チック症 — 原因・治し方・関わり方
お子さまのまばたき・首振り・咳払いなどが繰り返されると、「うちの子だけ?」「私の育て方が悪かったの?」と心配になりますよね。チック症は学童期のお子さまに比較的よく見られる、神経発達のタイプによって起こりやすい症状です。多くは時間とともに自然に落ち着いていきます。しつけや育て方が原因ではありませんので、まずは安心して、ご家庭での関わり方を一緒に考えていきましょう。気をつけたいのは症状そのものより「指摘やからかい」のほうですので、このページでは関わり方のコツと受診の目安を順番にご紹介します。
💡 この記事の要点
- 本人の意思と関係なく起こる体の動きや発声で、多くは自然に落ち着きます
- 一過性のチックは数週間から 1 年ほどで軽快することがほとんどです
- 指摘せず叱らず真似せず、普段どおり接することが一番の助けになります
- 判断に迷う・生活への影響が大きいときは小児科でご相談ください
どんな病気か
チック症は、本人の意思とは関係なく、突然・素早く繰り返される体の動きや発声のことです。脳の発達の途中で、神経の働きにちょっとした特徴が出ている状態(神経発達症)と考えられており、家族内で似たような症状が見られることがあるなど、生まれもった素因の関与が知られています。
学童期のお子さまの 5〜20% が、人生のどこかで一過性のチックを経験するとされ、決して珍しい症状ではありません。発症のピークは 5〜7 歳ごろ、男の子のほうがおよそ 3〜4 倍 多く見られます。多くは思春期を迎えるころにかけて、症状が大きく落ち着いていきます。
ストレス・疲労・興奮が 発症や悪化のきっかけ になることはありますが、根本の原因はあくまで神経発達の素因です。「ストレスを与えてしまった私のせい」と、ご自身を責める必要はありません。
主な症状と気づきのポイント
最初に気づかれやすいのは、お子さまの何気ない動きや音です。具体的には次のようなものがあります。
体の動きのチック(運動チック)
- まばたきを頻繁に繰り返す(最も多い症状)
- 顔をしかめる、口を曲げる
- 首を振る、肩をすくめる、うなずく
- (複雑なもの)跳ねる、ものに触れる、複数の動作を組み合わせる
声のチック(音声チック)
- 咳払いを繰り返す
- 鼻をすする、「ンッ」と鳴らす、唸る
- (複雑なもの)短い言葉を繰り返す
こんな特徴があればチック症らしいサイン
「うちの子のこの動きは、本当にチック?」と迷うご家庭が多いポイントです。次の特徴があるとチックらしいと考えられます。
- 波がある:強く出る時期と落ち着く時期を繰り返す
- 症状が入れ替わる:まばたきが減ったと思ったら咳払いが出てきた、など
- 集中している時は減り、リラックスや疲労時に増える
- 強く意識すると逆に増える
- 短時間は意志で止められるけれど、止めると体の中でムズムズする感じが残る(前駆衝動)
逆に、はっきりした目的のある反復動作(手洗いを繰り返すなど)、リズミカルでけいれんのように見える動き、いつも同じパターンで止まらない動きなどは、別の病気の可能性もありますので、気になる場合はご相談ください。
「チック症の治し方」を探している方へ
まばたきや咳払いが続くと、まず「どうやったら治るのか」を調べたくなると思います。先にお伝えしておきたいのは、チックを直接止める方法を探すより、放っておける環境をつくるほうが結果的に早く落ち着くということです。
多くは、待っていれば軽くなっていく
一過性のチックは、数週間から 1 年ほどで自然に軽快することがほとんどです。長く続くタイプでも、思春期以降に大きく軽くなっていき、成人期のはじまりまでに 9 割前後で軽快・消失するという報告があります。「一生このままなのでは」と心配される必要はありません。
家庭でいちばん効くのは「反応しないこと」
チックは意識すると増える性質があります。「やめなさい」「また出てるよ」と声をかけると、子ども本人はやめようと意識し、かえって出やすくなります。指摘しない・叱らない・真似しない——この 3 つを家族で共有するだけで、症状が目立たなくなることは珍しくありません。詳しくは後述の「家庭でできるケア」をご覧ください。
治療が必要になるのはどんなときか
生活に支障が出ているときには、行動療法(CBIT)やお薬という選択肢があります。ただし、すべてのお子さまに薬を使うわけではないというのが現行のガイドラインの基本方針です。「治し方=薬」ではありません。
病院に行ったほうがいいのはどんなとき
次のようなときは、一度小児科でご相談ください。チックかどうかの見極めと、ご家族・学校への説明の仕方を一緒に整理できます。
- チックなのか、別の病気(けいれん、常同症、強迫行為など)なのか判断がつかない
- 学校や園でからかわれている、本人が気にして外出や発表をいやがる
- 声のチックが大きく、授業や食事など日常生活に支障が出ている
- 首を強く振る・体を叩くなど、けがにつながりそうな動きがある
- 落ち着きのなさ、こだわりの強さなど、ほかの気になる特性も一緒にある
一方で、まばたきや咳払いが出ているだけで、本人が困っておらず生活も回っているなら、急いで受診する必要はありません。
紛らわしい病気(鑑別)
医師は、似た症状が出る他の病気と区別しながら診断します。
- 常同症(自閉スペクトラム症の症状) — チックよりも一定のパターンで反復し、抑制が難しい
- 舞踏運動(シデナム舞踏病など) — 流れるような不随意運動で、リズム性がない
- ミオクローヌス(てんかん性の動き) — てんかんに関連する不随意な動き
- 強迫行為 — 「やらないと気持ち悪い」という内的な衝動による反復で、より目的性がある
- 薬剤性の運動異常 — 一部の薬の副作用によるもの
ご家庭で見分けるのは難しい部分もありますので、判断に迷うときは小児科で一度ご相談ください。
当院での診断と治療
チック症は基本的に、お子さまの様子を丁寧にお聞きして診断する 臨床診断 です。検査で確定するものではなく、症状の種類・経過・きっかけ・併存しやすい特性(後述)などを総合して判断します。鑑別が必要な場合のみ、脳波・MRI 等の追加検査を検討します。
治療の基本方針
現行の診療ガイドライン(小児チック症診療ガイドライン 2024)では、「すべての方に薬を使うわけではない」 ことが基本方針として示されています。多くのお子さまは、ご家族への丁寧な説明と環境の調整だけで、自然に軽快していきます。
第一選択:心理教育と環境調整
- ご家族・ご本人・学校への病気の説明(波があること・本人にも止められないこと)
- ご家庭・学校でチックを指摘しすぎない関わり方
- 経過観察
行動療法(症状が日常に支障を及ぼす場合)
- 包括的行動的介入(CBIT) と呼ばれる方法に有効性のエビデンスがあります(くせの置き換え練習=ハビット・リバーサル等を含みます)。
お薬(生活への影響が大きい場合)
- 第二世代抗精神病薬(リスペリドン、アリピプラゾール)
- α2 作動薬(クロニジン、グアンファシン。特に ADHD を併せ持つお子さまに)
- お薬は副作用と効果のバランスを見ながら、ご家族と相談して決めていきます
当院(キッズクリニックまるまる)での対応
- 初診時のチック評価と症状経過のヒアリング
- ご家族への心理教育、ご不安に対するご説明
- 併存しやすい特性(一緒に出やすい『落ち着きにくさ』『同じ動作を繰り返したくなる気持ち』など)のスクリーニング
- 学校・園との連携のための 診断書の作成
- 軽症で経過観察可能な場合は当院でフォロー
- 生活への影響が大きく薬物療法・行動療法が必要な場合や、併存特性の対応が中心となる場合は、児童精神科・小児神経専門医へご紹介します
お子さまだけでなく、ご家族全体に寄り添う体制を整えています。
家庭でできるケア
チック症で もっとも大切なのはご家庭での関わり方 です。お子さまにとって「症状そのもの」よりも、「指摘されたりからかわれたりすること」のほうがつらいことが知られています。
親としての関わり方
- 指摘しない・叱らない・真似しない:「やめなさい」と言っても本人には止められず、かえって悪化することがあります
- 気付いた時も、視線を逸らさず普段どおり接する:食事中・テレビを見ている時も特別扱いしないのがコツです
- チック以外の良いところ・できていることに目を向ける
- 睡眠時間と休息を確保し、生活リズムを整える
兄弟姉妹への伝え方の例
- 年少のお子さまへ:「○○くんは、わざとじゃなくて体が勝手に動いちゃうの」
- 小学生のお子さまへ:「くしゃみみたいに、自分では止められないの。気にしないでいてあげてね」
学校・園との共有
- 担任の先生に「指摘しないでほしい」「からかわれていないか見守ってほしい」とお伝えするのが基本です
- 詳しい説明資料が必要な場合は、当院で診断書や説明文をご用意できます
本人が症状を気にし始めたら
- 「誰でも体のクセみたいなものはあるよ」「気にしなくていいよ」と安心させる声かけが基本です
- 気にしすぎが症状を増やすこともあるため、過剰に反応しないトーンが大切です
スクリーンタイム・習い事
- 画面時間と症状の直接的な因果は明確ではありません
- 睡眠時間が削れているようなら見直しを。本人が落ち着く時間なら必ずしも禁止する必要はありません
- 習い事の詰め込みすぎでお子さまの負担が大きい時は、ペースを見直してあげてください
よくあるご質問
Q. チックと「癖(くせ)」はどう違いますか?
癖は意識すれば止められますが、チックは本人の意思では完全には止められません。また、チックには「波」があり、症状の種類が入れ替わったり(まばたきが減って咳払いが出てくるなど)、強く意識すると逆に増えるという特徴があります。判断が難しい場合は一度ご相談ください。
Q. 見ていてつらい時、親はどう振る舞えばいいですか?
基本は 「特別扱いせず、普段どおり接する」 です。視線を不自然に逸らす必要はありません。食事中もテレビを見ている時も、いつもどおりに接することが、お子さまにとっていちばん安心できる時間になります。
Q. 兄弟姉妹や、学校・園にはどう説明すればいいですか?
兄弟姉妹には年齢に応じて「体が勝手に動いちゃうだけ」「くしゃみみたいに止められないの」とお伝えください。学校・園には担任の先生に「指摘しないでほしい」「からかわれていないか見守ってほしい」とお願いするのが基本です。詳しい説明資料が必要なら、当院で診断書をご用意できます。
Q. お薬で治しますか?
多くのお子さまは、ご家庭・学校での環境調整だけで自然に軽快するため、お薬は必要ありません。生活への影響が大きい場合や、ご本人がつらさを感じている場合には、行動療法(CBIT)や、第二世代抗精神病薬(リスペリドン・アリピプラゾール等)、α2 作動薬(特に ADHD を併せ持つお子さま)を、児童精神科や小児神経専門医と連携しながら検討します。
Q. トゥレット症候群との違いは?
チック症は持続期間と症状の種類で次のように分類されます。
- 暫定的チック症(旧:一過性チック症):1 年未満で軽快。最も多いタイプ
- 持続性(慢性)運動性または音声チック症:体の動き/声のどちらかが 1 年以上続く
- トゥレット症候群:体の動きと声の両方が 1 年以上続く。お子さまの 0.3〜1% 程度
タイプによって名前は変わりますが、診断がつくこと自体を怖がる必要はありません。多くは思春期以降に大きく軽快していきます。
Q. ADHD と関係がありますか?
チック症は ADHD・強迫症・自閉スペクトラム症 と併存しやすいことが知られています(特にトゥレット症候群では半数以上で何らかの併存があります)。長い目で見た時のお子さまの生活には、チックそのものよりも、こうした併存特性の有無のほうが影響することがあるため、当院では初診時に併存特性のスクリーニングも行います。
Q. チック症は何歳ごろに治りますか?
一過性のチックは数週間から 1 年ほどで自然に軽快することがほとんどです。長く続くタイプでも思春期以降に大きく軽くなり、成人期のはじまりまでに 9 割前後で軽快・消失するという報告があります。発症のピークが 5〜7 歳ごろなので、小学校のあいだに波を繰り返しながら落ち着いていく、というのが典型的な流れです。
Q. 咳払いが続いています。チックですか、それとも風邪ですか?
見分けの手がかりは、ほかの症状があるかどうかと、波があるかどうかです。熱・鼻水・のどの痛みを伴い、夜間に強くなる咳が数日以上続くなら感染症を考えます。特に学童期のお子さまで乾いた咳が 1〜2 週間続く場合はマイコプラズマ肺炎なども鑑別に入ります。一方、ほかに症状がなく、集中しているときは減り、指摘すると増えるのであればチックらしい咳払いです。判断が難しいときは診察でご相談ください。
Q. ゲームやスマホをやめさせたほうがいいですか?
画面の時間と症状の直接的な因果ははっきりしていません。ただし、夜ふかしで睡眠が削れていると症状が出やすくなるため、睡眠時間が確保できているかを基準に考えてください。本人が落ち着ける時間になっているなら、無理に取り上げる必要はありません。
Q. 親の育て方やストレスが原因ですか?
いいえ。チックの根本にあるのは生まれもった神経発達の素因で、しつけや育て方が原因ではありません。ストレスや疲れ、興奮は症状が出るきっかけにはなりますが、それは「原因」とは別のものです。ご自身を責めないでください。
Q. 予防接種・健診のときにチックがあっても受けられますか?
通常の予防接種・乳幼児健診は、チックがあっても問題なくお受けいただけます。事前にお伝えいただければ、待ち時間や声かけに配慮いたします。
症状についてのご相談
「この症状で受診すべき?」「他の病気との見分けは?」というご判断は、お子さまの様子を直接お伺いした上で個別にご案内しています。多くのチックは経過観察で大丈夫ですが、ご家庭で迷う時こそ、遠慮なくご相談ください。
自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。チック症をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。
参考文献
- 日本小児神経学会. 小児チック症診療ガイドライン 2024(初版). 診断と治療社. https://www.m2plus.com/content/14318
- MSD マニュアル プロフェッショナル版. 小児および青年におけるチック症およびトゥレット症候群. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/小児における神経疾患/小児および青年におけるチック症およびトゥレット症候群
- 厚生労働省 難病情報センター. トゥレット症候群(神経系疾患分野). https://www.nanbyou.or.jp/entry/856
- 国立障害者リハビリテーションセンター(発達障害情報のポータルサイト). トゥレット症を含むチック症. https://hattatsu.go.jp/supporter/healthcare_health/tourettes_syndrome/
- 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第25章 心身医学的問題および精神疾患「チック(tic disorder)」(p.702、表25-4)
- 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(精神疾患「チック症」印刷 p.674-675)
この記事の監修
院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)
最終更新:2026 年 8 月 28 日
このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。