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川崎病

5 日以上続く高い熱、両目の真っ赤な充血、舌のツブツブ、体のあちこちに出る発疹 — お子さんにこうしたサインが重なって出ているとき、頭をよぎるのが川崎病です。原因はまだ分かっていませんが、早期に診断して治療を始めれば、ほとんどのお子さんは元気に回復できる病気です。このページでは、ご家庭で気づきやすいポイントと、当院でできることをまとめました。判断に迷うときは、最後の相談窓口から遠慮なくご連絡ください。

💡 この記事の要点

  • 4歳以下に多い全身の血管の炎症で、早期治療でほとんどのお子さんは元気に回復します。
  • 症状が出た日をメモし、目・舌・発疹・BCG跡をスマホで撮影しておくと診断の助けになります。
  • 熱以外のサインが重なってきたら、5日を待たずその時点でご相談いただいて大丈夫です。

どんな病気か

川崎病は、4 歳以下のお子さんに多い、原因不明の全身の血管に炎症が起きる病気」です。日本人を含むアジア系のお子さんで多く、国内では小児 10 万人あたり年間およそ 300 人が発症する、世界でもっとも頻度の高い国の一つです。

  • 発症年齢: 1 歳前後がピーク。4 歳以下が全体の約 80〜85% を占めます
  • 男女比: 男児にやや多く、男女比はおよそ 1.3〜1.5 対 1
  • 季節: 冬から春にかけて流行傾向があります
  • 正式名: 「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)」とも呼ばれます

一番大切なポイントは、血管の炎症が心臓の血管(冠動脈)に及ぶことがあること。心臓の血管がコブのようにふくらむ「冠動脈瘤」を防ぐために、早めに気づいて治療を始めることが何より大事です。治療が標準化された現在、命に関わることはごくまれで、直近の川崎病全国調査(第 27 回・2021〜2022 年)では約 2.2 万人の患者さんのうち死亡例は 1 例(致命率 0.01% 未満)でした。怖い数字よりも、「早く気づけば守れる病気」として知っておいてください。

主な症状と気づきのポイント

「うちの子の熱、これってもしかして川崎病? ただの風邪との見分け方は?」 — これが、川崎病を心配される保護者の方から最も多くいただく質問です。決め手になるのは、熱以外のサインがいくつ重なっているかです。

初期症状は高熱で始まることが多く、この段階では風邪との区別がつきません。熱が続くあいだに、目の充血・いちご舌・発疹といったサインが数日かけて順番に出てくるのが川崎病の特徴です。だからこそ「熱が出た初日に分かる病気」ではなく、経過を見ながら気づいていく病気だと考えてください。

川崎病の診断基準(日本川崎病学会「診断の手引き」)は、次の 6 つの主要サインのうち 5 つ以上そろうこと(4 つでも経過中に心臓の血管に変化が見つかり、他の病気が除外されれば診断されます。日本川崎病学会「診断の手引き 改訂第 6 版」[2019 年]より)。

  1. 発熱
    • 従来は「5 日以上続く発熱」とされていましたが、改訂第 6 版(2019 年)では発熱の日数は問わないとされ、治療で早く解熱した場合や 5 日未満でも、他の症状がそろえば対象になります
    • 治療しなければ 38〜40℃の高熱が続くのが典型です
  2. 両目の白目が、目やにを伴わず真っ赤に充血(出現率 86〜90%)
  3. 唇が赤くひび割れる/舌がイチゴのように赤くツブツブ(いちご舌)/のどの奥が赤くなる
  4. 決まった形のない、まだら模様の赤い発疹(はしか様・しょう紅熱様など、見え方はさまざま)
  5. 手足の変化
    • 急性期:手のひら・足の裏がパンパンに腫れて、押してもへこまない/指先が赤くなる
    • 回復期(2 週目以降):指先の皮がペリペリと薄く剥ける
  6. 首のリンパ節(耳の下〜首の横)が、膿んだりせず固く腫れる(出現率は約 65% と、6 つの中では最も出にくいサイン。これがなくても川崎病を否定できません)

主要サイン以外で気づきやすいこと

  • BCG(はんこ注射)の跡が赤くなる:赤ちゃん〜1 歳台のお子さんで特に気づきやすいサイン
  • ふだんよりずっと不機嫌で、ぐずりが強い
  • 下痢、腹痛、関節の痛み

教科書通りに症状が揃わないタイプ(不全型川崎病)

特に乳児では、6 つのサインが全部はそろわず、熱と 2〜3 つの症状だけのこともあります。「典型的じゃないから違うはず」と決めつけず、熱の長さと症状の組み合わせで気になるときは早めにご相談ください。

上記はあくまで気づきの目安です。受診のタイミングについては、ページ末尾の相談窓口で個別にご案内しています。

紛らわしい病気(鑑別)

川崎病と似た症状を示す病気はいくつかあり、診察と検査で見分けていきます。

  • しょう紅熱・溶連菌咽頭炎(ようれんきんいんとうえん): のどの痛みと発疹が出る細菌感染症。迅速検査で見分けられます
  • アデノウイルス感染症(プール熱など): 結膜炎・のどの炎症が川崎病と似ますが、目やにが出ることが多いのが違い
  • EB ウイルス感染症(伝染性単核球症): 熱・リンパ節の腫れが川崎病に似ます
  • MIS-C(コロナ感染のあとに子どもに起きる、川崎病に似た病気): 経過と検査で慎重に区別します
  • 薬疹(やくしん): 服用中のお薬による発疹。お薬の使用歴がヒントになります

当院での診断と治療

川崎病はクリニック単独で完結する病気ではありません。早く疑い、早く大きな病院につなぐことが当院の最も大事な役割です。

当院でできること

  • 早期の評価:症状の確認、熱と発疹の経過の整理、血液検査、尿検査
  • 疑いがある時の素早い紹介:小児循環器を診られる高次医療機関へ、すぐに連絡・紹介状を作成
  • 退院後の伴走:アスピリンの処方、予防接種スケジュールの調整、日常生活のご相談
  • きょうだいの体調チェック:心配なときに気軽に立ち寄れる窓口として

入院先で行われる治療(参考までに)

入院先の高次医療機関では、川崎病と診断され次第、次のような治療が行われます。発症から 第 7 病日(7 日目)頃までに治療を始めることが、心臓の血管を守るうえで非常に重要とされています。

  • 免疫グロブリン(IVIG)大量療法:点滴で「免疫グロブリン」というお薬をたっぷり入れる第一選択治療
  • アスピリン経口:血液がかたまりにくくし、炎症を抑えるお薬。退院後もしばらく続けます

IVIG が効きにくいタイプもあり、その場合は追加の治療(ステロイド、インフリキシマブ、シクロスポリンなど)が組み合わされます。これらは入院先の専門医が判断・実施します。

退院後のフォロー — 後遺症を残さないために

川崎病で心配される 後遺症 は、心臓を養う血管(冠動脈)がコブのようにふくらむ 冠動脈瘤 です。逆にいえば、早期に治療して冠動脈に変化が出なければ、後遺症を残さずに回復するお子さんがほとんどです。だからこそ、退院後の心エコーによる確認を予定どおり受けることが大切になります。

冠動脈に変化がなければ、アスピリンを 2〜3 ヶ月ほど続けながら、定期的に心エコー検査(発症 1 ヶ月後、6 ヶ月後、12 ヶ月後など)でフォローしていきます。心エコーは高次医療機関で行うことが多いですが、当院では普段使いの相談窓口・お薬の調整・予防接種の調整役として伴走できます。お子さんと一緒に来やすい場所でフォローしていきましょう。

※ 本ページの治療内容は、現行の「川崎病急性期治療のガイドライン 2020 年改訂版」(日本小児循環器学会) に基づいています。

家庭でできるケア

入院治療中は医療機関の指示に沿っていただきますが、発症前後・退院後のご家庭で意識していただきたいことをまとめます。

受診前 — 「気づくため」のコツ

  • 症状が出た日をメモする:何日目から熱が出たか、いつ目が赤くなったか、いつ発疹が出たか。診察時に大きな助けになります
  • スマホで写真を撮っておく:目の充血・舌・発疹・BCG 跡の赤み — これらは日によって出たり消えたりするので、気づいた瞬間に撮影しておくと診断の決め手になります
  • 解熱剤は使ってかまいません:一時的に熱が下がっても「発熱は続いている」とカウントします。ただし、症状経過のメモは継続してください
  • 水分・睡眠を優先:高熱が続く間は、無理に食べさせるより水分と休息を優先しましょう

入院・治療中

  • 担当医の指示に沿って治療を受けてください
  • 心エコーなど冠動脈の評価は必ず予定通り受けましょう

退院後の暮らし

  • アスピリン服用中の注意:血が止まりにくくなるため、転んで出血した時はしっかり押さえる時間を長めに。気になる出血が続くときは入院先 or 当院にご相談ください
  • 予防接種:IVIG を受けた後 6 ヶ月間は、生ワクチン(MR、水痘、おたふくかぜなど)の接種を延期します。スケジュールの組み直しは当院でお手伝いできます
  • 保育園・学校・運動:心エコーで問題がなければ、通常の生活に戻れます。具体的な再開タイミングは入院先の医師と相談しながら進めましょう
  • きょうだいの体調:きょうだいでの発症は 1〜2% と稀ですが、熱が長引くときは念のため気にかけてください

よくあるご質問

Q. 5 日も熱が続いていないけれど、目の充血や発疹が出ていて心配です。様子を見ていて大丈夫?

教科書通りに 5 日きっちり待つ必要はありません。熱以外のサインが重なっているときは、その時点でご相談いただいて大丈夫です。判断はお子さんの状態を直接お伺いしてご案内しますので、迷ったら下の相談窓口へ。

Q. 解熱剤を使ってもいいですか? 使うと診断が遅れたりしませんか?

使っていただいてかまいません。一時的に熱が下がっても、川崎病の「5 日以上の発熱」にはカウントされます。診察時に「いつ・どれくらい使ったか」をお伝えいただけると、より正確に判断できます。

Q. 受診のとき、家で気づいたことをどう伝えればうまく診断につながりますか?

発熱開始日・最高体温・症状が出た日のメモと、スマホで撮った写真(目・舌・発疹・BCG 跡)を持ってきていただけると非常に役立ちます。診察時には症状が消えていることもあるため、写真は本当に大きな手がかりになります。

Q. 川崎病だったら、治療のあと普通に保育園・学校・運動はできるようになりますか?

多くのお子さんは、心エコーで冠動脈に問題がなければ通常通りの生活に戻れます。定期検診で経過を見ながら、安心して日常を取り戻していけるよう一緒に進めましょう。

Q. BCG の跡が赤くなっています。これだけでも川崎病を疑うべき?

BCG 跡の赤みは川崎病の特徴的なサインの一つですが、それ単独で診断はできません。熱や他の症状とあわせて気になるときは、お気軽にご相談ください。

Q. 兄弟も川崎病になりやすい? 再発する?

きょうだいでの発症はおよそ 1〜2%、再発はおよそ 2〜3%(厚労省『診断の手引き』)または 3〜5%(出典により幅があります)と、いずれも稀です。過度にご心配はいりませんが、熱が長く続いたときに「川崎病かも」と頭の片隅に置いておく程度で大丈夫です。

症状についてのご相談

「この症状で受診すべき?」という判断は、お子さまの状態を直接お伺いした上で個別にご案内します。気になる症状があれば、受診をご検討ください。


自由が丘キッズクリニックまるまるは、自由が丘駅から徒歩1分の小児科です。川崎病をはじめ、お子さまの気になる症状は、Web または LINE からご予約ください。

参考文献

  1. 日本小児循環器学会. 川崎病急性期治療のガイドライン 2020 年改訂版. https://jpccs.jp/10.9794/jspccs.36.S1.1/data/index.html (accessed: 2026-06-02)
  2. 日本川崎病学会. 川崎病診断の手引き 改訂第 6 版(2019 年 5 月改訂). https://www.jskd.jp/%E5%B7%9D%E5%B4%8E%E7%97%85%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%83%85%E5%A0%B1/%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D/ (accessed: 2026-07-03)
  3. 国立循環器病研究センター. 川崎病の診断と治療法. https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/cardiology/pro05/ (accessed: 2026-06-02)
  4. 日本小児循環器学会. 川崎病急性期治療のガイドライン 平成 24 年改訂版. https://jspccs.jp/wp-content/uploads/kawasakiguideline2012.pdf (accessed: 2026-06-02)
  5. 内山聖 編. 標準小児科学 第8版. 医学書院; 2013. 第15章 感染症「川崎病(MCLS)」(印刷 p.368-370、厚労省川崎病研究班 診断の手引き 2002 年 2 月改訂 5 版を含む)
  6. 川崎病全国調査実施グループ/日本川崎病研究センター. 第 27 回川崎病全国調査報告書(2021〜2022 年対象). 2023 年 9 月. https://www.jichi.ac.jp/dph/wp-content/uploads/2023/09/3aed51a15e14397c8ba83d470df0226f.pdf (accessed: 2026-06-10)
  7. 医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.15 小児科 第1版. メディックメディア; 2022.(膠原病「川崎病(KD)」 印刷 p.448-450)

この記事の監修

院長 山口いぶき(日本小児科学会 専門医)

最終更新:2026 年 8 月 29 日

このページは一般的な医学情報をご紹介するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さまの症状については、受診のうえでご相談ください。

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