成長・ホルモン 更新日:公開日:

小児肥満症

学校健診で「肥満傾向」と書かれた紙を持ち帰った日、「うちの子、本当に太りすぎ?」と不安になるご家庭は少なくありません。小児肥満症は、お子さまの体重が同年齢・同性・同身長の標準より一定以上重く、将来の健康にも影響しうる状態のことを指します。ただし、見た目の「ぽっちゃり」と医学的な「肥満症」は同じではなく、必要なのは生活全体をご家族で少しずつ整えていくことです。当院では、ご家族のペースに寄り添いながら、評価とご相談を承ります。

💡 この記事の要点

  • 標準体重を一定以上上回り、将来の健康にも影響しうる状態で、見た目とは異なる概念です
  • 食事・運動・睡眠をご家族全体で見直し、まずは1つだけ小さな一歩から始めていきます
  • 首やわきの黒ずみ・いびき・膝や腰の痛みなど、合併症のサインがあれば評価が必要です

どんな病気か

「小児肥満」とは、性別・年齢・身長から計算される標準体重を一定以上上回る状態のことで、肥満度 = (実測体重 − 標準体重)/標準体重 × 100% という式で判定します。日本の学校健診でもこの「肥満度」を使います。年齢によって基準がやや異なり、幼児期は +15% 以上、学童期(小学生)以降は +20% 以上 を肥満とします [1][4]。なお、海外では BMI が同じ年齢・性別の上位 5%(95 パーセンタイル以上) に入るかどうかを基準とする方法が使われています。

重症度は、次の 3 段階に分けて考えます [1][4]。

  • 軽度肥満: 肥満度 +20〜+30%
  • 中等度肥満: 肥満度 +30〜+50%
  • 高度肥満: 肥満度 +50% 以上

これに対して「小児肥満症」とは、肥満があるうえで、高血圧・睡眠時無呼吸・2 型糖尿病など、健康への影響がすでに出ているか、出ることが予測される状態 のことを指します。教科書では「単純性肥満に起因または関連する健康障害を合併するか予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態」と定義されています [1][4]。

国内の小学生〜高校生(6〜17 歳)の約 10% が肥満に該当し、特に思春期男児で増加傾向です [1]。

なぜ太るのか

大多数は生活習慣由来(単純性肥満) で、ごく一部に別の病気が背景にある 症候性肥満 があります [4]。

単純性肥満(大多数) [4]

お子さまの単純性肥満の多くは、お子さま 1 人の問題というよりも、ご家庭や生活全体の今の特徴(習慣)に由来します [4]。

  • エネルギー過剰摂取(高脂肪・高糖質食、清涼飲料、間食)
  • 運動不足(テレビ・ゲーム・スマホ時間の増加)
  • 睡眠不足
  • 心理的因子(ストレス、情緒)
  • 家族の生活習慣・体質(ご家族に肥満があるとお子さまも肥満になりやすい、という家族性の傾向があります)
  • 脂肪細胞が増えやすい時期(生後 1 年までと、前思春期〜思春期)の過食は、後から戻りにくい肥満につながりやすい

家族の生活と体質が大きく関わるため、お子さま 1 人だけの問題として向き合うよりも、ご家族全体の生活を一緒に整えていく ことが結果につながりやすいと考えられています。

症候性肥満(ごくまれ、要鑑別) [4]

別の病気が背景にあって太るタイプで、多くは 身長の伸びが悪い・発達がゆっくり・特徴的な顔つきなどを伴う ことがヒントになります。代表的なものに、ホルモンの病気(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)、生まれつきの病気(プラダー・ウィリ症候群、Bardet-Biedl 症候群、レプチン欠損症)、脳の病気の影響(脳腫瘍、脳外傷後)、お薬の影響(ステロイド、抗精神病薬)などがあります。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子は本当に肥満? どこから心配すべき?」というのが、まず気になるところだと思います。医学的には次のような目安があります [1]。

  • 肥満度 +20% 以上(日本の学校健診で使われる基準。海外では BMI が同年齢・同性の上位 5%=95 パーセンタイル以上という基準が使われます)
  • 体型の変化(おなかまわりに脂肪がつく内臓脂肪型、全身につく皮下脂肪型)
  • 首やわきの後ろに お風呂で洗っても落ちない黒ずみ(医学用語: 黒色表皮腫)— 糖代謝の不調サインの 1 つ
  • おなかや背中・太ももに出る 赤紫〜白いひび割れ模様(医学用語: 皮膚線条)— 急に体重が増えた跡
  • 動悸・息切れ・疲れやすさ
  • いびきや、寝ているときに呼吸が止まる様子
  • 膝・腰の痛み
  • 自尊心の低下、からかいやいじめ、気分の落ち込みなど

母子手帳や学校の身体測定票には成長曲線が載っており、お子さまの身長・体重が標準曲線からどれくらいズレているかを大まかに確認できます。ご自宅で気になる場合は、その記録をお持ちいただくと診察がスムーズです。

なお、体の脂肪は幼児期(5〜6 歳ごろ)にいったん減ってから再び増えていくのが自然な経過で、この「再び増え始める時期」が早いお子さまは、将来の肥満や生活習慣病のリスクがやや高いことが知られています(アディポシティ・リバウンド)[5]。成長曲線で、早い時期から右肩上がりの傾向が続いていないかを見ておくと、早めの気づきにつながります。

起こりうる合併症 [1]

肥満そのものよりも、合併症が出ているかどうかが医学的な介入の判断基準になります。

  • メタボリックシンドローム(内臓脂肪 + 高血圧/高血糖/脂質異常の組み合わせ)
  • 2 型糖尿病
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 脂肪肝(医学的には NAFLD/NASH と呼ばれる、肝臓に脂肪がたまった状態)
  • 寝ているときに呼吸が止まる状態(医学用語: 閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
  • 股関節の骨が体重でずれる病気(医学用語: 大腿骨頭すべり症 — 思春期に起きやすい)
  • 思春期女児では、生理不順や毛深さの原因になる卵巣の病気(医学用語: 多嚢胞性卵巣症候群)

これらが「すでに出ているリストに見える」と不安になりますが、お子さまの肥満度や年齢によって、必要な検査も対応も大きく変わります。具体的な判断は診察でご一緒に確認できます。

紛らわしい病気(鑑別)

小児肥満を診るときに考える、似た所見の病気・状態です。

  • クッシング症候群 — 顔が丸くなる、おなかを中心に脂肪がつく、皮膚に赤紫の線条が出る、身長の伸びが鈍るなど。ホルモンの異常で起こります
  • 甲状腺機能低下症 — 体重増加に加えて、寒がり・便秘・元気のなさ・身長の伸びが悪いなど、代謝が下がるサインを伴います
  • プラダー・ウィリ症候群 — 生まれつきの染色体の変化で起こる、食欲のコントロールが難しくなる病気。発達のゆっくりさや特徴的な顔つきを伴うことがあります
  • 脳の病気の影響(脳腫瘍・脳外傷後など) — 頭痛・視力の変化・神経症状などを伴うことがあります
  • お薬の影響 — ステロイドや一部の抗精神病薬では、体重が増えやすくなることがあります

「身長があまり伸びていないのに体重だけ増える」「急に短期間で太った」「発達がゆっくりに感じる」といった場合は、生活習慣以外の原因も視野に入れて評価します。

当院での診断と治療

評価の流れ

  • 身長・体重・肥満度・BMI、成長曲線で経時変化を確認
  • 腹囲、血圧
  • 血液検査: 空腹時血糖・HbA1c・インスリン、脂質(LDL/HDL/中性脂肪)、肝機能、尿酸・腎機能、甲状腺ホルモン(TSH/FT4)
  • 必要に応じて: 腹部エコー(脂肪肝の評価)、心電図、コルチゾール(クッシング症候群の鑑別)など
  • 睡眠時無呼吸が疑われるときは、検査を行える医療機関へご紹介します

治療の考え方 [1]

治療の柱は、生活習慣の見直し(食事・運動・行動)ご家族全体での取り組み、そして 心理社会的なサポート です。お薬や手術は、小児ではほとんど用いず、用いるとしても合併症の重症例で専門医が判断します。

大切なのは、急な・極端なダイエットを避ける ことです。お子さまは成長の途中なので、過度なエネルギー制限は身長の伸びや骨の発達、食行動に悪影響を与えることがあります [4]。短期間の結果を焦らず、お子さま自身が続けられる小さな目標を 1 つずつ積み重ねていく方が、結果的にうまくいきます。

  • 食事 — 年齢・性別・身長・活動度に合わせた適正なエネルギー量。3 食規則正しく、朝食を抜かない。間食・夜食の整理、清涼飲料・ジュースの見直し、野菜とたんぱく質をしっかり。早食いを直してよく噛む
  • 運動 — 日常活動(歩く・遊ぶ)を増やす。週 3〜5 回、1 回 30 分以上を目安に有酸素運動。スクリーン時間(テレビ・ゲーム・スマホ)は 1 日 2 時間以内を目安に。本人が楽しめる種類を選ぶ
  • 行動 — 食事・体重の記録、目標設定、ストレスへの対処
  • ご家族支援 — ご家族全体での食事・運動の見直し、本人の自尊心への配慮(叱責や体型批判を避ける)、必要時は学校との連携

当院で対応できる範囲

  • 評価・スクリーニング(成長曲線、血液検査)
  • 生活習慣の指導と、ご家族での取り組みの伴走
  • 軽症の継続フォロー
  • 2 型糖尿病・重度の脂肪肝・睡眠時無呼吸など合併症が疑われる場合や、症候性肥満が疑われる場合は、専門医療機関へ紹介します

ご家族のペースを大切にしながら、必要な検査と支援を一緒に整理していきます。

家庭でできるケア

ご家庭で取り組めることは多いのですが、「全部を一度に」だと続きません。まずは 1 つだけ から始めるくらいがちょうどよいです。

食事

  • 3 食を規則正しく、朝食を抜かない
  • 毎食に野菜を、たんぱく質は適量
  • 清涼飲料・ジュースを水・お茶に置き換える(麦茶パックを常備しておくと続けやすい)
  • 間食・夜食を整理する
  • 早食いをやめ、よく噛む
  • ご家族みんなで食生活を見直す(お子さまだけのダイエットにしない)

運動

  • 外遊び・スポーツ・歩く機会を増やす
  • スクリーン時間は 1 日 2 時間以内を目安に
  • エレベーター・エスカレーターより階段
  • 通学・買い物はできる範囲で徒歩・自転車

睡眠

  • 十分な睡眠時間(睡眠不足は肥満リスクの 1 つ)
  • 就寝・起床のリズムを整える

気持ちのケア

  • 体型を責めたり、叱る形では伝えない
  • 「一緒に元気でいられる体作りをしよう」のように、目標を共有する言葉で
  • 兄弟との比較は避ける
  • 小さな成功体験を一緒に喜ぶ
  • ご家族の中で気持ちを 1 人で抱え込みすぎない

うまくいかない日があっても大丈夫です。続けることのほうが、完璧にやることよりずっと大切です。

よくあるご質問

Q. うちの子は「ぽっちゃり」なのか、医学的に「肥満」なのか、自分で見分けられますか?

母子手帳や学校の身体測定票の成長曲線で、お子さまの体重が標準曲線からどれくらい外れているかをご確認いただけます。ただし、肥満度や肥満症かどうかの正式な判定は、診察で身長・体重・成長の経過を一緒に見ながら行うのが確実です。気になる段階で 診察でご相談ください。

Q. 本人にどう伝えればいいですか?「太ってる」と言って傷つけないか心配です。

体型そのものに触れるよりも、「一緒に元気な体でいられるようにしよう」「お休みの日、一緒に散歩しよう」のように、行動を一緒にやる言い方が続けやすいです。ご兄弟がいる場合は、特定の 1 人だけの話にせず、ご家族全体の生活として伝えるほうが負担になりにくいです。

Q. 祖父母やパートナーが甘いものをよく与えてしまいます。どうお願いすればいいでしょうか?

「禁止」ではなく「ご家族で共有しているルール」として伝えると協力を得やすいです。診察の場で医師から直接お話しする形にもできますので、お声がけください。

Q. 共働きで完璧にはできません。小さな一歩から始めても意味はありますか?

はい、十分意味があります。たとえば「飲み物だけ水・お茶にする」「夕食前のジュースをやめる」など、1 つから始めて続くほうが効果的です。完璧を目指して途中でやめてしまうほうが、もったいないです。

Q. 思春期になれば自然に痩せますか?

一部のお子さまは身長が伸びる過程で見た目がスリムになりますが、研究では小児期の肥満の 約 70〜80% が成人期の肥満に移行する とされ、すべてのお子さまで自然に解決するとは限りません [1]。特に、すでに健康への影響が出ている場合は、早めに評価することをおすすめします。年齢層によっても見通しは変わるので、診察で個別にお話しします。

Q. 学校でからかわれているようです。どう支えればいいですか?

体重の問題は気持ちのケアと切り離せません。当院では、必要に応じて学校との連携や、心理的なサポートが受けられる先のご相談にも対応します。診察でお気持ちごとお聞かせください。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。お子さまの成長や生活で気になることがあれば、受診をご検討ください。体重のことは、ご家庭だけで抱えなくて大丈夫です。

自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。小児肥満症をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本肥満学会. 小児肥満症診療ガイドライン 2017. https://www.jasso.or.jp/data/about/pdf/guideline2017.pdf (参照: 2026-06-02)
  2. 文部科学省. 学校保健(小児肥満含む). https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/index.htm (参照: 2026-06-02)
  3. 日本小児内分泌学会. 学会ガイドライン一覧. https://jspe.umin.jp/medical/gui.html (参照: 2026-06-02)
  4. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第10章 代謝疾患 F「肥満」(印刷 p.219-220)
  5. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(小児科総論 Column「adiposity rebound と小児肥満」 印刷 p.16)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 10 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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