院の説明資料もご活用ください。

Q. 保育園のお泊まり保育や、修学旅行が心配です。

事前に先生に「夜中に泣き叫ぶことがあるが、無理に起こさず見守ってもらえれば数分で治まる」とお伝えしておくとスムーズです。多くのお子さまは新しい環境でも特別な対応は不要です。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、ひとりで抱え込まず 受診をご検討ください。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。夜驚症(睡眠時驚愕症)をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

本ページは、以下の資料を参照し、小児科医監修のもと現行ガイドラインに揃えて作成しています。

  1. MSD マニュアル プロフェッショナル版.「小児における睡眠障害」. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-%E5%B0%8F%E5%85%90%E7%A7%91/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%A1%8C%E5%8B%95%E4%B8%8A%E3%81%AE%E6%87%B8%E5%BF%B5%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E9%9A%9C%E5%AE%B3 (2026-06-02 参照)
  2. MSD マニュアル プロフェッショナル版.「睡眠時随伴症」. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%A6%9A%E9%86%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%99%82%E9%9A%8F%E4%BC%B4%E7%97%87 (2026-06-02 参照)
  3. 一般社団法人 小児心身医学会.「睡眠時随伴症」. https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%99%82%E9%9A%8F%E4%BC%B4%E7%97%87/ (2026-06-02 参照)
  4. 加藤久美.「ノンレムパラソムニア」. 臨床神経生理学 48(1), 2020. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/48/1/48_45/_pdf/-char/ja (2026-06-02 参照)
  5. 金子堅一郎 編.『子どもの病気とその診かた』南山堂, 2013. 第 8 章 11「発達障害・行動異常」6「睡眠障害(夜泣き、夜驚症、夢中遊行症)」, p.491-494.
  6. Ming X, Sun YM, Nachajon RV, Brimacombe M, Walters AS. "Prevalence of Parasomnia in Autistic Children with Sleep Disorders". Clinical Medicine: Pediatrics. 2009;3:1-10. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3676289/ (2026-09-02 参照)
  7. Silvestri R, et al. "Sleep disorders in children with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD) recorded overnight by video-polysomnography". Sleep Medicine. 2009;10(10):1132-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19527942/ (2026-09-02 参照)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 2 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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