成長・ホルモン 更新日:公開日:

低身長

「同年齢の子と比べてうちの子は小さいかも」「成長曲線が気になる」と感じる保護者の方は少なくありません。低身長の多くは体質的なもの(特発性低身長や家族性低身長)で、必ずしも病気とは限りません。一方で、ごく一部に治療によって最終身長が伸びる病的な原因が隠れていることもあり、成長曲線の動きを早めに一緒に確認していくこと が大切です。当院では、母子手帳や健診記録をもとに成長曲線評価から始め、必要に応じて専門医療機関と連携してサポートします。

💡 この記事の要点

  • 低身長の多くは体質的なもの(特発性低身長や家族性低身長)で、必ずしも病気とは限りません
  • 母子手帳などに毎年の身長記録を残し、十分な睡眠とバランスの良い食事を意識します
  • 成長曲線が今までの線より下にずれていく動きが続くときは早めにご相談ください

どんな病気か

医学的には、低身長は 同年齢・同性の平均身長から -2.0 SD 以下(おおむね同年齢の下位約 2.3%)、もしくは 2 年以上続けて伸び方(成長速度)が標準値 -1.5 SD 以下 の状態とされます(現行ガイドライン[2024 年改訂]に基づく)。

ただし重要なポイントとして、-2 SD 以下=即病気というわけではありません。病的な低身長と判断されるのはさらに低く、-2.5 SD 未満〜-3 SD 未満 に該当するケースが多いとされています。低身長の子のうち最も多いのは「特発性低身長」と呼ばれる、はっきりした病気の原因が見つからないタイプで、その多くは体質的なものです。

低身長を分けて考えると、主に次のような分類があります。

  • 非病的(体質的)な低身長 — 特発性低身長(最多)、家族性低身長、体質性思春期遅発症など
  • 病的な低身長 — 成長ホルモン分泌不全症(GHD)、ターナー症候群、SGA 性低身長、プラダー・ウィリ症候群、軟骨無形成症、慢性疾患に伴うもの など

成長率の一般的な目安としては、4 歳頃から思春期までは年間およそ 6 cm思春期は年間およそ 10 cm とされています。母子手帳に身長を書き込んだ際の目安としてご参照ください。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子の身長は『病気』なのか、それとも個性の範囲なのか」――保護者の方が最初に知りたいポイントです。次のような点が、ご家庭で気づきやすいサインです。

  • 成長曲線の動き: 母子手帳や健診記録の成長曲線で、今まで乗っていた線より下のカーブにずれていく ような伸び方が続いている
  • 同年齢との比較: 同年齢の平均と比べて 2 歳分以上の身長差 がある
  • 伸び方が緩やか: ここ 1〜2 年で身長の伸びが目に見えて遅くなった気がする
  • 体型・思春期: 体のバランスがアンバランスに感じる、思春期のサイン(胸のふくらみ・声変わりなど)が周囲と比べて明らかに遅れている
  • 全身の様子: 疲れやすい、便通が安定しない、慢性的な体調不良がある

「背の順で前のほう」というだけでは病的とは限りません。今までの成長曲線の動き のほうが、はるかに大切な手がかりになります。判断に迷うときは、母子手帳をお持ちいただければ、当院で一緒に確認します。

紛らわしい病気(鑑別)

「身長が低い」と一口に言っても、背景には複数の可能性があります。代表的なものを挙げます。

  • 特発性低身長 / 家族性低身長 / 体質性思春期遅発症(最も多い) — はっきりとした病気ではなく、体質や遺伝、思春期のタイミングが要因。ご両親の身長から予測される身長の範囲(お子さんが最終的に届くと見込まれる身長のおおよその幅)を目安に、その範囲に収まっているかどうかも参考にして評価します [5]。
  • 成長ホルモン分泌不全症(GHD) — 体の中で身長を伸ばすホルモン(成長ホルモン)が十分に出ないタイプ。成長ホルモン治療の主な対象です。
  • ターナー症候群(女児) — 染色体に関連する原因で身長の伸びがゆるやかになることがあります。成長ホルモン治療の対象。
  • SGA 性低身長 — 出生時に在胎週数の割に小さく生まれ(SGA)、2 歳になっても周囲に追いつかなかったタイプ。
  • 甲状腺機能低下症などの内分泌疾患・慢性疾患(腎・肝・腸・心など) — 全身の状態が背景にあって伸び方に影響することがあります。

これらを見分けるには、成長曲線・家族歴・出生時の情報・全身の様子を組み合わせて判断します。

当院での診断と治療

当院は地域の小児科として、低身長の 初期評価と専門医療機関との連携 を担当します。

当院でできること

  • 成長曲線評価(最重要) — 母子手帳・健診記録・学校健診のデータをもとに、これまでの伸び方を丁寧に確認します
  • 問診・身体評価 — 出生時情報、ご家族の身長、思春期のサインの有無、生活習慣などを伺います
  • スクリーニング検査 — 必要に応じて、一般血液検査・肝腎機能・甲状腺機能・IGF-1(成長ホルモンの働きを反映する指標)・ALP などの血液検査
  • 専門医療機関へのご紹介 — 病的低身長が疑われる場合は、手のレントゲンによる骨年齢評価や成長ホルモン分泌刺激試験、治療開始のため、小児内分泌の専門医療機関と連携してご紹介します
  • 治療開始後のフォロー — 専門医療機関で治療方針が決まった後は、安定期の処方継続協力や副作用観察など、地域の通院しやすいクリニックとして継続的にサポートします

専門医療機関で行われる治療

病的低身長と診断され、保険適用基準を満たす場合には、専門医療機関で次のような治療が行われます。

  • 遺伝子組換えヒト成長ホルモン(rhGH): 1 日 1 回・週 6〜7 回、寝る前に行う在宅自己注射 が一般的(用量は学会基準に基づき体重から算出)[5]。成長ホルモンが不足しているタイプ(GHD)は、成長のスピードが落ちて 体のバランスは保たれたまま身長だけが低い のが典型で、脳の下垂体の状態を確認するために頭部の MRI 検査を行うこともあります [5]
  • 適応疾患: 成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)、ターナー症候群、SGA 性低身長(適応基準あり)、プラダー・ウィリ症候群、慢性腎不全に伴う低身長、軟骨無形成症(軟骨異栄養症)、ヌーナン症候群
  • 治療経過: 治療初期(特に開始から 2 年間)は身長が急速に伸びる時期で、その時期に股関節痛・頭痛などの副作用が出ることがあります。経過中は 甲状腺機能・耐糖能(糖代謝)を定期的に評価 しながら進めます
  • 原疾患治療: 甲状腺機能低下症にはレボチロキシン補充など、もとの病気に対する治療が中心になるケースもあります

「紹介」と聞くと不安に感じられるかもしれませんが、当院は その後の継続フォロー・処方協力まで含めて、長く伴走する役割 を担います。

家庭でできるケア

低身長の評価で何より大切なのは、毎年の身長記録を残しておく ことです。生活習慣の工夫だけで病的な低身長を治すことはできませんが、健やかな成長を支えるうえでは次のような点を意識していただくと良いでしょう。

成長曲線を残す・見る

  • 母子手帳の成長曲線、保育園・幼稚園・学校の身長記録をこまめに書き入れる
  • 「今まで乗っていた線より下にずれていないか」「同じカーブに沿って伸びているか」を年に 1 回でも振り返ってみる
  • 気になるときは母子手帳をお持ちいただければ、当院で一緒に確認します

生活習慣

  • 十分な睡眠 — 成長ホルモンは深い眠りのときに多く分泌されます。年齢に応じた就寝時間を意識し、寝る前のスマホ・タブレットは控えめにすると睡眠の質が保ちやすくなります
  • バランスの良い食事 — 特定の食品やサプリで身長が伸びるわけではなく、たんぱく質・カルシウム・野菜などを偏りなく
  • 体を動かす習慣 — 過度なトレーニングは不要、楽しめる範囲の運動を続ける
  • ストレスの少ない生活 — 慢性的なストレスは成長に影響することがあります

心のケア・声かけ

  • 身長について本人が気にしている様子があれば、「気にしなくていい」と打ち消すのではなく、気持ちをまず受けとめる
  • 「気になることがあれば一緒に小児科で相談してみよう」と提案するだけで、本人の安心感は大きく変わります
  • 学校でからかわれているような相談があった場合は、必要に応じて学校との連携も含めて一緒に考えていきます

よくあるご質問

Q. 母子手帳の成長曲線のどこを見れば「相談したほうがいい」と分かりますか?

成長曲線の帯(パーセンタイル)から下に外れている、あるいは 今まで乗っていたカーブよりも下にずれていく動き が続いているときは、一度ご相談ください。判断に迷うときは母子手帳をお持ちいただければ、当院で一緒に確認します。

Q. 両親とも背が低いので、うちの子も遺伝で低いだけかもしれません。それでも相談していいですか?

体質的・家族性のことも多いので過度に心配する必要はありませんが、念のため病的な低身長ではないか一度評価しておく ことには意味があります。お気軽にご相談ください。

Q. 成長ホルモン治療は痛い注射ですか?費用はどれくらいかかりますか?保険は使えますか?

GHD やターナー症候群などは保険適用、SGA 性低身長などは適応基準があります。実際の治療は専門医療機関で開始しますので、費用や注射の方法(細い針の在宅自己注射が一般的)も含めて専門医からご説明があります。当院ではまず保険診療の範囲で初期評価を行います。

Q. うちの子は背の順でずっと一番前です。それだけで受診したほうがいいですか?

「背の順で前」というだけでは病的とは限りません。大切なのは 成長曲線の動き です。気になる場合は気軽にご相談いただいて構いません。

Q. 受診したら必ず注射治療になりますか?子どもに負担をかけたくないです。

いいえ、いきなり治療開始にはなりません。まずは成長曲線とスクリーニング検査で全体像を確認するところから始めます。多くの場合は経過観察で済むこともあります。

Q. ご飯をたくさん食べさせれば身長は伸びますか?身長を伸ばすサプリは効きますか?

病的な低身長に対しては、食事量を増やしたりサプリを使ったりするだけで身長が大きく伸びることは期待しにくいです。栄養はバランスを意識いただき、極端な制限や偏りを避けることが基本です。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、受診をご検討ください。


自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。低身長をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 小児慢性特定疾病情報センター. 成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症 診断の手引き. https://www.shouman.jp/disease/instructions/05_04_006/ (accessed: 2026-06-02)
  2. 成長科学協会. 成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療適応判定基準とフローチャート(2024 年 10 月改訂). https://www.fgs.or.jp/business/growth_hormone/treatment_decision/growth_hormone_short_stature/chart.html (accessed: 2026-06-02)
  3. 日本小児内分泌学会. 学会ガイドライン一覧. https://jspe.umin.jp/medical/gui.html (accessed: 2026-06-02)
  4. 日本内分泌学会. 成長ホルモン分泌不全性低身長症. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=80 (accessed: 2026-06-02)
  5. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第11章 内分泌疾患「成長ホルモン分泌不全性低身長症」(印刷 p.226-230)
  6. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(代謝・内分泌疾患「成長ホルモン分泌不全性低身長症」 印刷 p.338-341)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 9 月 8 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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